見出し画像

【妄想ビール研究所】はじめに

 未来はどうなるのか考えてみると、どんどん妄想が止まらなくなることはありませんか。妄想するのは自由です。どこまでも妄想しても、誰かに咎められることはありません。妄想したいことをずっと妄想していればいいのです。

 しかし、妄想は自由だからこそ止まらなくなることがあり、時として、いや、ほとんどの場合、「なんのことやら」という結論で終わってしまいます。いやいや、結論なんて出ませんね。有耶無耶なまま終わってしまうのです。それでこそ妄想です。

 そうやって妄想を広げていくことは、なんと楽しいことかと。なんと豊かな行為かと思うのです。妄想とは非常にクリエイティブな行為です。すべては妄想から始まっています。妄想できないことは実現しないのです。

 どれくらい昔のことかわかりませんが、大空を飛ぶ鳥を見て、「自分も空を飛んでみたい。飛べたらどんな景色が見えるだろう。飛べたらどこまで行けるだろう」と妄想した人がいたはずです。これは決して1人ではないはずです。これまでの人類の長い歴史の中で、数えきれないほどの人たちが妄想したに違いありません。

 そしていま、人類に羽はありませんが、いくつかの手段で空を飛べるようになりました。飛行機しかり、ハンググライダーしかり。『ドラえもん』のタケコプターのようなものまでは発明されていませんが、空を飛んで上空からの景色を見ることができるようになったのです。人類が空を飛べるようになったのも、多くの人がそんな妄想をしたからだと確信しています。

 少し話をずらしますが、『ドラえもん』に出てくるひみつ道具のひとつ「糸無し糸電話」をご存知でしょうか。その名の通り糸がない糸電話ですが、現在で言うところの携帯電話に近いものです。その形こそ異なりますが、遠くの人と簡単に連絡が取れたら……という妄想が昔からあったからこそ、「糸無し糸電話」というひみつ道具が生まれ、現在の携帯電話も生まれたのだと言えるでしょう。

 そう考えると、『ドラえもん』は非常に素晴らしい示唆を与えてくれる作品だと言えます。ひみつ道具の数は2000を超えるとも言われますが、つまりは2000以上もの妄想があったということです。『ドラえもん』の素晴らしさは、その妄想を可視化したことにあると考えています。妄想は妄想のままだと結局は妄想で終わってしまうのです。

 もちろん妄想は妄想で終わっていいのですが、それをよりクリエイティブにするためには可視化が必要。可視化することで、妄想が多くの人に共有され、多くの人の脳に妄想が伝播していきます。その妄想を生み出せなかった人に妄想を共有し、その人の脳をアップデートするのです。そして、そこからイノベーションが起こるかもしれません。なんと素晴らしいことでしょうか。

 妄想してこそ、世の中が進んでいくのです。

 さて、ここでもうひとつ『ドラえもん』のひみつ道具を紹介しましょう。「ようろうおつまみ」です。

 ひょうたんの形をしたもので、これを食べながら水を飲むと、口の中で水がお酒に変わるというひみつ道具。のび太のお父さんが試してみて一言「こりゃ上とうのウイスキーじゃないか…」。

 このメカニズムは明らかにされていませんので、口の中でアルコールが生成されるのか、水によってアルコールが溶解するのかはわかりません。しかし、ここには「水がお酒になったらいいなあ」という錬金術的な妄想があったことを想起させます。

 仮にアルコールが生成されるのであれば、「日本ではアルコール度数1%未満になるようにしないと口の中で違法行為が行われるな……」とか、「醸造免許を取らないとようろうおつまみを食べられないのかな」といった妄想が膨らみます。非常にクリエイティブな楽しい行為ですが、その先の妄想は別の機会に進めましょう。話を続けます。

 この「ようろうおつまみ」のようなものがある世界はどんな世界でしょうか。そう考えた方は、脳内に妄想の世界を構築できているようで喜ばしいことです。繰り返しますが、そういった妄想から世の中は進んでいきます。

 実は、「ようろうおつまみ」に似たような商品が、佐藤食品工業株式会社から販売されています。「粉末酒」というものです。お酒の種類としては、梅酒、ウォッカ、ラム、ブランデー、ワイン、清酒、みりんがラインナップ。利用方法としては、「ようろうおつまみ」のような使い方ではなく、料理やお菓子に使うことを想定しているようです。そう、「ようろうおつまみ」の原型ともいえる技術は、すでにできているのです。

 この技術は素晴らしいと言わざるを得ません。同社のWebサイトにも「不可能を可能にした独自の技術力が食の可能性を広げていきます」と記載されています。まさにそのとおり。料理にも使いやすくなったということもありますが、この技術があれば「ようろうおつまみ」まではもう少しのような気がします。技術的なことは何も知らない一般市民の考えではありますが。

 このように世の中はどんどん変化しています。『ドラえもん』の世界がどんどん実現していきます。『ドラえもん』は子ども向けマンガなので、お酒についてはあまり描かれていません。しかし、22世紀には現代とはまったく違うお酒の楽しみ方があるはずです。実際に、22世紀になったら『ドラえもん』の世界とは違っていたとしても、現代とは違う楽しみ方をしているのではないかと思うのです。

 ちなみに、佐藤食品工業株式会社のWebサイトにある、粉末酒Q&Aを読んでいると、非常におもしろい部分が見えてきます。例えば、酒税法による粉末酒の定義について、

「溶解してアルコール分1度以上の飲料とすることができる粉末状のもの」を言います。

とあります。その一方で、

キャンディー類に「粉末酒」を練り込んだ場合、できあがった製品について酒税法上の取り扱いはどうなるのでしょうか?

という問いに対して、

これらの形状は粉末ではなく、固形状です。よって、この場合出来た製品は酒税法の適用を受けることはありません。

とあります。これはもしかして、酒税法では粉末についてしか規定しておらず、固形の場合は酒税法で規定されていないのでは、という疑問が生まれます。であれば、粉末酒そのものを固形状にしたもの、つまり「ようろうおつまみ」は酒税法の適用を受けないのではないでしょうか。

 と、「はじめに」を書きながらどんどん妄想が進んでしまうため、このままではなかなか「はじめに」が終わりません。しかし、妄想すればするほど、妄想が現実に近づいていくということはなんとなく理解していただけるのではないかと思います。

 このコンテンツでは、そんな妄想をどんどん進めていきたいと思っています。ただ、ある程度の縛りを設けないことには、あらゆる方向に妄想が広がってしまうため、ビールに関連する妄想に留めたいと思います。自由は素晴らしいものですが、何かを生み出すためにはある程度の規制があったほうが意外とクリエイティビティが発揮されるのです。

 なお、なぜビールなのかについては、私が単にビール専門ライターだからという理由以外ありません。そもそもビールが好きだからです。ここではビール関連妄想に留めますが、私の妄想を読者の皆さんに共有することで、それぞれの興味に合った妄想を進めていただければ幸いです。

 なお、ここで書いていることは、客観的事実や科学的根拠に基づいた話もありますが、妄想が多分に含まれています。すべてを真実と受け取らず、「この話は妄想ではないか」と疑うクセを付けていただければ幸いです。妄想だと思ったら調べてみてください。そして、根拠がある内容でしたらそのまま受け取ってください。何の根拠もないガチな妄想でしたら、そういう妄想の方法もあるんだなと方法論を受け取っていただければと思います。

 これから妄想を展開していきますが、このコンテンツの妄想が意外と実現してしまい、ビール界の予言者と言われるようになるのではないかという妄想をしていることを告白し、「はじめに」を終えたいと思います。

続きはこちら。


この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?気軽にクリエイターを支援できます。

note.user.nickname || note.user.urlname

いただいたサポートは、思いを形にして届けていく活動費用(メディア制作・取材費など)として使用させていただきます。

ありがとうございます! 今日のビールがおいしく飲めます!
37
執筆・編集ユニットBrew words(代表:富江弘幸) 主に「地域とビール」をテーマに活動しています。 『教養としてのビール』、cakes連載『あなたのしらない、おいしいビール』、『ビールと本と旅とおもしろいこと。』 http://www.hiroyukitomie.me/

コメント2件

おもしろかったです。つづきも読みます。
末吉さん
ありがとうございます! コメントをはげみにどんどん書いていきます!
コメントを投稿するには、 ログイン または 会員登録 をする必要があります。