見出し画像

不測の事態「金庫が開けられた!」英語でたたかう、乗り切る

  どうしてそうなったのかというところは一旦省略します。
 想像してみてください。観光から帰って来て、自分のホテルの部屋の前に着いたら、ホテルスタッフと見知らぬ夫婦がドアの前に立っている様子を。それだけでも十分異様な光景なのに、ドアは開けられ、セーフティボックス(金庫)も開けられているカオス。一瞬状況がつかめませんでしたが、私が26歳の時の中国旅行で、実際にあったお話です。

 努めて冷静を装い、「なぜ私たちの部屋と金庫の鍵が開いているのですか?」と英語でホテルのスタッフに尋ねると、「こちらのお客様達が、部屋の鍵が開かないとおっしゃったので、開けました。」と言います。以下私、ホテルスタッフ、見知らぬ男性(女性は終始無言でした)、私の母の会話です。

私が「ここは私達の部屋です。どうしてあなた達が鍵を開けているのですか?」と尋ねると、男性の主張としては、「自分たちの部屋だと思い込んでいた。カードキーが壊れたのかと思って、スタッフを呼んでドアを開けてもらった。」とのことでした。

 この時点で、英語のアクセントからこのご夫婦が日本人だと分かりましたが、当時私は20代、このご夫婦の年齢は50代後半くらい、日本語で敬語を使ったやりとりではらちがあかないと一瞬で判断し、中国人のホテルスタッフにも伝わるように、このまま英語で会話を続けることにしました。

私「部屋に荷物が全然ないことで、自分の部屋ではないと気付かなかったのですか?」

男性「部屋の荷物がなくなっていたことに驚いて、金庫もあけてもらった。」

私、ホテルスタッフに向かって「部屋番号や名前を確認することなく、勝手に部屋や金庫まで開けるというのは、こちらのホテルのセキュリティはどうなっているのですか?」

スタッフ「申し訳ありません。こちらのご夫婦がご自身の部屋だと主張したので。」

 私の母が「私達の部屋は・・・」と英語で男性に話しかけた瞬間、男性は"Shut up!!"(黙れ!)と怒鳴ったのです。私達の部屋と金庫を勝手に開けたにも関わらず、一度も「勘違いしてすまなかった」という言葉すらありませんでした。それなのに、被害を受けている側の私達に暴言をはき、怒鳴るという行為に、私は「許せない」と思いました。極めて冷静に、以下のように英語で述べました。

「今の言葉は受け流すことはできません。母に対して、大変失礼な発言です。今すぐ取り消してください(take it back)。そして、母に対する謝罪を求めます。」

 英語を話していた私は、完全に英語モードでした。今この会話を日本語に訳すと、日本語では絶対に言わないと強く思います。自分より、30歳程年上の方に向かって、この発言は日本語ではしません。しかし、英語なら躊躇なく言えます。それは、英語が外国語だからではなく、他者との関係(年齢や上下関係など)が比較的言葉に反映されにくい(0ではないです)、英語モードの自分だったからです。

 結果、私の剣幕に押されて、この男性は母に謝罪しました。そして、私達に被害はなかったので、このご夫婦が本当に勘違いから部屋を開けたのか、その他の目的だったのかはうやむやなままででしたが、帰っていただくことにしました。このホテルに数泊する予定だったため、逆恨みなどされるリスクも考慮した判断でした。

 さて、なぜ私達の部屋に何も物が置いていなかったのかという種明かしです。実を言うとその日の朝、弟がルームナンバーの書いてあるカードキーをなくして、再発行していただいていたんですよね。でも何となく嫌な予感がして、(私の直感は結構当たるんです)2部屋のうちカードキーをなくしていなかった方の部屋に、全ての荷物と貴重品を移動させようと提案して、全員で移動させていたのです。そうしたら、夕方こんなことになっていて、何だかなぁと思った次第です。このご夫婦が本当に勘違いをしただけなのか、弟が落としたカードキーを拾って開けようとしたら、再発行のため開かなくなっていてスタッフに開けさせたのか、真相は闇の中です。

*take it backという表現は、失礼な発言があった場合に、「その言葉を取り消してください」と相手に伝える時に使う表現です。相手が失礼だったと認めると、"I take it back."と言って、仲直りできます。

*このお話は、「言語によって言動が変わる例」として、実体験について書いています。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?