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【メンシ】『囲われペンギン、きみとぼく』2万字解説

 去年の今頃、つまり2022年の秋。『囲われペンギン、きみとぼく。』という小説の本を出した。秋というと違和感がある。この本は『天使のいない12月』の紹介記事を読んで衝撃を受け、その情熱もあって突っ走ったような物語なので、舞台設定が、11月から12月にかけてのお話ということになっている。根幹は12月なのだ。つまり冬。BOOTHで通販や電子版を出したのも12月なので、できれば12月、つまり去年の冬頃に出したということにさせてもらえればと思う。では改めて。去年の今頃、つまり2022年の冬。僕は『囲われペンギン、きみとぼく。』という本を出しました。同人誌です。



 本本(本作品、という意味での、本「本」)は、なんだか首尾よくって、30冊発注をかけるという無名にしてはあまりに無明で無謀な挑戦をしたのだが、文フリで4冊、学園祭で26冊という神みたいな売れ方をして、第一刷の在庫は全部はけた。わけあって(:コロナに感染した)、僕はこの本が実際に売れているところを一度も目にしていないのだけれど、しかし嬉しい。学園祭では完全に会計の計上を間違えられたか何者かに盗まれたかなどしていて、完売したのに800円くらい収得額が少なくなるというアンバランスもあったが、ほとんど利益の出ない値段で売っていることからもわかる通りで、僕はその辺より、読んだ人から感想をもらえたりしていたあの時間が大変好きで仕方なかったので、あまり気にならなかった。厭、嘘か。ここで改めて書く程度には覚えているわけだわな。いえ、それも、思い出話の一つ程度に捉えさせてもらっています。

 思い入れが強いので、本来なら今日まで、語っておきたいことはいくつもあった。実際何度かそういうのもやろうとした。が、なーんかうまく書けなかったのでその度ボツにしていた。致命的なネタバレを書かないと何も語れないような創作物だし、出す場所に困っていたというのもある。

 ただ、僕なりに色んなテーマや意図を込めた本ではあるので、その解説をしておきたい、という気持ちは常にあった。さて。僕は読書という活動に対し、「この作者はどんな目的でこの本を書いたのか、というクイズ」って一側面を認めている。「若者に生きろって言いたい」「ただただ面白い話を書きたい」「職場と家庭の板挟みに追われている人を応援したい」、まぁ是非はおいといて色々あるだろう。これを意識するかどうかで作品の切実さは嘘のように変わると僕は思っている。で、そういうのを答え合わせしてくれるのが小説における「あとがき」だと思っているところがあって、だからあとがきでどうでもいい近況を述べるのはそんなに好きじゃないという気持ちがあるのだが、然しそれは個人的な思想に両足をズブズブ突っ込んでしまっている気がする。閑話休題。

 今回は、ざっくり一年経ったし、ついでに次の同人誌の宣伝もしてしまいたいので、ようやく「この作者はどんな目的でこの本を書いたのか、というクイズ」の「答え合わせ」を、この散文の形態で入念にやってしまおうかと思う。尤も、このわかりづらい本の話をどう書けばいいかは未だにわからないから、たとえばこのように、思考が移りゆくさまを写生的に記録した読みづらい文章にはなってしまうと思うのだけど、それでも僕はこれについて語っておきたいので、一旦済ませて仕舞う。

 思い出話なんていうのも少量ずつ交えちゃいたいと思う。文章としてちゃんとしていないんだけど、ほどほどに、興味本位といえる段階のままでいられるぶんは、付き合ってもらえたら幸い。

 なお作品の特性もあって、この解説は致命的なネタバレを含む。本当に致命的なやつだ。だから本来メンバーシップの特典としてはそぐわないのだけれど、ただ、一年経ったし、もうある程度ネタバレも許容範囲かなーって個人的には思っているので、未読でも、ヒラでばーっと読んでみるのもあるいは一興かもしれない。読んでない本の解説記事。やってないゲームの攻略本。そういうのもなかなか面白いと思う派だ。僕がそんな仕事をできるとは思えないので、やっぱり自由だけれど。

 ただ、この本は「後半に大きな仕掛けのある」タイプの本なので、「買ったはいいけど、読み切らずに積んじゃったな~」って人もいることと思っている。そういうわけで、参考までに、かなり空行を挿入したあと、その「大きな仕掛け」というか、「全体のテーマ」について、はっきり二文字で書いてしまおうかと思う。これは、無料の範囲で。

 長くなってしまったけれど、こんな感じで、進んでいく。

 というわけで、ずっと下のところにネタバレを書いておきます。

 『囲われペンギン、きみとぼく』は、











































 自殺の話です。


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