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ひとやすみの為の島と、

長崎の琴海から、長崎市内のひとやすみ書店さんへ。


ひとやすみ書店

そして向かったのは、八重山諸島、小浜島。
そして沖縄本島。

真夏の、壱岐島の繁忙期にいつも小浜島から三線を片手に、
チリトリ自由食堂を手伝いに来てくれている、キセルを訪ねるためだ。

毎年毎年、手伝いに来てくれているものの、自分はなかなか行くことができなかった。



沖縄には、鯨をみにいって以来だった。
東京で暮らしているときに、星野道夫さんが、今この瞬間にヒグマが生きている世界がある
と思って、北海道に行ったように、今この瞬間に鯨が海を泳いでいるということを実感したかったのだ。それはたぶん、日常で自分の生活している世界とは違う営みがあることを、思い出すために。実感するために。


石垣空港に降り立ってから、船に乗る。

小浜島につく。

キセルに電話する。

「あ、」つきましたか?」

迎えに行くので待っていてください。

10分後、くわえタバコに、八重山傘を被ったキセルが軽自動車で迎えにきてくれた。

車の中は、赤い土が所々に落ちている。
キセルが迎えに来てくれたときから、違う営みの中に、ぽんと入り込んでいた。


キセルの家には壊れた網戸に、三振に、月桃の細工ものが転がっている。


月桃

「僕は畑に行くので、トミーさんテキトーにしててください」

サッといなくなるキセル。手伝いに行っている小浜島ファームにいってしまった。

ひとりで、小浜島の南の乾いた風の中を散歩する。


孔雀が通り過ぎる。琉球アゲハに見惚れる。
この環境でしか出会えない生き物たちに。感激して、安心する。


ここまできて、自分は、漠然となにかに変わりたかったのだな。と深呼吸するように気がついた。
途中、放し飼いの仔牛と、見つめ合う。そしてまた、違う営みがあることに安心する。


キセルの家にかえる。キセルが帰って来て、

『トミーさん、シャコガイと、もずく、取りに行きます?』



白い砂浜のトウアサの海にごく透明な水。透明な風の中。透明の水がたえず揺らめいていて、ちらちらと黒海鼠が見える。風が海の上を走るので、さざなみで上からは海の中が見えづらい。
膝下まで水に浸かりながら、水の中に目を凝らしながら歩く。
キセルは、食べれるものを求めて、どこまでもぐんぐん歩いていき、もう30メートルぐらい離れたところに見える。

珊瑚が混ざる砂浜に、

波打ち際に置いてきた、荷物をたびたび気にする自分がいる。

こんなに透明な水に浸かりながらと。


膝うえまで達したところに、キセルがこちらにきて、
『ちがうポイントにいきましょう』と

移動し、またとう浅の海を歩き出す。


キセルくん


キセルは、このポイントでもグングン歩いていき、あっと言う間に小さくて2センチぐらいにしか見えない。傘をかぶり腰にカゴをつけて歩くシルエットは、立派な”海んちゅ”だ。

目線を水の中に戻すと、シャコガイを見つけた。


え、これ? シャコガイだよね?とドキドキしながら自分に問う。


手に持つとずっしりと重く、ピョコぴょこ海藻がついている。


透明な海から引き上げたその存在感は綺麗で格好良くて、その重さを右手でしっかりと感じながら身体と心が震えた。
はじめて鯨を見たときのように、確かに生き物たちが生きていて、その世界と、今の中で繋がれた感覚。いつの間にか、日々の中に、鯨が泳いでいることや、シャコガイが透明な海の中生きていることや、琉球アゲハが飛んでいる今を、おきざりにして生きてしまっていたこと。
君の目の前で起こっている事がすべてで、そしてすべてじゃあないよ。と言われたようなスッキリとした感覚。が、自分の手の中に帰ってきた。


これ、シャコガイだよね?


あきらかにシャコガイだけど、この綺麗でかっこいい手の中のものを食べる気になれなくて、キセルに聞いた。


『シャコガイですね。近くを探してみてください。』
もう一匹いるはずなんで。

なんで?

『シャコガイは”つがい”なんですよ。』

なおさら食べる気をなくして、
これ、美味しいの?と聞く。

『僕はあんま好きじゃないです。』

えー!なおさら逃したいんやけど、、

トミーさん食べないなら島のおじいにあげますよ。

あげるんかい、と内心思いつつ

いや、こいつを見つけたのはあたしだから、はなす。

ばちゃん。

『えー、おじいにあげたのに、、』ときせる

そう言われてもごめんやけど、、、

それだけ感激したものでも、手放せる自分がいて、また安心した。
手にした瞬間の感激の鮮明さは残っているから、、
自然に還したかった。
キセルには、6年前に出会い、そのとき吉祥寺三鷹エリアから壱岐に、みなとやに来た仲間で、当時おしゃれな吉祥寺ボーイだった。


きび畑


その後、小浜島にすみつき三線の世界、八重山小浜じまの世界にどっぷりと使っていった。
つぎはぎのハーフパンツに、キビ狩りのTシャツ。
会うたびに、文明感がなくなるキセルに、キセルの部屋を見渡しながら、聞いてみた。
なんかこんなかで、大事なものある?


『三線以外は、いつでも手放せるものです。』


そんなカッコいいセリフが吐ける日が私に来るだろうか、、、


畠で

夜に、おじいのユンたくばに誘ってもらった。
文化財みたいなおじい達が、夜な夜な普通に集い、三線をひき、うたう。
南風が吹き出すようなおじいたちの自然なセッションに、八重山の文化と、キセルが得たいものについてすこしわかった気がした。
何ももたないでも、三線と身体さえあれば。人生は深く楽しく愉快だ。
あと泡盛w!!!
そして、この自然なセッションに、時間に参加して体感して南風を吹かせられるようになるまでには、赤土の中に立って、キビを狩り、汗をかき、風に吹かれ、染み込ませることを日々しているのだ。な、と。


『三線以外はいつでも手放せるものです。』
いつまでも耳にのこる。


蒼い作務衣と三線がよく似合う。

小浜島の、八重山諸島の赤い土と、透明な海と、風がしみ込んで、三線と唄とにかわり、身体から溢れるまで、キセルはここに。
生きていくんだろうな。と思った。

また今年も壱岐島で。


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