マガジンのカバー画像

屋さんシリーズ

3
色んな『屋さん』が出てきて クロスフェードしていくシリーズです! あなたは 何屋さんになりたいですか? また 何屋さんが好きですか?
運営しているクリエイター

記事一覧

宿命屋 龍之介

「さて 行くか…」

龍之介が向かうのは 宿命の相手のもと。

きらびやかな街から外れた 古い廃屋に 身を潜め 来るべき時を待っていた。

そして 今宵 その日を迎えた。

「玉三郎よ ついに参ったな この時が。」

「龍之介よ この勝負 どちらが 最後に立っているのだろうな。」

焦燥と高揚が入り雑じる感情を 圧し殺すように 両者は 向き合った。

静かな水面は そこに 何も無いかのように凪いで

もっとみる

晴らし屋 那奈

誰の目にも触れてはならない。

暗黒に咲く花。

それが 那奈 本来の姿。

普段は 宿屋で料理支度をする 何ら変わりない 奉仕人。

しかし 料理を作り終われば その刃は 頼み人の狙う対象に向けられる。

「さてと…」

すっかり暗くなった この街が 那奈の箱庭である。

1週間程 刻を遡る。

「那奈ちゃん! 頼むよ! これじゃあ 玉三郎が浮かばれないよ!」

「あの玉ちゃんが やられた…?」

もっとみる

契り屋 夢ノ助

彼の名は 人呼んで『契り屋 夢ノ助』。

頼み人の願いを 全て叶えることで 名が知れている。

今日も そんな噂を聞き付けた うら若き娘が ここにまた1人。

「貴方が 契り屋さんですか?」

「いかにも。 どこで 私の噂を聞いたのだ?」

「夢ノ助さんは この界隈では 知らぬ者はおりませぬ。」

煙管を吹かした 夢ノ助は その娘の瞳を 覗き込んだ。

沸かした白湯が 煮立つ音だけが 母屋を満たし

もっとみる