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桜を照らす光

3
短編小説になります。 氣に入っていただけると幸いです。 宜しくお願い致します。
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記事一覧

桜を照らす光 3

~桜 part 1~

「桜 カラオケ行くよね?」

(今日は 帰りたいなぁ…。)

「う…うん。」

こういう時に 断れない自分が嫌だ。
楽しいふりをすることに慣れてしまった。
いつもこうだ。
自分の意見を通せば 空気が悪くなる。
だから 皆が望むカタチに 落ち着けばいい。
そう考えてしまう。
変わりたい。
思っていても 何をどうすればいいのか さっぱり解らなくて 常に迷宮をさまよっている。

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桜を照らす光 2

~光(ひかり)編 part 1~

「う~ん…よく寝たぁ!」

人からは よく『お前には 緊張っつう言葉がないのか』と言われる。
正直なところ よく分からない。
しないものは しない。
相手は同じ人間なんだから フラットに接すればよくないだろうか。

「初出勤か…一緒にインターンシップしたやつら いるかねぇ。」

着慣れないスーツのネクタイを 結ぶ。
春の日射しが 光の両目を 刺激して 思わず顔を

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桜を照らす光 1

~Prologue~
何かが始まる時は 青い香りがして その匂いは どこか力強くて どこか脆い。
住み慣れない間取りの部屋。

「ちゃんと 分かるようにしておきなさい。」

母親からの 優しい言葉が 背中を確かに押して ここに来た。
段ボールが 明日からの不安のように積み重なっている。
どれから 開けるのが 正しいものなのか。
悩んでばかりもいられない。

「とりあえず…スーツとネクタイかな…。」

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