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遠巷説百物語 感想(というかそこから巷説シリーズ今の所の全巻読んだ感想)

2021年7月2日、巷説シリーズ6作目、発売されましたよ。11年ぶりだったそうです。そんなに経ってたかな。百鬼夜行シリーズが出る出る詐欺されてるせいで、こちらあまり気にしてなかった。。近日刊行予定の近日は1年以内ではなかったわけだけど。。。

ーーーーここからネタバレ(京極作品全体的にネタバレ)



遠巷説百物語単体の感想としては、まぁ。普通。読む前に続巷説と前巷説とアニメ見て復習しておいた方が良さそうかなということかな。。今執筆されているという了巷説の前段かと思われるからその時、再読しようって感じ。

アニメと前巷説で出てきた長耳(頭の中でハンターのフランクリン)と西巷説の柳次が出てきて、最終的には八咫烏もお出ましですよ。遠野物語とかのイメージからものすっごく未開の地を想像してたけど、政治形態とか市井の営みとか、意外ーって感じ。

おかげでシリーズ全巻読み返してしまい、結果また後巷説で号泣する。後巷説は傑作すぎる。直木賞取るだけあるよ。前巷説、西巷説、遠巷説も面白いけど、三部作で完成度が高すぎる。京極夏彦著作の中で何が一番好きかと言われたら後巷説をあげるよ。私は。

ということで、ほぼほぼ後巷説の風の神の話します。

無印巷説で百介が大層ひどいモラトリアムの最中、又市達と出会い、興味の対象である怪異に参加し、振られた自分の役割を演じていく。
続巷説では百介は、惹かれ続けながらも、半ば強制的に闇の世界に決別をしモラトリアム終了。表の世界で仕事として人情噺などを執筆し生計を立てる。大人になる。
後巷説では、時代は明治。時代の変遷と決別せねばならなかった闇のものたちとの邂逅を経て、齢80になった百介が仕掛ける最後の俄か御行。

物語横軸に、江戸から明治という時代の変遷が描かれ、明治における物事の受け取り方を四人の若者が代弁する。東洋儒教を持つ剣術道場師範、西洋科学知識を持つ洋行帰りの旗本次男坊、旧来の巷説文化的認識の巡査、そして百介のように怪異に惹かれながらも怪異を読み解く貿易会社員、与次郎。巡査が持ち込む奇妙な事件に対して各々が意見を述べ最終的に百介にお伺いを立てるという形で解決に導く。江戸での解釈、明治でも通じる解釈、そして闇の仕掛けの3重構造。もう江戸の解釈では巷は納得しなくなっていることに寂寥感漂う。(とはいえ、又一の仕事のおかげで昭和にとんでもない殺人事件が複数起きてるから、物語をつむぐ責任はとんでもないなと思います 陰摩羅鬼、狂骨)
あれ、これ横軸なのかな。。縦軸なのかわからん。

物語縦軸は百介と又一たち闇のものとの邂逅。半ば捨て置かれた故のモラトリアム強制終了だった百介にとって、又一の字で「信頼できる御仁にて・・」とのことでおぎんの孫を託された感慨は。。月並みだが余りにも切ない。そして和田和尚(笑 鉄鼠)からもたらされた情報でおぎんの娘りんの無念を晴らすために俄か御行を試み、書けはしなかったけれど、百物語の会場に怨敵を呼び寄せて語るのですが。。
この百物語、無印巷説が百物語で始まり、後巷説が百物語で終わるというループ構造。かつ後巷説では3通りの怪異が起こるんですよ。怨敵である下手人は殺したりんの怨霊の顔を、由良公房は自分を託した青鷺の母を見て、百介は又一の声を聞くんです。1つの事象で3つの意味を持たせるとはもう神の所業ですって。

あの「ー御行奉為。」はどう解釈するればいいかな。
百介はあの場に小夜がいたことは知らないので、
ー解決をみたということで、声を聞いたのか
ー縦と横が交差して、又一の仕事が明治の御世に、与次郎に引き継がれておしまいってことか

この百物語の会以降、風の神はもういなくなってしまったから。どちらにしろ怪異をつかった取り組みはもう、おしまい、なんだよね。
ただそこにはまた何か湧いてる気がするけど、もっと不粋なもの、かな。

最後に障子裏にいたのは、庭にいつも白い影としてぼぅっと現れてた又一を彷彿とさせるので、それでお願いします。

ここまで書いておいて、もはや意味不明かもしれないですが、とにかく私はとても感動したということです。後巷説は本当に伏線いくつも仕込まれた上での総仕上げのような出来なのでぜひこの三部作を読んでほしい。

西巷説は又一の兄弟分の林蔵の話(イケメン描写なことに若干の驚き)
前巷説は又一と林蔵の若かりし頃、例の稲荷坂の祇右衛門という仕組みの2回目の解決が描かれる。

まぁこの2回のはなとなくスピンオフ感なんですが、1つ解釈変わったことがあった。
もともと、無印巷説ー続巷説で、百介目線で描かれるのですが、なぜ又一たちがこの中途半端な若造を面倒見ているのか、という点が薄ぼんやりとしておりました。まぁ使えるし、身分気にせず話してくるいいやつだしみたいな? だけど、
前巷説で又一は人は殺さないという信条の元に半端者として徹底的に描かれ、それを貫くことを白い御行の姿になった。そう又一もまた闇の世界の半端者。だから昼とも夜にもどっちつかずの百介に好意を持った。そう、対だったのだと納得!老人火での裏と表、昼と夜の二人の天狗が逝った時、モラトリアムから卒業したのは百介だけではなかったのかもしれない。又一もまた、又一という名と白い装束を捨てて、八咫烏という黒い単衣に黒袴を纏ったのかも。

今スピンオフだと思ってる前巷説と西巷説が、遠巷説と繋がって了巷説で又一から見た巷説の了リが見事完結してくれることを祈る。

ガチファンってほどでもないかもだけど、結構気持ち悪いレベルで好きだな。私。周りで誰もこのシリーズ読んでくれないので語れなくてほんと悲しい。



後巷説百物語

遠巷説百物語

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