ギターブーム

二十世紀初頭にギターブームがあったとかで、スペインのファリャやモンポウが作曲したのは自然だが、フランスのルーセルやイギリスのブリテンが作曲しているのは興味深い。ブリテンの作品は二十世紀中期なような気もする。ドビュッシーはギターが大好きだったみたいだし、ラヴェルもヴァイオリンソナタでヴァイオリンパートにギター奏法を取り入れている。日本の伊福部昭もギター曲を残している。そのブームの立役者はおそらく、スペインのギタリスト、アンドレス・セゴビアだ。編曲者としても才能を発揮したモダンギターのパイオニアである。

手元にルーセルの楽譜があり、音符をギターでなぞってみる。ギターは当時、伴奏楽器としての要素が強かったようで、和音が弾きやすい調弦が採用されているため、和音と旋律を同時に表現させるためには、ギターの器楽性を十分に理解せねばならない。例外的に低音弦の調弦を低くすることがあるくらいで、基本的にはギター特有の調弦だ。これは他の楽器にも言えることだが、対象の楽器を弾けない状態で作曲することは、なかなか骨の折れる作業なのだ。ルーセルのギター曲、その名も「Segovia」に触れると、ギターの器楽性に向き合った痕跡が刻まれている。作曲者が残した音符を始めとする暗号に向き合うことで、作曲者の細胞の一辺に触れたような錯覚を起こすから、楽器は、ギターは本当に面白い。

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