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旅のこと
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タイ、ほほえむのは、君かわたしか

タイ、ほほえむのは、君かわたしか

「なんかさあ…ゾウ、乗ってみたくない?」

大学2年生の夏やすみ、駅前のハンバーガー屋さん。
身体の熱を冷ますように、わたし達はシェイクを飲んでいた。

「ゾウ?ゾウって…あの?」

「そう。パオーンのゾウ。」

「まあ、乗れるなら乗ってみたいけど…」

「ほんと?じゃあ、タイ、行こうよ」

*****

こうしてわたしは、「ゾウに乗るためだけにタイに行く」という思いつきの旅に、友達を引き込むこと

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せかいの誰かが、わたしを想ってくれるということ

せかいの誰かが、わたしを想ってくれるということ

はじめては、19歳のときだった。

飛行機にのるのも、大きな海をこえるのも、ひとりで大陸を「移動する」ということも初めてだった。

今でも忘れない。成田空港で母に見送られ、搭乗ゲートに向かった、あの気持ちを。これからはじまる異国での数ヶ月の暮らしに、こころは高なり。
少しの心細さと、とどまることのない期待で、胸は、いっぱいだった。

「はじめて」は、楽しい。

「はじめて」は、ワクワクする。

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ホイアンの街で思うこと。やっぱりわたし。

ホイアンの街で思うこと。やっぱりわたし。

たしかに現実なのだけど。写真で見たこの景色は、ほんとうに存在したんだなあと、まるでひとごとのように眺めていた。

何が有名で、何が美味しいのか、物価や、過ごしやすい宿などの情報だけは、世界一周をしている方のブログから知っていたけれど、写真にうつるその風景を、どうしても自分の目で確かめたくて、気がつけばチケット購入ボタンを押していた。

ーベトナムはバイクの量が多くってうるさいらしい。
うんうん、噂

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眠るためには、1冊の本と温かいお茶が必要だ

眠るためには、1冊の本と温かいお茶が必要だ

東京には、泊まれる本屋さんがあるらしい。

そう聞いて、本がだいすきなわたしは、すぐにbooking.comとagodaとExpediaを開き、どこかに空室がないか確認し、最後の1室を無事agodaから予約することができた。

麻布十番駅から徒歩5分くらい。大通りから一本奥に入ったとところにある、book tea bedさん。

ブックティーベッド、ではなくて「ブッティーベッド」と呼ぶらしい、と知

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「さみしい」と言えないほどに孤独だった

「さみしい」と言えないほどに孤独だった

桜が散りそうな4月の終わり、わたしの大切な2年間はあっという間に散っていった。それこそ、余韻だとか風情なんてすこしも感じさせないスピードで、まばたきした瞬間に消え去った。

想像に反して、涙は、出なかった。だけど、世界からひとり、取り残された気がした。
すべてが息苦しく、すべてが生き苦しかった。どうにも身動き取れなくなったわたしは、逃げるように飛行機に飛び乗り、海を越えた。
自分のことを知

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今日もどこかで、きっと

今日もどこかで、きっと

その日わたしは、確かにそこに導かれて、確かにそこにいた。ハワイで買ったお気に入りのサンダルを大切にしまって、その代わりにカーデガンをしぶしぶ取り出す9月。
まだ少しでも、だいすきなあの季節を追いかけていたくて、わたしは必死に抵抗していた。サンダルはまだ、しまわない。カーディガンも、取り出さない。
いっそのこと、どこまでも熱気が広がる街に溶け込んでしまえばと、思ったのを覚えている。

向かう先は、や

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feel ALOHA②

feel ALOHA②

敏感だな、と思う。

不感症になったらどうしようかと思ったこともあったけれど、この感覚が戻ってきたことにホッと息をついた。

もちろん、変な意味じゃなくてね、心の話。

ご飯を食べて思わず顔がほころぶことや、息がとまるほどの景色を見て溢れる涙とか、触れ合う人の優しさに痛感する自分の小ささや、あったかい気持ちが広がることとか。

わたし、また感じることができるようになったんだなあ。

信じるもの

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feel ALOHA①

feel ALOHA①

「まだ導かれてないんだよね」

「へえ。珍しいね。」

友人とそんな会話を交わしたのが2ケ月前。お酒を飲んで別れた後、さてどうしようかと考えながら寒空の中を歩いた。いつもだったら、もう行き先はきまっている頃だった。
それなのに今年は何も浮かばない。閃かない。見上げると、まんまるには成りきれていない月が光っていた。
ねえ、あなたは答えを知っているの?
なんて問いかけてみたりして。

旅をするときは、

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