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エネルギーの新潮流:化石燃料の代替手段はあるのか?

俯瞰レポートの第二弾です。今回は、エネルギー分野を見ていきます。

1、 エネルギー消費の現状

エネルギーの消費需要は、第二次大戦以降に人口増加と共に爆発的に増加しました。
過去から現在にかけてずっとエネルギー生産を担ってきたのが、石油、ガス、石炭といった化石燃料です。

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(出所:資源エネルギー庁)

ご存知の通り、温室効果ガスを発生させる化石燃料からの脱却(低炭素社会の実現)が望まれている昨今ですが、世界のエネルギー需要の85%を化石燃料が担っています。
他は、原子力5%弱、水力7%、再エネ(水力以外)は僅か3%です。

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(出所:資源エネルギー庁)

では、この先もずっと化石燃料に依存し続けるしかないのでしょうか?

2、 敬遠される原子力発電

発電手段別の生産コストを見てみると、原子力と水力が最も安価です。
しかし、原子力は福島原発事故を機に、推進への風当たりが強くなっています。
その結果、日本は最も割高な石油火力に当面は依存し続けなければならない状況になっています。

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(出所:資源エネルギー庁)

世界的に見ても、原子力発電は1980年代~90年代に増加した後、近年は頭打ちになっています。

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(出所:資源エネルギー庁)

化石燃料の代替手段として現時点で最も現実的な代替手段ではありますが、リスクの大きさ等から敬遠されつつあるように見受けられます。

3、 再生エネルギーは化石燃料の代替手段となり得るか?

では、再生可能エネルギーとして注目されている太陽光や風力はどうでしょうか?
特に太陽光発電は、技術革新と普及による発電コスト低減が大きく進んでいます。

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(出所:Nature Energy)

ただ、太陽光と風力は面積あたり発電量(エネルギー密度)が小さく、稼働している時間が短いため、広大な土地が必要となります。
国土が狭く、7割が山地で、日照時間も限られる日本は地理的条件も不利です。

再生可能エネルギーの普及率が高い欧州各国と比べると、地理的条件に加えて、制度面の課題もあります。
日本では欧州より10年遅れで固定価格買い取り制度(FIT)や電力自由化を進めていますが、送電網の形態や既存事業者との調整などの障壁もあり、まだまだ時間がかかりそうです。

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(出所:資源エネルギー庁)

再生可能エネルギーがこれから伸びていくことは間違いありませんが、化石燃料を代替するまでになるかというと、少なくとも日本では難しいように思います。
むしろ日本は再エネ分野で世界に大きく置いて行かれるのではないかと危惧します。
かといって、フランスや韓国のように大胆に原子力政策に舵を切ることもできません。

4、新技術の可能性

この分野で進む様々な技術研究の中で、「核融合発電」に注目しています。
核融合発電は決して夢物語ではなく、国際プロジェクト(ITER計画)による核融合炉建設が、2025年の運転開始を目標に進められています。

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また、従来型の核融合炉の欠点を改善した「次世代型核融合炉」の開発は、多額の資金を集める核融合ベンチャーが中心的役割を担っています。
「ハイリスク・ハイリターン型の革新的な取り組みはベンチャーが担う」という創薬分野に似たエコシステムが形成されつつあると感じます。

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