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マイナンバーカードを家の中で失くす者ですが行政書士になりました

行政書士事務所を開業しました。鹿児島会所属の湯目知史と申します。

すごい、いかにも立派そうな冒頭です。「士業」たるもの、各種関係法令を遵守し、高い倫理観で国民生活の充実と円滑な行政事務の運営に貢献していそうです。

ほんとうのところ私は、家の中でマイナンバーカードを失くすし、銀行の届け出印はどれか分からなくなるし、電気料金の引き落としを口座振替にするハガキを何度もらっても正しく送ることができませんでした。そして、情けないことに、今でもしばしばそのようなミスをしてしまいます。あまつさえ忘れっぽい面もあり、好きな言葉は「返信不要」嫌いな言葉は「更新期限」です。

そんな私が、行政書士になったのには理由があります。

ひとつは、日本の行政手続の難易度が高く煩雑である一方、それを支える仕組みが少ないと感じていたからです。運転免許の更新、マイナンバーカードの発行、パスポートの更新。日々を送っているだけで様々なハガキが届き、様々な場所へ行かねばなりません。郵送で遠方の実家から戸籍を取るなんて、特にややこしいです。運転免許などはハガキに気が付かなければアウト(失効)ですし、相続手続などは、どこかの誰かが「いついつまでにやっとかなきゃダメだよ~」なんて教えてくれません。教えてもらう機会がないのに、やらないといけない。こんな難しいことないですよね。

行政書士は、広く街の法律家として、行政と国民の生活の架け橋となるような存在です。遺言、相続、許認可の取得など、忙しく過ごす人が自力で調べきれない領域を専門性をもって助力するという仕事が、私には魅力的に映りました。

ふたつめの理由は、そんな難しい手続を「出来てあたりまえ」という雰囲気があることに疑問を感じているからです。

例えば数年前、「よく分かんなくてマイナンバーカードまだ作ってないんだよね」なんて話を飲み会で友人にしたところ、「バカだな~お前!書類に書いてる通りにやるだけじゃん!」と笑われたことがありました。楽しい飲み会の席だったので全く気にならなかったのですが、終わってから、あの場に居た誰もが「そんな簡単なことも分からないのか」と考えていたのかと思うと、急に恥ずかしくて、こわくなりました。他にも、私が大学生のころ、年金の納付を待ってもらうために学生納付特例申請が必要と聞きましたが、年金というのが、いつ・なぜ徴収されて、それは自分にどう返ってくるのか、何も分かりませんでした。平然と手続きを済ませている学友を見て、「誰もが年金制度を理解しているのだ」と感じ、自分だけが取り残されるような、足場が崩れるような、そんな心境だったことをよく覚えています。

今思えば、とりあえず手続きをしていた者も多く、年金制度を必ずしも理解しているわけではなかったことは想像できます。しかし当時は、なんだか自分だけがわからなくて、それを他者にもおおっぴらに言えなくて。そうこうしているうちに、社会についていけなくなるような、そんな味わったことのない気持ちになっていたのです。

これから私は、そんな人のために仕事がしたいなと感じています。

行政から届いた書類を、「何か大事そうだ」と思いつつも、封を開けずに下駄箱の上に置いてしまう。そんな人のためにできることを考えたいのです。

「分からない」という状態はひどく不安定です。聞けばいい、と思うようなことほど、こんな当たり前のようなことを尋ねていいんだろうかと不安になります。そうして、社会とのつながりは緊張感を持ち、日常にゆるやかに自棄が含まれていきます。

今、不安を抱えている人で、たぶんこの不安には法律や行政制度が絡んでいるなと思うかたは、お気軽にご相談ください。書類を読めばわかる、ということは決して言いません。


分からないこと、不安なことを話してもらうために、行政書士は居ます。



筆者について|湯目知史
ゆのめ行政書士事務所代表。行政書士(鹿児島会所属)。相続・遺言・成年後見など家族法が専門。


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