『Love Symbol』スーパーデラックス・エディションのリリース決定???

 24年4月14日、silmongiという人が『Love Symbol』のスーデラに収録されると思われるヴォルト・トラックをXで公開した。それぞれの曲のレングス、そして曲名から、かなりの信ぴょう性を僕は感じた。

https://www.reddit.com/r/PRINCE/comments/1c3qhir/found_this_on_twitter_vault_tracks_that_were/

 しかし『Love Symbol』のスーデラが近日中にリリースされることのそれではない。あくまで『Love Symbol』のスーデラに収録されるだろうヴォルト・トラックだろうという信ぴょう性だ。

 エステートは20年に『サイン・オブ・ザ・タイムズ・スーパー・デラックス・エディション』に続く『Diamonds And Pearls』のスーデラ制作に着手していた。その制作過程で、『DP』制作時の楽曲と続いてリリースされた『Love Symbol』系楽曲、これらの時期が重複していることから、この二つのアルバムを合わせたセットが考慮されるようになっていった。そのタイトルは『Diamonds & Love』で、22年にリリースされると噂になっていたのだ。『DPSDE』に収録されている92年1月11日のグラム・スラムのライブ映像は、22年のペイズリー・パークで開かれたセレブレーションにおいて公開されており、またそのライブから「Diamonds And Pearls」と「Nothing Compares 2 U」の音源を収録した7インチのシングルも来ていたお客さんに配られていた。この流れから『Diamonds & Love』のリリースが期待されていたそうだが、 エステートが22年の夏に、プリンス・レガシー・LLC(注:Limited Liability Company、合同会社のこと)と音楽出版社Primary Waveが所有するプリンス・OAT・ホールディング・ LLCの二つに分かれてしまったことから、そのプロジェクトが一度頓挫。しかしやがて別の新しいチームがそれを引き継ぎ、20年当初からあった『DP』時期にフォーカスした『DPSDE』の制作となったわけである。よって『Love Symbol』時期のヴォルト・トラックも『Diamonds & Love』制作が考慮された時にセレクトされていたと思われる。
 
Uh-Huh (6:28)
91年3月7日、ララビー・サウンド・スタジオで作られた。ブートでリークしているのは(6:17)でそれより少し長い。ダイエット・ペプシのCMでのレイ・チャールズのピアノがサンプリングされている。そしてCMでも言われる「正しい方を選んだな、お前!うん、うん」も歌詞に登場する。

Willing And Able Extended 12" (6:20)
なぜ『DP』の曲が『Love Symbol』スーデラに収録されるのだろう。『Diamonds & Love』で考慮されていたが、『DPSDE』では入れる余地がなかった、ということか。何か『Love Symbol』へと繋がるバージョンなのだろうか。

The Flow (5:12)
90年9月11日ペイズリー・パークにて制作と「Live 4 Love (Early Version)」でそのラップが聴ける前に出来ていたことから『DPSDE』に収録されていても良かったとは思う。90年12月の初期の『DP』コンフィグレーションでも候補曲だったし。恐らくその頃に作られたのが#1(8:21)で、そのエディットが収録されるのだろうか。92年初期『Love Symbol』制作時期に再度作られたと思われるミネアポリスのサンプルがない#2(2:37)もあるがそもそも「The Flow」は2:26と短い曲。よって92年に『Love Symbol』用に作られたフルレングス・ヴァージョンというのも考えられはする。

3 Chains O' Gold (5:53)
91年12月制作。リリースされた(6:02)より少し短いレングス。オルタネイト・ヴァージョンはブートでも未リーク。

Rave Church Style (6:06)
パー・ニールセンの『A Documentary』の第2版でレコーディングされたが『Love Symbol』には収録されていなかった曲として「Like A Woman」、「Tow」と共に記されていた。しかし後の04年の『The Vault』には触れられておらず、24年4月17日現在princevaultにも無かった(「Like A Woman」、「Tow」も無し)。
参考:https://prince.org/msg/7/333135

Love 2 The 9's (6:06)
「3 Chains O' Gold」と同じ91年12月制作で、今までの収録の流れが時系列的には感じられる。リリースされている(5:45)より少し長いのでフルレングス・ヴァージョンか。尚(4:19)のシングル用のエディット・ヴァージョンはブートでリークしている。

With This Tear (3:51)
セリーヌ・ディオンに提供されたもののプリンス・ガイド・ヴォーカル・ヴァージョンだろう。92年1月と「The Continental」、「Damn U」そして「The Flow」の再レコーディングの時期なので当然入ってしかるべし。尚先の『Diamonds & Love』に収録されていたとprincevaultにある。しかしなぜそれをprincevaultはわかるのだろう。princevaultを含め『Diamonds & Love』の収録曲が何なのか4月16日の執筆現在見つけることは出来ない。

Goodbye (1:58)
24年3月24日にリークした音源と同じだろう。

https://twitter.com/hasegawatomo/status/1771691466974200003

それまでprincevaultにはこの曲の記載はなかった。しかし4月16日の執筆時には見つけることが出来た。やはり『Diamonds & Love』に収録予定だったの記載あり。91年12月31日にペイズリー・パークでレコーディング。しかしプリンスとNPGなのか、NPG単独名義なのか、トニー・Mのラップが前に出ているため、不明。All fair in love and war and only love is worth dying for.「愛と戦争において共に偏見性はないのだが、死を捧げる価値があるのは愛の方だけである」。「Live 4 Love」にも通じる歌詞。

Arrogance (4:59)
(1:35)のリリース・ヴァージョンのフルレングス!こんなの初めて!これは興味深い。ヒップホップでサンプリング定番の「I Know You Got Soul」が入っていて、カルメン・エレクトラやNPGの『Gold Nigga』辺りの背景、どのように影響し合っているのかとか、かなりブリッジ的に機能しているのではと勝手に推測。というかもうスーデラ出るんだろうの期待感しかない。

Baby Doll (5:11)
92年4月下旬から5月上旬にかけてシドニーのStudio 301でレコーディング。D&Pツアー中でNPGのメンバーと共に録音。カイリー・ミノーグが歌詞を書き、カイリー用の曲だと思われるのだが、プリンスが歌うNPGとのバージョンが唯一存在し、カイリーのヴァージョンはレコーディングされていないとprincevaultにはある。ブートを含め未リーク。『Diamonds & Love』に収録予定だったの記載あり。尚昔プリンスの95年の誕生日ライブを収録した『June VII』というブートではマイテの「Baby Don't Care」がリークしていてその際に「Baby Doll」とクレジットされていた。

Race (6:47)
91年11月8日LAにあるレコード・プラントでベーシック・トラックが作られ、その時期カルメン・エレクトラの「Go Go Dancer」が作られている。そして4月17日の執筆現在、トニー・Mのラップ付きの初期のヴァージョンが『Diamonds & Love』に収録予定だったの記載を発見した。既にprincevault陣営は『Diamonds & Love』を聴いているということになる。そしてトニーのラップはどのようなものなのか。「Race」の歌詞はかなり僕は重要に思っていて、その歌詞を含む、93年にフルバンド・バージョンが作られて以降の話は拙著『ゴールド・エクスペリエンスの時代』に書いたので参考にして頂きたい。

51 Hours (4:14)
92年4月終わりから5月のD&Pツアー中、オーストラリアのテクノ・プロデューサー、Mark Forresterとシンセ・プログラマー、エンジニアのAngelique Cooperが作っていたトラックを作っていた。それが元である。「マーク・フォレスター(と私アンジェリック)とダーティなシンセ・ラインを弄っている最中、ふろっとプリンスがスタジオからコントロール・ルームに入ってきたの。彼はシンセ・ラインが気に入って、その後24時間かけてトラックを作り続けたわ」。二人はペイズリー・パークに行きプリンスと曲を完成させた。「次の週に音楽の準備を整えて、プリンスは歌詞を考え出し、最終的にダイヤモンド・アンド・パールのキャリアをスタートさせるシングルとして使用することになった。プリンスのデモ・ヴォーカルの一部は最終バージョンに残っているわ」。カルメン・エレクトラもこのトラックのボーカルに参加していると思われるとprincevaultにはある。この曲は92年の夏にスペインのラジオ局で流され、D&Pツアー後にリリースされる予定だった。プリンスは、この曲の長いバージョンを収録した12インチのレコード盤『51 Hours』を約20枚プレスしていたものの、正式には配布されることなく、シングルは未リリースとなった。ダイアモンドちゃんとパールちゃんが歌うヴァージョンは2種類、スペインのラジオ局で流された#1(3:22)、そして12インチに収録された#2(4:21)の二つがあるが、なんとprincevaultにはプリンスのガイド・ヴォーカル・ヴァージョンが『Diamonds & Love』に収録予定だった、とある。

Blood Is Thicker Than Time (3:12)
Housei In Order (4:53)
共にメイヴィス・ステイプルスのペイズリー・パーク・レコーズからリリースされたアルバム『The Voice』収録曲のプリンス・ガイド・ヴォーカル・ヴァージョンが『Diamonds & Love』にあったとprincevaultにある。92年夏制作。ブートでも存在していなかった。

1,000 Hugs And Kisses (8:00)
92年5月上旬、先の「Baby Doll」の頃に作られた。まずロージー・ゲインズ用に作られ、後にカルメン・エレクトラのラップのレコーディングも計画されていた。後にノーナ・ゲイに提供された93年終わりから93年初めにかけてのテイク(4:22)がリークしている。『Diamonds & Love』には初期バージョンが収録されていたとあったが、princevaultはそれがプリンス・ヴォーカルなのか、ロージー・ゲインズが録音していたそれなのか、もしくはカルメンのラップは録音されていたのかどうか、そういった情報は書かれていない。もし曲を聴いているのならその部分は記せるはずだ。聴けている曲と聴けていない曲があるのか。『Diamonds & Love』全てがリークしているわけではないのだろうか。

Uncle Sam (6:47)
The Halls Of Desire (4:32)
Paris 17984302 (3:44)
テヴィン・キャンベルのセカンド・アルバム『I'm Ready』に収録。92年9月録音。ブートでもプリンス・ヴァージョンは未リークだったが、『Diamonds & Love』にあったとprincevaultにある。

The P (3:30)
プリンス・ガイド・ヴォーカル・ヴァージョンが『Diamonds & Love』にあったとprincevaultにある。テヴィン・キャンベルのセカンド・アルバム『I'm Ready』のアウトテイク。92年9月13日録音。92年終わりから93年半ばにテヴィンが歌入れし、8月12日にテヴィンがプリンスとリード・ヴォーカルを入れ直しする作業をしたとprincevaultにある。この曲の歌詞や経緯は拙著『ゴールド・エクスペリエンスの時代』にも書いたが、再レコーディングした事実を書いた記憶はないので新事実か?プリンス・ヴォーカル・ヴァージョン(3:21)が既にリークしているが、もしかすると更なる熟考の後の別ヴァージョンなんてのがあるのかもしれない。

Extraordinary (Live) 2:29
92年9月録音。ベーシック・トラックを作ったのがその頃なのだが、Liveと記載されているのが面白い。92年終わりから93年初めにかけてのロージー・ゲインズが歌入れしたヴァージョンという可能性をまず考えた。それはプリンス以外にNPGのメンバーで録音されているから、それがライブ・レコーディングだったということではないかと。しかしprincevaultではオルタネイト・ヴァージョンが収録とある。恐らくプリンスがロージーに歌入れさせるためにNPGのバンドと録音したもので、歌っているのがプリンス、そしてそれは『The Vault Old Friends 4 Sale』に収録のやはりプリンスとNPGでのヴァージョンとは別のテイク、という意味なのだろう。これも『Diamonds & Love』に入っていたそう。

Face 2 Face (5:01)
92年中期に作られたとされる未発表曲。ブートでも存在していない。
21年初め頃にプリンス手書きの歌詞がRRオークションで出された。"I’ve never been one 2 hide my feelings / baby u blow my mind"の歌詞は「Space」に使われた。
24年4月15日の執筆現在、90年から92年までの曲を収録させる22年夏に企画されたプロジェクト『Diamonds & Love』に入っていたとprincevaultにはあった。

The Ryde Dyvine (4:16)
シングル『MPLS』に収録とほぼ同じレングス、princevaultでも別ヴァージョンと言った記載はない。尚#1(4:05)のバックのプリンスの声がより前に出ているものが存在するが、そちらのミックスのロング・ヴァージョンという可能性もワンチャンある。

In The Middle Of The Night (1:45)
There (1:41)
共に92年晩夏にレコーディングされた未発表曲。『Diamonds & Love』に入っていたとの記述あり。ブートでも完全未リーク。

Super Hero (4:56)
アース・ウィンド&ファイヤーの『Millenium』に提供されたが、後にザ・スティールズをフィーチャーしてのNPG名義でソニー・Tがメイン・ヴォーカルのヴァージョンもリリースされた。またブートでNPGのセカンド・アルバム『Exodus』のアウトテイクとしてのヴァージョン(7:22)があり、それはビリー・プレストンの「Outa-Space」のカバー・ヴァージョンへと繋がる。またライブでもプリンスは94年頃演奏をしていた。princevaultではプリンス・ヴァージョンが『Diamonds & Love』収録されていた、とはっきり書かれている。確かにプリンスの声は以前のも聴こえていたが、その辺りの棲み分けはどうなっているのかは不明だ。なおその録音は92年9月。テヴィンやロージーの曲もその頃作っていたが、きっとこれはスペシャルだから大御所EWFに提供しようと別枠に考えたプリンスが曲が出来た瞬間閃いた気がする。

Remember Me (3:21)
92年晩夏の未発表曲。『Diamonds & Love』に入っていたとの記述あり。ブートでも完全未リーク。

Holly Don't Care (6:33)
92年9月、テヴィンの曲を作っていた時期なのでテヴィンのヴァージョンもあるのかと思われていた。後に「Baby Don't Care」としてマイテが歌入れし『Child Of The Sun』に収録された。princevaultにはホーリー・ロビンソンが歌入れしたとある。

https://en.wikipedia.org/wiki/Holly_Robinson_Peete

テヴィンは歌入れしたかどうか不明、となっている。そして『Diamonds & Love』にははっきりとプリンス・ガイド・ヴォーカル・ヴァージョン、とある。ブートでも未リークだが、そもそもホーリー・ロビンソンのヴァージョンも未リーク。もしかするとAIでの疑似ヴァージョンがどこかで作られているかもしれない。

Dream (Demo) (4:59)
93年1月2日にプリンス、マイケル・B、ソニー・Tの面子で再録音しているが(未リーク)、それより前に恐らくプリンス一人で91年10月下旬から92年半ばの間に作られたデモ・バージョンだろう。これもブートを含めて未リークだ。

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