実家の湯沸かし器が壊れる その4

その1はこちら。
https://note.com/tomohasegawa/n/n59bcd0be61d7

その2はこちら。
https://note.com/tomohasegawa/n/naf5e44adc409

その3はこちら。
https://note.com/tomohasegawa/n/n1a4bac5b28fa

実家到着。玄関にはお届け物が。Amazonで昨日ポチッた電気ポットだ。今あるこのポットは、暖かい飲み物のために必要なのはもちろん、そこから吐き出されるお湯で、冷たい水を溜めた洗面所や浴槽を、いい湯だな~に変えてくれる、八面六臂の活躍が期待されるアイテムである。

悲壮感を漂わせた母が無理やり作った笑顔と共に僕を出迎えてくれた、というわけではなかった。母は元気だった。顔色も良い。失望で青くなり少なくなってしまった血液量を血圧の高さによって補って強引に中和した、そんな都合の良い自律神経を母は持ち合わせているわけは当然ないので、つまり大丈夫そうなのである。血圧は怖くて計っていないとのことだが、リラックス出来ていればそれ程高くはないはず。ぶっちゃけいつも通りの実家、いつも通りの母だった。

まず手を洗う。湯沸かし器のリモコンのパネルは暗いままであったのでスイッチを押す。40℃と表示された。母特有のぬるめの温度設定。そして洗面台のお湯が出る水栓をひねる。もちろんだがお湯は出ない。リモコンを再び見ると、エラーなのだろう、今まで見たことがない状態、A6と01が交互に点滅して表示されている。普段通りの実家だが、お湯だけは出ない、ただそれだけが違う。ふと便意を催す。実家のトイレはウォシュレット、暖かいお湯がピーっと、まるでエレガントなプレイの如く僕の肛門を優しく刺激してくれる。僕の部屋のPCも正常に電源が入ったし、ネットもWi-Fiもちゃんと繋がっている。

届いた電気ポットでお湯を沸かしてみる。3リットルと比較的大きめなものにしたが、水から沸騰させるのに約33分かかるそうだ。このポットだけで実家の浴槽にお湯を入れ全て満たすのにどれだけ時間がかかるのだろう、と思った。大体一坪のユニットバスなら290リットルのお湯が入る。そんなに要らないので210リットル位として設定すると、70回、70 X 33 ÷ 60 = 39時間必要となる計算。お湯は沸騰しているのを入れるわけだが、39時間もかかるのでは冷めてしまうだろうし、毎日お風呂に入ることはもちろん出来ない。途中で水を入れて嵩を増やすことで時間を短縮出来るのか、その辺りはやってみないとわからないが、寝ずにお湯を運べるわけもないし、電気ポッドだけではいい湯だな~ライフは到底無理である。だがここには3口のガスコンロがある。やはり3リットルの入る薬缶、それ以上に入りそうな鍋3つを駆使して沸かせば、時間はかなり短縮できるだろう、できるはず。

ポットの水が沸騰した。箱を開けてから最初に沸かしたお湯は飲むのに抵抗があるので、少し水を入れた浴槽に試しにその熱湯を注いでどのくらい温度が上がるかを試してみることにする。まず3リットルのポットは運ぶにはそこそこ重い。母ならきつい作業となるだろう。そして決定的に彼女では出来ない、と直ぐに悟ることになった。電気ポットからお湯を注ぐために給湯ボタンを押す。お湯が出ない。そりゃそうだ、コンセントに繋がっていないのだから。そうするとポットの蓋を開けて注ぎ込む形になる。しかし湯気は出るし蓋の周辺は熱いしで持ち辛く、僕でも注ぐのに四苦八苦した。何度も注いでいる内に火傷だっていつかするだろうし、早い段階で重いポットを落として壊してしまうかもしれない。

そしていざ入れてみた3リットルの熱湯。浴槽に冷水を何リットル入れたかはわからないが、足湯にもならない程度の深さだというのに、ぬるま湯どころか入れる前と入れた後で温度の差を全く感じられなかった。冷たい水のまま。時間を短縮するどころか、40℃のお湯に果たしてなるのだろうかと心配になった。

続く。

その5はこちら。
https://note.com/tomohasegawa/n/n42426e90bb66

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?