私の平成マンガ史をだらっと語る

uwagaki(https://note.mu/uwagaki)さんやkagoshimaniaxの僕氏
の「平成○○史」を読んでいて、楽しいなあ、さすがだなあと思って、
「何か書きたい」とつぶやいてしまったところ、何か書かざるをえない
流れになってしまった。テーマ「マンガ史」も僕氏の提案である。
で、iphoneのメモにタイトルを書き出していたら、
そこそこ何とかなりそうな… いや、長大になるような…。
まあいいや。書きはじめちゃえ。

【平成前史】
 1976年昭和51年生まれ。従兄の影響でジャンプ。
小学生時代に「キン肉マン」、「北斗の拳」、「アラレちゃん」の連載がリアルタイム。小学3年生ぐらいのころは「ウィングマン」が大好き。
中〜高学年になって「ドラゴンボール」、「ジョジョ」、「男塾」。
でもハマったのは「ついでにとんちんかん」「聖闘士星矢」だった。
「きまぐれオレンジロード」は、超能力×ラブコメ×三角関係という
設定と、かわいい女の子に射抜かれた。大人の男女の話と思っていたけど、
お前ら中学生だったのか。中学生でディスコとか夜の喫茶店とか早すぎだろ。とんちんかん、星矢、きまぐれ、で「ギャグ」「王道」「ラブコメ」をバランスよく摂取した。「こち亀」は別格。「バスタード」は昭和62年連載開始だったんだな。マッチョ魔法使いが主役で、中学生まではまったなあ。呪文・ヴェノムの詠唱はまだ暗誦できるぞ。
スポーツ苦手だったのでスポ根ものはあんまり。

小学生時代には「火の鳥」、「ブラックジャック」(歯医者の待ち合いで
読んだ)にも深く接した。火の鳥は鳳凰編の茜丸が、何度生まれ変わっても
人間になれず、ミジンコやカメになっていく悪夢に妙な現実感を覚え怖くなった。手塚作品は、人の生き方とか罪のようなものについて考えるきっかけとなった。

 志布志から越してきたK君によってもたらされた白土三平「忍者武芸帳」「カムイ伝」もカッコ良かったが、ちょっと大人すぎた。K君はマンガを「描く」という文化も持ち込んだ。コクヨのメモ帳に里見八犬伝をベースに犬が活躍するマンガ「動物里見八犬伝」を一緒に連載したのは懐かしい思い出。

 マンガではないけど、小学生の頃にはガンダムを始めとするサンライズ
アニメにどっぷり浸かって、人生に大切なことをガンダムで学んじゃった世代ということも申し添えておかねばなるまい。

 ジャンプと手塚風味、ガンダムをベースに、運動のできない少年はオタク風味を色濃くし、小説「宇宙皇子」にもハマり、「ファイブスター物語」の
とんでもないロボSFおとぎ話にものめり込んだ。

で、ようやく平成。

【平成】
中学に入学したときは昭和で、中2にあがる年に平成になった。
1989年。僕は伊集院から川内の手前にある隈之城駅まで、片道50分ぐらいを電車で通っていた。 

 伊集院駅にはまだキオスクがあって、そこで毎週金曜日に買っていたのが
「週刊モーニング」。中学生がモーニングって渋すぎないか。目当てだったのは「逮捕しちゃうぞ」(藤島康介)。女性警察官2人のコンビがドタバタするやつ。スピード感があって楽しかった。女警(じょけい)バディものって、他にも何かあったなあ…と思ったら「2人におまかせ!」(八神ひろき)だった。お世話になりました。モーニングはかなり過去から読んでいるので、島耕作は課長の頃からよく存じ上げております。

 警察つながり、というわけではないが、僕の漫画史で欠かせないのが、「機動警察パトレイバー」(ゆうきまさみ)。昭和63年~平成6年までサンデーで連載されていた。1巻のコミックスを買ったのは、西鹿児島駅に入って左側に伸びていた、小さなお土産もの屋などが並んだ一角の小さな本屋だったと思う。いや、1話が載ったサンデーだったかな?とにかくあそこ。サンデーは買う習慣がなかったので、もっぱらコミックス。
パトレイバーは、工事などに使うロボット「レイバー」が普及した1999年!にレイバー犯罪に対応するために警視庁内に設立された警備部特車2課のお話。レイバーに乗る主役が女の子というのが新鮮。さらに上司の後藤警部補、敵役のシャフトエンタープライズの内海課長など魅力的な人物が特に多い作品であった。ゆるーい空気も交えつつ、カイシャ的な視点でわりとリアルに警察組織内部を描く、というのは今でこそドラマでおなじみだけど、初めてやったのはパトレイバーなんじゃないか。踊る大捜査線を初めて観たとき「これはパトレイバーだ」と思った。
その警察のリアルさが出ているのが松井さんというキャラ。主役の特車2課が、暗躍するグリフォンという謎のレイバーと要所要所でぶち当たり対決するのとは別に、松井さんたち刑事は聞き込みなど地道な捜査でグリフォンとシャフトを追いつめていく。そのあたりは深堀りされないけど、これまた要所に松井さんのシーンが入っている。従前の漫画なら、悪の組織を追い詰めるのは主人公なんだけど、パトレイバーでは、レイバーと戦うのは特車2課、捜査をするのは刑事と、きちんと警察内の役割が分けられている。クライマックス前にシャフト重役を松井さんが聴取するシーンは、実はパトレイバーで一番好きなシーンかもしれない。パトレイバーは、今に至るまで1年に1回は必ず読み返す作品。

パトレイバーと同じ昭和63年に連載が始まったのが、「マスターキートン」(浦沢直樹・勝鹿北星)、そして「沈黙の艦隊」(かわぐちかいじ)。
これも今の僕を作っている作品。
 
 キートンは多くの方がご存知だろう。“父は日本人、母は英国人。
考古学講師にして保険調査員。元SASのサバイバル教官で、フォークランドの予備役軍人。学者にして探偵。”の主人公が活躍する大人のドラマである。
 知ったきっかけは月刊ニュータイプの漫画紹介コーナーで紹介されていたからだった。好きなエピソードは、「砂漠のカーリマン」。砂漠に行くならスーツがいいというのは常識。あと、「豹の檻」。海外の動物園のニュースを見るといろいろ勘ぐってしまう。「遥かなるサマープディング」「屋根の下の巴里」もお気に入り。コミックスはいろんな人に貸して散逸してしまった。電子版が出ないかなあ…。
 
「沈黙の艦隊」は、一言で言えないけど潜水艦国際政治マンガ…だろうか。
日米が極秘裏に開発した日本初の原子力潜水艦が、独立国家「やまと」を名乗る、ひょっこりひょうたん島な話である。ひょうたん島と違うのは、悪魔的天才戦略・戦術家である艦長の海江田四郎の指揮の下、米ソを相手にやまとが大暴れしてしまうところ。僕がどっちかというとフネ屋になったのはこの作品の影響。高校の頃、やまとの立体が欲しくて、ロサンゼルス級のプラモを改造したり、木で作ってみたりした。物語終盤、無敵を誇るやまとの前にアメリカ軍の最新潜水艦シーウルフが立ちはだかるのだけど、そのシーウルフの“秘密”を、種明かしの前にモーニング連載中に見抜いたのは僕の自慢である。当時、高校の同級生で、同じく沈黙~にはまっていたN君から、「頭がいい」と褒めそやされた。N君は東大に現役合格したから、N君のほうがよっぽど頭がいい。国内政治、国際政治に関心の窓を開く骨太のマンガであった。

 同じ頃のモーニングには、「」(わたせせいぞう)も連載していた。これも日本の良さを見つめた美しい作品であった。将来は普段着が和服の嫁さんをもらいたいと思っていた。他、若ハゲで2枚目の高校生が主人公の「ハゲしいな!桜井君」もコミックスを集めていた。若ハゲが巻き起こす騒動も面白かったんだけど、都会の高校生とか大学生ってこんな感じなのかー、彼女ってこんな感じなのかー と思い読んでいた。ギャグでは「伝染るんです」(吉田戦車)にはまり、かわうそ君のキーホルダーを学生カバンにぶら下げていた。
 当時は、レビューサイトなんかもないから、マンガは表紙買いすることも多く、伝染るんですは表紙買いだった。この表紙、いまでもじわじわ来る。

 昔武岡にあった本屋で表紙買いしたのが、「りびんぐゲーム」(星里もちる)である。
 バブル期のシビアな住宅事情の東京が舞台。小さなDM会社に勤める主人公のサラリーマン不破雷蔵(25)。ある日、後輩として女の子いずみちゃん(15)が入社してくるが、「会社」で暮らすことになり…という話。
いずみちゃんは同い年でした。仕事とは?女の子とは?誰かと暮らすとは?そういうことをりびんぐゲームで教わった。実際、大学時代に初めて女の子と付き合うことになるまでの流れでは、多いに勇気付けられた。
 ごめん、もう無理。客観的に語れない。知らない人は読むかwikiを見てください。いずみちゃんかわいい。

大学のころは「すごいよ!マサルさん」(うすた京介)でげらげら笑ってた。

 働き出してからは、モーニングを読み続けていて、「ジャイアントキリング」「宇宙兄弟」が良いけど、コミックスを買うタイミングを逸して買ってない。超長期連載なので、買わなくて正解だったのかもしれない。就職して以降、働いて頭を使っていると、体がフィクション、それも現実と遠く離れたフィクションを欲するようになって、なぜか少年ジャンプ作品に帰ってしまった。恥ずかしながら「いちご100%」を30過ぎて全巻揃えるという暴挙に出てしまった。
 もうひとつ恥ずかしながら、同じ理由と立体から入ったのが、マンガではないけどラノベの「フルメタルパニック」(賀東招二)。30過ぎたおっさんが読むようなものではないが、最終巻では泣いた。

 平成26年に出会ったのが、「風雲児たち」(みなもと太郎)。漫画誌から「幕末の話を描いてくれ」とオーダーされた作者が歴史を調べ、「幕末を描くなら、関ヶ原の戦いから描かねばだめだ!」ということで関ヶ原の戦いから江戸時代~幕末を今も連載中。辞書無しで解体新書を訳した杉田玄白、前野良沢らのエピソードはNHKで単発ドラマにもなった。とにかくいいマンガ。ギャグでさらさら読めるけど、ポイントに刺さる深いセリフや場面があり泣ける。解体新書の翻訳という大事業を成し遂げ、長らく子に恵まれなかった杉田玄白に子どもが生まれる。難産で母子ともに命はとりとめたが、早産のゆえか晩婚のゆえか、生まれてきた子には障害があった。その玄白が嬉し泣きして赤ん坊を抱き上げているコマに添えられている文章。「人生である。喜びもあれば 思いもかけぬ宿命に、人は泣かなければならない。しかし苦しみを乗り越えた人のみが、人生の尊さを知る」。

 ほかに林 子平、最上徳内、江川英龍など、メジャーではない多くの魅力的な風雲児たちの存在を知った。マンガとは言え、関ヶ原~江戸~幕末のこのへんの流れを押さえていたことが、後に「幕末ニュース」「幕末維新ニュース」の仕事でひっじょーに役に立った。現在も連載中。

平成末期になって出会ったのはこのへん。
 「あれよ星屑」(山田参助)は、戦後の混乱と闇市の中、戦災孤児らが生きたころの話。大陸の戦地から帰還した元上官と元部下が主人公。戦争の闇、というと一言だけど、人間の心の奥のひだを描いている。どんどん話が重くなっていった。
 「ドリフターズ」(平野耕太)は、妙円寺参りに子どもの頃から参加してた自分が読まなかったら誰が読むのって感じ。世界観のデタラメ感が爽快。
 最近はアプリのジャンプ+で読んでいる「左ききのエレン」(かっぴー/nifuni)が抜群に面白い。天才と凡人の話し。ストーリーの一部は広告業界が舞台で、うわがきさんにも刺さる部分があるんじゃなかろうか。ぜんぜんバトルマンガじゃないのに、最近のバトル感ったらない。ジャンプ+は、激痛に見舞われる難病"モンデレラ症候群"の治療(なんじゃそら)のため、男子高校生が女の子のおっぱいを揉むという話なのに、感動巨編となった快作「ハイリスクミッションセラピー」(仲島歩; ねこばやしぱらそる"モンデレラアドバイザー")や、伏線につぐ伏線と独特の世界観で突き進むミステリー「サマータイムレンダ」(田中靖規)など、力のある連載が多くて、「これ無料で読ませてもらっていいのだろうか…」となっている。単行本買ってお布施せねば申し訳ない。毎日0時に更新されるから、追いかけている作品を読んで寝るとちょうどフィクションで頭がリセットされる。

 モーニング連載中の「ハコヅメ~交番女子の逆襲」(泰 三子)は傑作。

"「もう辞めてやる!」辞表を握りしめた新米女性警察官・川合の交番に、なぜか刑事課から超美人の藤部長が配属されてきた。「岡島県警(の男性陣)を絶望におとしいれるコンビの誕生である。某県警に勤めること10年、隠そうとしても漏れ出てくる作者の本音がヤバい! 理不尽のち愚痴、時々がんばる、誰も見たことのない警察漫画。※労働基準法は警察官に「一部」適用外です。"(公式サイトより引用)

作品中では「岡島県警」とされる、作者の勤務していた某県警が、鹿児島県警とのうわさがある(作中の複数の描写からもう確信に変わっている)。
元県警担当としていろんな内部の様子を垣間見てきたので、本当に楽しく読んでいる。この作者インタにある「(警察は)そんなに立派じゃない人たちが、ただ一生懸命にやっているだけなんだよ!」は、その通りだし、どんな仕事にも通じると思う。

気がついたら、「ハコヅメ」も女性警察官バディもので、中学生のころの「逮捕しちゃうぞ」も女警バディで、パトレイバーも主役は女警で、どんだけ女警好きなんだよって感じです。

現場からは以上です。


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