パテオン

突然だった。これまで大人しかった愛猫のパテオンが最近突然大人しくなくなったのだ。鳴く。空腹を覚えて、トイレに行きたくなって、人恋しくなって、鳴く。これまではそんなことは無かったのだ。

「どうしたん?」パテオンに話しかける。「にゃあ」と快活な返事。このボリュームだって今まででは無かった大きさだ。「にゃあああ」話したいのか。腹は、さっき食べてたもんな。まあ、別に困ることは無い。近所迷惑になるなんてレベルじゃないし、睡眠を妨げられるレベルでも無い。

「にゃああ」また一段、ギアが上がった気がする。ボリュームというより、耳に来る感じ。「んー?」言葉が通じるなら、コミュニケーションが取れるなら、取りたい。絶対に何かしら変化があったのだと思う。

前屈みに顔をのぞいたその頭に、飛び乗ってきた。「どしたんだよ」爪を立てられるのが怖いので、ゆっくり頭を下げていく。床にポンと下りて欲しい。ゆっくり。床と口が付くくらいまで来た。まだ乗っている。「下りないのかよ」上手に揺れを吸収してバランスを保っているのは流石猫というところか。見えないからどんな顔をしているのか分からない。顔を見たところで気持ちは分からないんだけれど。なんか、調子気がする。ニコっとじゃなく、ニヤっと笑っている気がする。首が痛くなってきた。「そろそろいいかな?」頭を動かさないように、両手でパテオンを持ち上げる。無抵抗だった。スッと下ろせた。コッチを向いた。笑った気がした。

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