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菊池恵楓園

去年のことだけど。

水俣病の「水俣展」に続く片麻痺オヤジの熊本社会派見学第二弾は、ハンセン病(癩病←今は差別語)の国立療養所・菊池恵楓園(ケイフウエン)だ。

ウチから車で20分くらいの熊本電鉄・御代志駅の裏にある東京ドーム約13個分のだだっ広い場所に施設があったことは知ってたが、今日、めっちゃ天気も良かったし、ふと思い立って行って来た。前に、東京・東村山市にある国立ハンセン病資料館には行ったことあるし。

あっ、そうそう、肥後熊本藩の初代藩主、あの加藤清正もハンセン病だったんだよ。彼を祀ったハンセン病の患者のための神社もある。

まずは中にある歴史資料館を見学。
ハンセン病とはどういうものか?から、国の隔離政策を基にした偏見と差別の歴史を中心に、人権の回復運動、自治会活動、裁判闘争等の紹介と一見サヨクっぽいけど、実際に国や社会に根拠もなく攻撃されて、病苦と共に大変苦しんだ人たちに想いを馳せざるを得ない良い展示だった。

ライ菌に感染する、その疑いがある者は法律によって社会から完全に排除・隔離され、この地で一生を終えざるを得なくなった。獄中みたく外には絶対に出られない。そして、その子供も隔離される。しかし、これは「癩病は患者の側にいれば、すぐに感染る、遺伝する」という全く誤った知識によるものなのだ。

今じゃ国内で年に数人感染するかどうかで、それも治るし、ほぼ制圧したと言って良い。それでも、平成になっても差別事件が起きたり、出所しても社会復帰が難しかったり、あまり表には出ないかもしれないが、根強い偏見が残ってるみたいだ。やはりハンセン病の後遺症による皮膚等の疾患が、見た目にも強烈な印象を与えることも偏見の理由になってるようだ。

展示では、手が効かなくなった患者のための器具なんかがあって、「これは片麻痺にも使えるじゃんか」と欲しくなった(笑)。中で夫婦になっても、強制の不妊手術や堕胎をさせられ、子供を持つことが禁じられていたため、布人形を作って可愛がってたなんて、なんとも可哀相過ぎるね。資料館の入口には外来の消毒室跡があって、731部隊のマルタを思い出した。療養所と一般社会を遮る冷たく厚いコンクリの壁がなんともいえない暗い悲劇を感じさせ、これも隠された負の歴史なんだなぁとシミジミ思ったね。

実は、ここ菊池市で昔、「菊池事件」という冤罪事件も起こってる。まあ、被差別部落の狭山事件と同じようなもので、ハンセン病患者であるという理由で、殺人事件の犯人にされ、結局、死刑となったのだ。

歴史資料館を後に、端から園内を歩いて散策。ちょこちょこ負の遺産が残されてるけど、もう入所してる患者はほとんどいないため、無人で荒れた長屋など、一種のゴーストタウン化してる。まるで奇怪遺産だ。人の気配がしない白い施設の建物・会館・病棟・治療棟と並んだ古い長屋、白い煙が上がる給食棟、シャッターの降りた商店、電気の消えたコンビニ、曲がりくねった水道管?、雑草ボウボウの畑と雑木林、誰も座らないベンチ、道の真ん中で丸くなってニャーニャー鳴いてるネコ、キレイな野球場とゲートボール場、取り外された公衆電話、車だけは停まってる駐車場…テレビで見たチェルノブイリの廃町を思い出したね。

興味深く見て回ってたら、「脚が悪かとね?」と後ろから声をかけられた。見れば、電動車イスに乗った黒いサングラスの皺くちゃのお爺さんで、両脚共に膝から下がない。両手の指もほぼ欠損している。ハンセン病の後遺症によるもので入所者のお爺さんだった。俺は近くのベンチに座って、10分くらい話をした。ほぼ自分の片麻痺の話しかできなかったけど、お爺さん、「ここもいろいろあったよ。もうワシはこのカラダやけん。外には出れんよ」とちょっと寂しそうに感じた。

広大な敷地に、人の住んでない長屋や寮ばかりなので、行政も何か活用すりゃイイのにね。それともハンセン病の土地だからと差別的に敬遠されてるのかしら。

車かバスで来なきゃならないけど、園内を散歩やジョギングしている人も多くて、リハビリウォーキングするには広くて最適の場所だ。春には桜並木が素晴らしいらしいし。

「普通」と何かしら違ってれば排斥する…それが公的にも認められた病気なら尚更で、官民一緒になって攻撃してイジメる、時代が時代なら、時に殺す。これはどこにでもあった日本の隠された負の歴史だ。こういう狂気を探ることに大きな興味がある。

この園に送られた「ライ病は死ね!外に出るな!近寄るな!」などと書かれた匿名の差別のハガキや手紙を見ると、怒りが込み上げてくるとともに、ホントにマジで悲しくなる。一方で、少数ながら患者を励ます希望の手紙も送られている。

………

また行こうと思ってる。

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脳出血により右片麻痺の二級身体障害者となりました。なんでも書きます。よろしくお願いします。