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「エレファントマン」

大好きなデヴィッド・リンチ監督の「エレファント・マン」(80年、The Elephant Man)。昔、劇場で観てビデオで観て、今回3回目。

アカデミー賞にノミネートされるなど、ヒューマニズム的意図で成功を収めたが、リンチ監督のフリークスへの偏愛が如実に出た良い映画だ。つまり異形の者への多大なる興味、ただそれだけで感動の物語を作ってしまったのだ。一部で「イレイザーヘッド」の後であるため、悪趣味と評されたみたいだが。

モノクロで描かれる19世紀のロンドンの見世物小屋が人気を集める下町の風景はたまらなく好きだ。切り裂きジャックが暗躍したイーストエンド辺りを彷彿とさせる。もう10年以上前だが、ロンドンダンジョンから犯行現場を探して、回ったものだ。

時折挿入されるノイジーな映像の描写(母の顔など)でリンチ監督の映画だということを意識させる。

酷い奇形により捨てられたにもかかわらず、母を神のように慕ってたり、連れ戻された見世物小屋で彼を逃がしてくれたのは同じフリークスの仲間だったり、最期、呼吸器官が詰まることがわかってて普通に横になることで自殺のように死んじゃったり…何もせずにそこにいるだけで大衆のゲスな興味を引いてしまうフリークスの悲劇が上手く表現されてる。

一方で、英国貴族や皇族って、有名になったエレファントマンと交友を持ちたがったり、劇場で派手に讃えたり、なんというか、ヒューマン的な活動が好きだな。リンチ監督は、そういうものもおちょくってるのかしらん。

前に観た時もそうだったが、皆、奇形のエレファント・マンを騙すんじゃねえのか?とドキドキものだった。

トッド・プラウニング監督の「フリークス」もまた観たいし、もう絶版の「夜想 奇形特集」を開いてみたくなった(笑)。

若い頃、映画を観るより先にエレファント・マンことジョン・メリックの伝記(確か現代教養文庫)を面白く読んだ。実在のメリックは母が象に襲われたことで奇形になったと信じてたが、彼は「象皮病」か「プロテウス症候群」で皮膚や骨、肉が大きく変形してしまう難病だったのだ。写真もあり、確か骨格標本が博物館に残ってる。

奇形、特に顔面の奇形はどうしても人に大きなショックを与えてしまう。俺も今だにはっきりと覚えてることがあるが、ガキの頃、家族旅行に行って泊まった旅館の食堂で、隣のテーブルに顔が大きく変形したお姉さんが座ってたのを見た。見ちゃいけないとわかってても、チラチラと見てしまって、ショックで夕食が食べられなかったことがあった。メリックのような全身酷い奇形なら、後ろからゾロゾロと子供達が付いてくるくらいだったろうし、見世物小屋くらいしか生きる場所はなかったろう。

今は奇形の人を見ることもなくなったね。医学が進歩したのか?メリックの歩き方と片麻痺の自分が重なった。俺も後天的奇形だなぁ。

トリーヴズはアンソニー・ホプキンスなんだぁ。気づかなかった。

脳出血により右片麻痺の二級身体障害者となりました。なんでも書きます。よろしくお願いします。