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トラベルテックのCEOが語る生成系AI×旅行ビジネスの現在地とこれから

時間が経つのは本当に早く、あっという間に2024年になりました。そして、年始のイベントとしてテック業界で有名なのがラスベガスで開催されるCESです。

CESに関しては、実際に訪問された方々の有益なnoteがたくさんあるので、そちらをご覧いただくとして、当方も毎年、CESの時期には日英の記事やSNSをチェックし、自分自身の周辺分野に影響がありそうな事柄が発生していないかチェックしています。

CESの出展企業をチェックしたい場合は、下記のURLで検索することが可能です。ただし、企業数が多すぎるのでチェックするのは至難の業かもしれません。

上記のように、トラベルテックに関しては、国内・海外の情報を毎日チェックしてますが、近年、特に注目されているのが生成系AIの影響です。今日は、生成系AIがもたらす旅行業界の変化について、現在地を確認するとともに将来の方向性を考察してみたいと思います。

旅行分野における生成系AIの現在地

はじめに2023年以降の生成系AIと旅行ビジネスの主なトピックスを確認してみましょう。

①旅行ガイド系に進む新興スタートアップ群

AIの技術を有するスタートアップの多くは、旅行プランニングの生成やAIによる旅行ガイドを提供するサービスに注力している印象です。海外では既に資金調達事例も出てきています。

GENERATIVE AI TRIP PLANNING STARTUP MINDTRIP RAISES $7M(生成系AIを活用して、旅行のプランを作成するMINDTRIP社が7百万ドルの資金調達)

https://www.phocuswire.com/generative-ai-mindtrip-travel-planning-llms

Tailbox Raises $1.5 Million for AI-Based Tour Guide: Startup Funding Roundup(AIベースのツアーガイド機能を搭載したTrailbox社が1.5百万ドルの資金調達)

②旅行業バックグラウンドを持つ一部の会社は旅行会社向けの業務効率ツールを提供

旅行業の知識を持つプレイヤーの中には、旅行会社向けに業務効率ツールを提供し始めています。例えば、VoyagePort社は、旅行会社に対し、旅行プランやコンテンツの作成を生成系AIによって支援するMyTrip.aiを提供し始めています。

③自社の予約率をあげるためにUI向上に生成系AIを活用する大手OTA

ExpediaやBooking.comなどの大手OTAは当然ながら自社サービスの強化のために生成系AIを活用しています。例えば、Trip.comは、TripGenieというAIアシスタントを開発し、ユーザーの予約動線の向上を図っています。

生成系AIを活用した旅行業界のこれから

上記のように旅行業に関わる様々なプレイヤーが生成系AIを活用したサービス・機能の開発に取り組んでいますが、今後のトレンドについて考察してみます。

①やはり主役は膨大な顧客データを持つ大手OTA

生成系AI×旅行の分野で最も有利なのは、大手OTAだと思います。旅行ビジネスにおいて最も重要となるのは、(航空券や宿泊施設、現地アクティビティなどを)予約させることです。ここを押さえるためには、「大規模言語モデル(LLM)と旅行者の顧客データ」の連動が必須になると考えています。

例えば、シアトル旅行において、生成系AIに旅行プランニングを生成してもらう場合、顧客(のコンバージョン)データがなければ、ベーシックなプランが複数出てくることになります。顧客は、複数のプランによって旅行プランニングの足掛かりを得るにすぎず、最終的にはそこから自分でプランを深めていく形になります。つまり、プランニングから予約までの動線はつながっていないと捉えることができます。

一方、既に多くの顧客データを有する大手OTAは、顧客の趣向を把握しており、そこにLLMを組み合わせることによって、提案する旅行プランの精度を高めることが可能であり、結果として、プラン提案からコンバージョンへと導くことができるのではないかと思っています。

新興プレイヤーは、ユーザーに対してプランニングを提示する前に、価格や好きなアクティビティ、誰と行くかなどを選択させることでプランの精度を高めていますが、やはり実際にコンバージョンしたデータを有する大手OTAに分があるでしょう。

②航空券の分野への生成系AIの適用はその他の分野よりも導入に時間がかかる

航空券の予約においては、多くの旅行プレイヤーがGDS(Global Distribution System)という航空券予約の基幹システムを活用しています。そのため、生成系AIの活用によって提案の精度を高めることはできても、予約や取消・変更についてはGDSとの連動が求められるため、個々の旅行プレイヤーの技術によって全てを開発するのは難しいのが現状です。

ただし、近年はNDC(New Distribution Capability)という新規格の導入も進んでおり、GDSを介さない予約も可能なため、航空券予約×生成系AIの画期的なサービスが生まれる可能性もあります。

③顧客データを有さない新興系のスタートアップは切り口を工夫するべき

上記の通り、生成系AIにおいて、顧客の生データや予約インフラを有さない新興形プレイヤーは、既存の主要プレイヤーと異なる切り口での動きが必要になります。個人的には、純粋なトラベルアシスタント的な立ち位置のサービスは結構厳しいんじゃないかと思っています(技術を目的としたM&AによるExitはあり得ると思います)。

しかし、厳しいからといって可能性がないわけではなりません。旅行ビジネスは非常に大きな市場があり、市場内には様々なホワイトスペースが存在します。例えば、アクティビティのオンライン予約はここ数年で大きく成長した市場であり、今後もこうした新興市場が出てくるでしょう。また、旅行をサブスク化して販売するHafH社のように、新しいニーズを創造していく方法もあるでしょう。

いずれにせよ新興形は、何かしらの付加価値を付けたうえで旅行×AIビジネスを探っていく必要があることは間違いありません。

結び

今回は、「生成系AI×旅行ビジネスの現在地とこれからを考える」というテーマで記事を書いてみました。最初にお伝えしたように、これはあくまでも一個人の見解ですし、当方が持っている知識も限定的なので、異なるご意見もあると思います。

ただ、ビジネスの将来を予測するということは、かなり重要なんじゃないかと考えていて、旅行ビジネスに関わっている・これから携わりたい方にとってよい機会になればと思い、筆を執らせていただきました。

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