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UXデザイナーは、アダム・スミスの道徳感情論を読むことオススメ。資本主義は人間の利己的な精神ではなく、他者への共感によって支えられていることを知る

アダム・スミスといえば古典経済学の父と呼ばれ、国富論の著者。

「神の見えざる手」という言葉を思い出す人が多いかと思います。誰もが中学校か高校の教科書で名前だけ記憶しているはずです。

そんなアダム・スミスが道徳感情論という本を書いています。

調和ある社会の原動力とは何か?
鋭い観察眼・深い洞察力と圧倒的な例証により、個人の心理と社会の関係を解明した傑作!調和ある社会構成の根幹に、個人の自己愛・自己利益の追求に加えて、「共感」を据えた。そして社会では、適合的な行為が是認され、非適合的な行為が否認されることにより、規則が誕生する。人間が社会的に是認された行為規範を遵守する努力によって、徳のある社会が実現するのだ。最高の啓蒙思想家が、生涯をかけて著した不朽の社会論は今なお光を放つ。 引用:Amazonの紹介文

なぜ道徳感情論がUXデザイナーの仕事と関係あるのか?

道徳感情論では、人の行動はどんな欲求にもとづいているのか?という問いに対し、深い洞察がされています。

資本主義は人間の利己的な精神ではなく、他者への共感によって支えられているということを理解できる本なのです。

UXデザイナーとは、顧客の行動や感情を理解して、最高の体験をデザインする職業です。

この最高の体験とは何かを考える上で、道徳感情論はとても参考になります。

体験は、他者との共感が大前提

個人の体験とは、他者との共感が大前提にあってこそなのだと、道徳感情論を読んで考えるようになりました。

下記は本からの引用です。

我々の最初の道徳的批評は、他者の特徴や行為についてなされるのであって、我々はすべて、このようなものが、それぞれ我々にどのように影響するかをきわめて熱心に注視する
いかに利己的であるように見えようと、人間本性のなかには、他人の運命に関心をもち、他人の幸福をかけがえのないものにするいくつかの推進力が含まれている

そう、経済が人々の共感の連鎖によって成り立っているというのがアダム・スミスは考えていたのです。

体験の中にどんな他者の視点が影響しているかを考える

アダム・スミスは、人間の本性の一つとして「共感」という能力をあげ、道徳感情論の中では、公平な観察者という表現が使われています。

他人の評価を意識して行動→何が是認され、何が否認されるのかを経験として学ぶ→所属する社会における判断基準を身につける・・・という人の行動原則があるとのこと。

人は他者から共感を得られる範囲でのみ行動することができるということ。

本や詩を繰り返し読んでしまうと、我々はそれを読んでもまったく楽しめなくなるが、同席者にそれを読み聞かせることには、まだ喜びを感じられる

他者との共感の中で人は思考し行動する。

決して一人で思考し行動しているわけではない。

そんな他者との関係性を考え、デザインすることがUXデザイナーには求められているのだと道徳感情論を読み直していて僕は強く感じています。

人間にとって可能なことは、「共感をつうじて、他人の感情をくみ取る」ことだけである

他人の感情を汲み取り、より良い体験をデザインできる存在になっていきたいな・・・

本日に、デザイナー向けサービスデザインの入門書というnote記事が上がっており読みましたが、自分は道徳感情論も合わせて読むことをオススメします!

また、道徳感情論は、マネジメントを中心とした組織デザインを考える上でも参考になると思います。

データ経済に移行しつつある中で、感情・共感といった不確実なものと向き合って、理想のデザインを追求していきたいところです。

電力会社や物理学者がいくら統計的確率論に依拠して原子力発電の安全性を訴えても、人間が心や感情のレベルで「納得」しないかぎり、その説明は適合性を確保できない。他人の行為を眺めて湧く気持ちや感情と、自分自身の行為をつうじて湧く気持ちや感情は、ともに自分自身の感情であるからこそ、直接自分自身の心のなかで較べることができ、したがって、言語や理性をつうじた人間同士の結びつきや関わりを広げていくための不可欠の基礎だ、というのがスミスの主張なのである