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老舗旅館の陣屋から学ぶ中小企業の再生モデル〜ビジネスモデル図解から再生ストーリーを読み解く〜

今回取り上げるニュースはこちらです。年始は、経済政策についてのニュースが増えますね。

「中小企業の課題解決が日本経済の成長に」

中小企業は380万社、日本企業の99%をしめる。この大きなパイを占める中小企業が活性化することは、産業全体を活性化することに繋がることは間違いないと思います。※これはずっと言われ続けている。

中小企業の市場を盛り上げましょうと叫ばれる一方で、中小企業が相次いで廃業に追い込まれているというニュースも出ています。

世界に誇る″痛くない注射針″、あの「岡野工業」も!大学全入時代で中小企業の廃業続々

中小企業の後継者不足の問題は、様々なニュースに取り上げられています。後継者不足の課題を解決するために、中小企業のM&Aを支援する企業は注目を集めてきていますね。

中小企業の課題解決でM&A以外にできることは何か?

M&Aは盛んになることは良いこと。ただ、M&A以外にもできることもあるはず。事業承継をする前に、事業を魅力的にして人を育てるというアプローチは当然あるわけなので・・・

一番最初にできることは、経営体質の転換!

経営体質の転換を、①生産性向上、②独自のビジネスモデル構築の大きく2つに分けて考えていきたいと思います。

経営体質を変えることで、若い人たちが、「ここで働きたい!」と感じらえる経営体質をつくっていくことが大切。そして、そのためのテクノロジーやデザインを経営に活かしていくことが求められている。

ここから、テクノロジー(IT)の力でビジネスモデルを変革した老舗旅館:陣屋の事例を読み解いていきます。

老舗旅館「陣屋」の再生モデルから学びましょう

ビジネスモデル転換、生産性向上を通じて中小企業が再生したモデルだと、陣屋という老舗旅館がモデルケースになると考えています。

4代目の社長が旅館を継いだ時には10億円の借金を抱える状況から、「キャンセル待ちの宿」と言われるまでに見事再生した陣屋。

この再生のプロセスをトレースしながら、中小企業が経営体質を見直す上でのヒントを読み解いていきたいと思います。

ビジネスモデル図解

全体像は陣屋グループの全体像を図解してみたので、こちらでイメージを掴んでみてください。

陣屋は、旅館・婚礼2つのメイン事業を行いながら、陣屋コネクトという、ホテル・旅館向けのシステムを産業全体に展開しています。

さらに、陣屋EXPOという事業者のネットワーク構築、学習コミュニティをつくる事業も展開し始めています。

※陣屋の再生モデルについては、経済産業省の資料に詳細がまとまっているのでご参照ください。

陣屋の概要整理

2018年のFuture of workで聞いた内容をもとにしています。

・創業100年
・宿泊客室数18室数
・宴会場6室
・年商5.6億円
・週の宿泊営業日:4日
・EBITDA率:30%
・宿泊客単価:¥50,000
・離職率3%

陣屋が再生したポイントを整理

下記2つが他の中小企業も学べるポイントだと考えています。

①ITで生産性向上→暗黙知を形式知化

ITで生産性向上と書くとありきたりな感じが出てしまいますが・・・伝統を大切にする業界特有の文化の中で、暗黙知(”おもてなし”に代表される無意識な行為)を形式知化して、誰でも再現性のある形にする→業界全体に横展開するという事業展開までもっていっているのは素晴らしい。

マニュアルやシステムを細部まで詰めていくと、業界全体に展開できるという気づきを与えてくれます。

テクノロジーを組織浸透→データドリブンで組織変革をするポイント
・経営⇔サービス⇔マーケティングの全てがデータで一元管理
・現場や経営状況の見える化→アルバイト含めて全員に共有
・データから学習し、意思決定することでサービス品質向上
・データにより標準化を図ることで、社員が顧客と対話する時間を増やす
・高品質のサービスを再現性ある形にすることでリピート率向上
※平均単価を上げるための工夫も同時並行で実施

データを個人所有から組織所有にすることで、シンプルにサービスの標準化は図ることができる。

また、ITツールで情報共有をすることで、「言った・言っていない・聞いていない」の撲滅をしている。

②産業全体の学習コミュニティ構築→ノウハウを進化

産業全体で学習コミュニティを構築していること。陣屋が進化し続けているのは、構築したノウハウを自社やサービス提供先だけではなく、業界全体にノウハウを共有している。

プレイヤーからプラットフォーマーに転換している(しようとしている)のが素晴らしいと感じています。

陣屋コネクト、陣屋EXPOを通じて、全国の旅館のデータが陣屋に集約されるようになる。結果的に、陣屋はデータをもとにサービスを最適化することができるようになるという流れ。

そう、陣屋はビジネスモデルを大転換させることに成功しているのです。

ビジネスモデルの転換=生産性の改善×独自のビジネスモデル構築を、奇麗に実践した凄い事例ですね。

まとめ

陣屋の再生ストーリーから下記3つのことが学べます。

①M&Aだけが中小企業の産業全体が抱える課題を解決する手段ではない

②経営体質・組織体質は、テクノロジーの力で変えることができる

③斜陽産業でもビジネスモデルの転換ができれば、成長のストーリーは描ける

自分も、陣屋のような素晴らしい再生ストーリーを描ける中小企業を増やしていきたいです!

中小企業再生のための参考情報

①テクノロジー活用

おもてなしで老舗旅館がAI(人工知能)を導入、自社サイト予約が2ケタ増も、箱根で始まった経営者の挑戦を取材した

上記は旅館の事例ですが、チャットボットを中心としたAI活用はその他の業界でも2018年はトレンドになりそう。

②中小企業のビジネスモデルを考えるヒントとなる書籍

グローバルビジネスの隠れたチャンピオン企業

無名の中堅企業ながらも、コアとなる技術や顧客との強い関係性をもち、世界市場で大きなシェアを獲得しているチャンピオン企業の強さの秘訣を解説した世界的名著の新装版。

世界に冠たる中小企業 (講談社現代新書)

中小企業が日本経済を支えているのではない。
中小企業こそが日本経済の中核なのだ。
中小企業の再生こそが、日本経済の復活と地方創生のカギとなる!

これからも中小企業再生論はnoteに書いていきたいと思いますのでお楽しみに!