特別定額給付金のふりかえり

コロナ禍の2020年が終わろうとしている。全国の自治体の情報システム部門は多忙を極めたに違いない。テレワーク 、WEB会議システム、そして特別定額給付金だ。いろいろ私の中で情報を揃ってきたので備忘録として書こうと思う。

まとめると「紙申請に注力して比較的うまくまわせたけど、やっぱりこれから紙よりデジタルだよね」ということである。

特別定額給付金前夜

「所得制限等をつけて給付する」という話が4月にでていたと思う。このときどのようなシステムを作るべきかを考えていた。10年前の定額給付金と違い「3密をさける」ことは必須であった。よって、郵便申請か電子申請がメインになると考えた。情報システム部門である私はまず電子申請について情報収集をする。まあ、そのとき国がシステム作ってくれるだろう、って思ってたけどね。グラファーさんやサイボウズさん、そしてトラストバンクさんの情報を収集していた。

「10万円給付は3密をさけるため国が行う」という安倍首相の言葉があったので安心していたら・・・・。某所で「区市町村が給付の事務を行う」「電子申請はぴったりサービス」を使うという言葉を聞いた。職場内で情報を共有するとともに、全国の自治体が対応しなきゃいけないということで動くこととなった。

特別定額給付金の紙様式

4月20日、国から申請書の様式が示された。様式は10年前の定額給付金の様式とあまり変わってなかった。口座情報を記入する欄もちっさいしOCRで読めない。裏に書類を添付したらスキャナーを通すのに苦労する等、記入する人にも処理する人にも「やさしくない」仕様であった。区市町村への問い合わせも増えるだろう。国の人たちも時間のない中で動いてくれているので理解できる。

でも「この様式を無視しよう」って思っていたので全国の仲間と協働で様式案をすることを考えた。「様式のプロ」のような職員さんが作成していただけた。私は時間がない中、その様式がAIOCRで読めるかどうかをAIOCRの開発元に確認し意見ももらえた。

国からOCR対応版の様式が示された。自由にアレンジできる「標準様式」として示された。自治体の状況によって変更することが可能だ。金融機関の種類、自分たちの自治体でどのような金融機関を住民が使っているかわかるだろう。自由にアレンジできることが良い事であった。この国の動きは「異例」なのだそうだ。法定受託事務でもない、民法でいう「贈与」だし、「国が国民や自治体のことを考えて動いてくれた」ことを「異例」だと思わないし、時間がない中対応してくれた国に感謝している。

紙申請をハックする

今回の特別定額給付金、オンライン申請が話題になったが、申請の大部分は郵送申請になる、と考えていた。マイナンバーカードの普及率も10%程度、そのうち全員が申請者である世帯主であるわけではない、また、オンライン申請に必要な署名用電子証明書を所持しているわけでない。ということを考慮すると郵送による申請書が多いはず。

今回の給付金について相談していた自治体の業務とITに明るい大師匠の方からも「OCRとか使って自動化できるところはしなきゃいけないよ。10年前と同じ事やっていたら給付できないよ」と助言をいただいた。「10年前、給付金システム作ったけど、その前工程は人力だったなぁ。この非常時に人は避けないし給付ミスをできるだけ避けないと・・・」ということで「紙申請をハックする」ことを方針とした。国がOCR様式を提案してくれたことに報いたいという気持ちもあった。

その実際については上記の記事をみていただけるとありがたい。「Aという業務をBに変革する」より「ゼロからCとう業務を作る」方が遥かに楽だ。

情報システム部門としての立ち位置

この時期は特別定額給付金だけでなくテレワーク やWEB会議等いろいろ私としてやらなきゃいけないこと多かったので「きちんと関わるから専任にしないで」って人事部門にお願いをしたものだ。国の動きや他の自治体の動きを集め担当者に共有することに努めた。

給付システム

 給付システムの仕様にも目を光らせた。RPAが人間の代わりにシステムに1件1件入力をするのはアホらしいと考えていたからだ。独自で作成されたシステムのマニュアルを戸田市さんに提供してもらい、事務担当者とシステム開発者と共有することで事務のイメージとシステムの仕様を議論できたことが大きかった。

プランB、プランCの準備 

あと、AIOCRやRPAが無償提供されることを知ったのでこれを利用した。

 クラウドサービスであるOCR。無償ゆえに全国の自治体がアクセスする、その可用性と完全性に課題があった。プランB、プランCまで用意をしておいた。当初のプランがうまくいかなかったら、担当者に土下座してまわろうと思っていた。

プランBは別のOCRの検討である。事情をお話したのだが、検討等を先方は快く引き受けていただいた。

プランC

プランCとしては、OCRを利用しない場合の業務の検討である。給付システムをすべての職員数用意することはできない。浜松市さんがトラストバンクさんのLoGoフォームを使って入力していることを知った。

 浜松市さんの担当者さんにお話を聴きながら、LoGoフォームを導入し準備しました。金融機関コードでも金融機関名でも検索できる仕組みをトラストバンクさんに用意していただけたのもありがたかった。


結局。幸運なことにプランAの課題が解決されたタイミングでOCRを使うことができたので事なきを得たが。

反省点

私がやったのは業務効率化の観点の業務本位の取組、ミスなく人手を減らしスピードを求めた。住民本位で考えられたのか?「OCRを使うために書類を裏面にはらずに別紙に貼っていただいた」「書きやすいさ、わかりやすさを追求したがそのそのオンライン申請が便利なら間違いを減らせたのではないか?」「無駄を少なくするための業務フローを描いたが受付状況等をユーザに知らせるためのフローは描いてないではないか?」等反省だらけである。

10年前から技術によりスピードアップがされたが反省点が多い。「UIやUXをもっと考慮しなきゃ。オレ!!」。

加古川市さんのように住民も職員も楽になる仕組みを用意できなかったことが悔やまれる。


やっぱり紙よりデジタル!!!

担当者は「紙よりオンラインのほうがいい」といっていた。今回のぴったりサービスは別として、紙の申請書に記入した個人のデータがオンラインでも表示され、ユーザが申請できたら・・・・。

私もOCRのエントリーの作業をしたが、紙は筆記用具で自由にかけるので記載間違いもパターンもいろいろ見る事ができた。また、1枚の申請書はうすくてもそれが何万枚も集まれば物理的な場所をとる。私も担当者なら「やっぱり紙よりデジタルにしてくれ」って思うだろう。

ハードルはあるんだけど、このあたり下記のnoteに記載していただいているので参照して欲しい。「ほんまこれやで!!!」って感じ。

終わりに

 特別定額給付金で携わった4月5月6月は、いろいろありすぎたし、ここにはすべて書かないけど目的のために手段を選ばず取り組めたことはよかったと思う。

 この特別定額給付金も一つの要因となっている今のデジタル庁の流れを半年前に想像できただろうか。今はワクワクが止まらない感じでスピードあげて取り組んでいる。

もし給付金がもう一度あったら?

「もっとうまくやってやるさ」


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