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この町にある「当たり前」を守っていくために

なんやかんや一年お手伝いをさせていただいた新しいお店が、今月末に本格的にオープンします。

場所は三重県鳥羽市の沿岸部にある、相差町(オウサツチョウ)。

tiny peace kitchenのデザイナー霜田直子さんを通じたご縁で、新しいお店のコンセプトメイキングを担当させてもらいました。

この相差町、本当に魅力いっぱいの町なんです。
「日本一海女さんが多く活躍する町」ということで、海の幸が豊富で、それを美味しくたくさん食べさせてくれる旅館がたくさんあります。

美味しいもの大好きな私も、毎回驚くほど、本当に美味しいものが食べられます。お魚や海藻を使った料理なのですが、食べたことがないアレンジがされていたり・・・。
できることなら、毎回宿泊して美味しいものを堪能したいのですが、子供がいると残念ながら日帰り出張にしないといけないことも多く、本当に本当に残念・・・笑

なぜ新しいお店をやるのか、どんなお店をやるのか。地元の方々と話し合いを重ねる中で、まずはこの町の守りたい景色がなんなのかを知ることことから始めました。

今回は、この一年間観察してきた、相差町にとっての「当たり前」について、少しだけ紹介してみたいと思います。

時代の最先端!パラレルワーカーがたくさんいる町

海女さんといっても、大体の人がパラレルワーク。
海に潜りながらも、自分で畑をやったり、旅館でも働いていたり。
副業やらパラレルワークやら騒がれている時代ですが、相差町では「え?当たり前ですけど?」といった空気感が漂っている。
もしかしたら、こんなに副業とかって騒ぎ立てているのは都市部だけのことなのかもしれない。

女性の活躍なんて当たり前すぎて・・・

相差町はとにかく女性がたくましく活躍している町でもある。
女性の社会進出なんて、今更言うまでもない。
かつては「亭主一人養えないと立派な海女じゃない」 と言われていたほど。

海女文化が町の引っ張ってきたというのも影響しているのかもしれない。
夫婦量という漁の仕方もあるが、夫が船を出して、潜るのは妻。
男性が女性をサポートするという役回りなのが、なんとも面白い。
確かにこの町で出会う男性はみんな柔らかく優しい印象がある・・・。

高齢者がウェットスーツを着こなし、スクーターを乗りこなす光景

町を何回も訪れる中で一番印象的だったのは、高齢者の方々が生き生きとしていることだった。
相差にいる高齢者の方々はとにかく活動的。それこそ80歳を超えた現役海女さんもいる。
ウェットスーツを着こなし、スクーターに乗って、自分が撮ったサザエなどを漁港に下ろしくる姿は、格好良さしかない。
そして、釣りをして今夜の夕食を自分で調達しているおじいさんにも出会う。
何もしなくても生きられてしまう時代に、「生きるために毎日やることがある」というのは、生き生きと生き続けるための大きなヒントになる気がした。

生きるためのコミュニケーションが自然発生する

海女さんは、複数人で船に相乗りして沖まで出る。そして漁が終わると、その日に決めた代表者が漁港に収穫したものを下ろしにいく。
そして、漁の前後には、体を温めるために「かまど」と呼ばれる小屋に集まり、井戸端会議をするのが日常だ。
わざわざ「コミュニティ」とか「コミュニケーション」とか言わなくても、日常的なコミュニケーションが当たり前の多く存在しているように感じた。

自分で作った野菜で漬物を作ったり、釣ってきた魚で干物を作ったりして、それを近所の人にもおすそ分けすることも当たり前。
生活の中で、当たり前にコミュニケーションが発生している。
「コミュニケーションを活性化しよう」なんて言葉が、なんだか恥ずかしく感じられる。

この町の当たり前を守り、更新していくために・・・

私はこの一年通い続けて、すっかり相差町の魅力に取り憑かれています。なんだか帰りたくなる町です。

そして、この町にとっての「当たり前」を守っていくために、必要なことについて、地元の方々と色々と考えています。その第一歩として、新たに誕生する「オウサツキッチン 0032」。

どうやってお店を作ってきたのか、どんなお店なのか、近々ご紹介できたらと思います。


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