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そういえば、もうとっくに春だった。

うっかり、衣替えをするのを忘れていた。

朝、出勤前に手持ちの服から今日着る物を選ぶ。目に入るのは、セーターやカーディガン。私が欲しいのはブラウスや薄手のロングTシャツなのに、クローゼットの中は冬物ばかりだ。

今週に入ってから、もうだいぶ暖かい。桜もすでに咲ききっている。4月も半ばを過ぎたのだからそんなことは当たり前なのに、頭の中も、部屋の中も、全く春になっていない。

まわりの人たちはどうなのだろう。そういえば、3日ほど前、駅前でおしゃべりをしていた女性たちが、一様に若草色の薄手の服を着ていた。生ぬるい風になびいたその服の裾を見て「ああ、春らしいなぁ」と思ったのだった。

ぼうっとしているうちに、春が行ってしまう。茹だるような夏も、きっと不意打ちのようにやってくるのだろう。

去年仕事を辞めたときに、季節を感じることの有り難みをあれほど感じたはずなのに、何ということだ。季節に遅れをとらないように、ほんの少しの変化も敏感に感じ取っていたい。

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