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「スタンドの時間です!」

去年の秋からApple Watchを使っている。

使い始めたきっかけは私のミーハー心だった。10月下旬にニューヨークに行くことになっていたので、現地の交通機関について調べていたところ、地下鉄ではApple Watchでタッチ決済ができることが分かったのだ。どうしても、ニューヨークの地下鉄の改札をApple Watchをピッとかざして通ってみたくなり、私はそれを購入したのである。

現在は職場にもつけて行っているので、私はもちろん日本でもピッという音とともに自慢げに改札を通っている。時計にしては少し重いけれど、メールやLINEの通知も来るのでとても便利だ。しかし、色々な機能がついている割には、それほど使いこなしていないのが現状である。

ウォーキングや心電図も記録できるらしいが、あまり真面目に使い方を調べていない。宝の持ち腐れとはこのことで、私は時間確認とドヤ顔で改札を通るためにApple Watchを身につけているのだ。

しかし最近は、少し健康に気を遣った機能も使っている。それが「スタンドリマインダー」である。一定の時間ごとにアラームが作動して、イスから立ち上がって運動するよう促してくれるのだ。デスクワークをしていると、自ずと座りっぱなしになる。そんなとき、この機能が役に立つ。

仕事中、不意にApple Watchがプルっと振動する。画面を見ると「スタンドの時間です!」という言葉が表示されている。最初はちょっとイラッときて無視していたのだが、このごろはこれが有り難い。パソコンに向かっていると、どうしても悪い姿勢のまま固まってしまっているのだ。Apple Watchの通知を素直にきくようになったおかげで、立ち上がったりトイレに行ったりして、仕事の合間にも身体を動かせるようになった。

そんな信頼を自覚するとき、いつも思うのが、もしもこの小さな端末が暴走して私に何か良からぬ指示をしてきた場合、私は言いなりになってしまわないか、ということである。完全にSF的な妄想だ。「立ちましょう!」と言われて立って、「歩きましょう!」と言われて歩いく。『ハーメルンの笛吹き男』に出てくるネズミのように、いつか指示通りに川に飛び込
む日が来るのでは?と思ってしまうのだ。

そう考えると、何でもかんでもこれに頼るのはやはり気が引けるのだ。スタンドリマインダーにお世話になりつつ、ドヤ顔をしながら改札を通るくらいが、私にはちょうど良いのかも知れない。

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