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雨傘から日傘へ

昼休みに、折りたたみ傘を持って会社を出た。

うっすら小雨が降っている。すれ違う人たちはほとんど傘をさしていなかったが、さしてもおかしくない程度の雨だ。私はベトナムごはんの弁当を買おうと、キッチンカーの列に傘をさして並んだ。

私の前には5人ほどの人が並んでいたが、誰も傘をさしていない。列はゆっくりと進み、私の前が2人になったところで雨がやみ、急に陽がさしてきた。

私はそのまま傘をさし続けた。1人だけ傘をさす私の姿は、小雨が降っていた数分前もちょっと浮いていたが、雨の上がった今も少し場違いな感じがする。とはいえ、意外と日差しは強い。傘をさすには十分な理由があるのだ。私の折りたたみ傘は、ただ単に雨傘から日傘になっただけなのである。

そんな風に、一生懸命、頭の中で言い訳をしてみて、自分がすごく人目を気にしていることに気付いた。1人だけ傘をさしている者がいたところで、きっと周りはそれほど怪訝に思ってはいない。彼らは私の傘が雨傘が日傘に変わった瞬間も、「AランチとBランチのどちらをたのむか」とか、「SNSで何が流れてくるか」とか、そういうことに気を取られていたのだと思う。

たとえ傘をさしているのが自分だけであったとしても、人目を気にせず堂々としている人たちは、きっと私のように頭の中で言い訳ばかり考えているようなことはないのだろう。

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