【掌編小説】蓋

 落ち込む出来事が立て続けに起こった日、うつむいて夜道を歩いていたら、突然私の後頭部に何かがぶつかり、ピコン、と小さな音を立てた。
 驚いて顔を上げると、排水溝の蓋の隙間から子どもの腕がにょろんと生えていて、手に握ったおもちゃのハンマーを愉快そうに揺らしていた。
 かちんときて思わず飛びかかったが、タッチの差で、腕は排水溝に吸い込まれてしまった。
 今日は本当についていないと、舌打ちをして再び歩き始めた時、排水溝の中から老いた男のすすり泣く声が聞こえてきた。

(マリコからきいた話)

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