年間ベスト2018

本年度もよろしくお願いします!

というわけで、超私的な年間ベストアルバム2018です(ラティーナに寄稿したものとは全部変えています、合わせて是非!)。

10. Rafiq Bhatia "Breaking English"

ジャズでは2018年一番の衝撃でした。Son Luxでも活躍するアメリカ在住のギタリスト作。

音響へのこだわりを、ジャズ・トリオとして、そして演奏技術の洗練の上で表現していて、結果ビート系/エクスペリメンタル系と遜色ないというか、むしろ演奏の訛りや凄みも加わり素晴らしかったです。特にドラムのIan Changの特殊奏法の数々は、エレクトロな質感に寄せるだけでなく、楽器らしい要素を強調することで初めて聞いたような音にもなっていて、天才だと思いました。電子的だから楽器的というか。

と同時に、イケイケ感がまったく無いところも良かったです笑。どうしても肉体的になることが多いジャズですが、トリオで演奏がカッコ良いけれどベッドルーム感も強く、滅茶苦茶濃い音楽になっていました。

9. JPEGMAFIA "Veteran"

大体FNMNLの連載に書いてしまったのですが、アルバム全体のトラックの作り込みと曲ごとのつなぎの巧さで、気がつけば何周も聞いてしまいました。デス・グリップス的なエモさと、エクスペリメンタルとも言えるトラックの凝り方、というと聞き辛そうですが、なんかアルバムで聞くとメロウなんですよね。

ラップは叫びまくりですが、実はメロディアスなウワモノ使っていたり、と思ったらほぼノイズのトラックあったり、バランスの取り方が匠!

8. Sam Wilkes "WILKES"

普段は超絶ファンクなベーシスト!しかしソロ作はまさかのアンビエント/ニューエイジ…!全曲参加しているSam Gendelのサックスも素晴らしい!チルくて陶酔感はあるけれど、メロディはしっかり吹き切る胆力というか、スピり過ぎないバランス感というか、アンビエントとしてもハードリスニングとしても聴きやすくて愛聴でした。

個人的にはビート入れ方が上手さが印象的でした。アンビエントの作品には珍しくほぼ全曲ビート(というかドラム)が入っているんですが、まったく気にならないというか、むしろトリップ感を出していて、ドラム良いなと!シンバルの響きが混ざって行く音作りというか、ブレイクビーツの気持ち良さのみを抽出したというか。

ここらへん、確実にLeaving RecordsやCarlos Niño、ニューエイジとジャズの連なりが見えて、かつ現代のジャズやVaporwaveとの関連などのアップデートもしっかりあって、もう最高です!!!

7. Smerz "Have fun"

個人的ジャケ大賞です!滅茶苦茶カッコ良い!

ノルウェーの女性デュオ。「ビート的に面白い音楽を作るのが難しいのでは」な2018年でしたが、正しくビートの展開で進んで行く"ビート・ミュージック"でカッコ良かったです。音はエッジーだけれど、自家中毒にならず、まったく破滅感に行かないタフさが素敵でした。歌のふわふわ具合と実は芯しっくり食っている感じも。

6. Mac Miller "SWIMMING"

実質一位です。今後100%良くなっていったであろうから、もう…。

いくらでも書いてしまうので、2つに絞ります。

・ソングライティング:ヒップホップという意味でも、最近のポップスとしても、モダンな作りで良かったです。この曲はABCA構成(最後に一番最初のメロが来て終わる)なんですが、メロの美しさとラッパー的なラフな感じが混ざっており、一曲目から素晴らしくて笑いました。

・ラップ:トラック(ライブでは演奏)含めて「音楽がカッコ良い」ことを実現させるラップだったと思います。最近如実に増えた「バンド編成ラップ」ですが、個人的には演奏よりも「バンドが生きるラップ」のノウハウが溜まっていて、その最前線が彼だったかと。サンダーキャットがfeat.された曲も、ラップカッコ良い上でベースラインあんなに気になっちゃうラップ曲凄いと思います。

5. Magnétophonique "Une Cartographie Idéale"

多分パリの作家。カセットテープ系。サウナ系脱力アンビエントであらゆるタイミングで聴きました。

(逆だけど)SPシリーズ的なざらつきとシンセのローファイで気持ち良い所をついた音色のセンスが最高でした。OP-1のアルペジエーター使っているような気もするけど、どうですかね。

適当なコラージュ感ある水やら自然の音と、異国情緒漂うメロディで妙な胡散臭さもあるのですが、そこらへん押し切る圧倒的な気持ち良さです。というか、そこ含めてニューエイジ感ある気持ち良さとも。スピり過ぎて無い親しみやすさが好きでした。

4. Rhye "Blood"

TAMTAMの"Modernluv"製作時に一番参考にしたバンドことRhyeです。超シネマティックでハイファイな音響、じっくり踊らせるダンス・ミュージック、と革新的だったのですが、ハイファイな音響は思ったより流行らなかったなぁ…(ハイファイだけれど、こういう質感を顕微鏡で覗いた感じよりも、ばきっとした方向になった印象です)。ピアノのノイズ強調する感じとかバスドラの低音のリッチな入れ方とかフェチ感あって好きだったんですが…。でも今も最高だと思います!

と言いつつ、一番良かったのは彼らのライブです!各人のソロが破茶滅茶長くて面白かったです。しかも「ライブバンドとして最高」みたいな方向というよりも、80年代のあのしつこさというか「プレイヤーはヒーローなんだ」的なちょっとだらっとした長さ&毎回ブチ上げで終わって行く大味っぷり。シリアスで紳士的だと思っていたRhyeになぜここまでハマったのかは、実はこういう天然っぷりが理由と思います。そう思うとどの曲も80年代のあの絶妙な感じが残っていて、あのケレン味を上手く(?)アップデートしたのがRhyeだったのかなとも。オシャレでシリアスかつ天然で愛され感という奇跡!

3. Ian Isiah "Shugga Sextape, Vol.1"

Blood OrangeやYves Tumorとコラボもしているブルックリンのゴスペル・シンガー。ビートの凄まじい格好良さが続く前半3曲でもうベスト入り決定だったのですが(これは3曲目)、後半のシンガーっぷりも内容バラバラ過ぎて面白く3位です。

Smerzの時も書いた「激しいビートだと自家中毒になる」問題、Ian Isiahも天性の歌心と溢れるキャラクター性で見事にぶっちぎり最高でした。攻撃的なリズムと、レゲエネタ使う等サグさ/ヒップホップ感ある荒々しさがカッコ良いです。

そして問題の後半、

このギリギリのセンス、どうしますか!?流石にドラム入れてませんが、このキラキラシンセと熱唱。マンガ的とも言える暑苦しさと派手さ!

しかしここ含め、ハードコアな前半との食い合わせの妙だと思ってます。分裂しているというより、Blood Orangeもそうですが、このダサさ含めたビート/エクスペリメンタル・シーンな気もしてきていて、そういう謎の統一感を一番感じたアルバムでした。そういう意味でも2018年感あります。

2. Tirzah "Devotion"

ロンドンのシンガー。何度か目にはしていたのですが、良さに気が付いたのが12/27だったので、今後評価変わるかも2位、実質1位です。

Frank Ocean以後、あるいはトラップ以後、みたいな切り口が常套手段になった今、果たしてバンドとは、みたいなことを考える2018年だったのですが、そういう意味でも革新的にカッコ良いアルバムでした。ミニマルな音の重なり、ヘンテコに処理された楽器の音、やたら大きいボーカル、とバランス悪いんですが、だからこそ魅力的だと思います。インディ的宅録の質感を生かすものはありましたが、徹底的にアンバランスなものとして、しかもローファイという「実は生々しくてカッコ良い」ではなく、ただもやっとする要素を強調して、作られた作品は本当に初めて聴きました。

エクスペリメンタルだとも普通のポップだとも同時に言える物凄いアルバムでした。とりあえずもっと聴き込みます。

1. Joji "BALLADS 1"

88rinsing所属の大阪出身でアメリカ在住の日系オーストラリア人。元YouTuber。と情報多いですが、ともかくアルバムが素晴らしかったです。

元々は悲しげな曲の印象があって、その辛さにはちょっとついていけない部分もあったのですが、今作で体を張る気持ちが戻って来たのか(MVで坊主になったし)、コミカルだけど悲しかったり、エモいけどどうしょうもなかったり、ファンキーで軽やかにメランコリーと向き合う歌が最高でした。

個人的にこちらも宅録的な音の良さを生かしている印象で、チープな音と素っ気ない歌い方がばっちりでした。


次点

Braxton Cooks "No Doubt"

ミクスチャーを続けるジャズの中で、最も「他の音楽の影響を受け」ながら「ジャズ」であることを保った不思議作。結果何度も聴ける歌モノで、気がつけば愛聴です。そして異様にミックスが良かったです。

Yaeji "98"

アルバムじゃん!と思いました。15分くらい〜のゴリゴリYeaji、こういう曲出して!



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