【私のマニフェスト】 意味や機能性を超えた文字表現

自己紹介も兼ねて、私がどんなものを作っているのかについてお話しします。

私の作るものは大きく三つに分かれます。
今回はそのうち「Experimental Typography」について、実例をまじえて説明します。

Surface Graphic(モノの表面のグラフィック)
・Experimental Typography (実験的なタイポグラフィ)
Crafted Identity(工芸としてのアイデンティティ)


文字を書かなくなったからこそ、文字について考えたい


私たちは今、文字を書く必要があまりありません。

消しゴムの跡が見えるラブレターとか、旅行先からの香りが漂ってきそうな絵葉書とか、思いがこもった文字を読む機会も減りました。

新しい言語の習得にも、手で文字を書く練習が必要なくなるかもしれません。書くことが全てキーボードで済むような時代に、「この丸はこの線の上にないといけない」とかいう形のルールを知らなくても、コミュニケーションをとることが可能になってきているからです。

だからこそ、私は「表現」としての文字の可能性を考えます。

筆跡から書き手の感情や息遣いが感じられるように、書かれた内容の(時にはその文字が読めない人にも)その先のものが伝わってくるようなデザインを追求します。


動作や風景が見えてくるタイポグラフィ

Izabela Plutaという写真家のレクチャーのポスターを製作した時、まず彼女の製作過程を表現したいと考えました。

彼女は、撮影場所を何度も訪れたり、現像した写真も切ったり貼ったりを繰り返すなど、記録と記憶の再訪を重ねて作品を作っていました。

そこで、私自身も同じ文字やイメージの複製と並び替えを繰り返し、彼女のプロセスを体現するようにデザインを仕上げました。

レクチャーのタイトルであるExcavationは「発掘」と言う意味ですが、その意味を知らずとも、文字のあり方から内容が感じられるようなレイアウトを目指しました。


翻訳では見えない言語の側面

こちらは「Housewarming」という展示の様子です。自国の文化を再解釈し、ゲストを歓迎するというコンセプトのもと、それぞれパフォーマンスを行いました。

私のパフォーマンス「KORE KANA?」では、日本の「名刺交換」からヒントを得て、お客さんとお互いの名前をバッグにスタンプして交換しあいました。

全部で18個のスタンプは、平仮名の文字を分解してできたシンボルになっています。

まず私がゲストの名前を聞き、それを日本語に置き換え、その名前を形作るスタンプを使って、ランダムで抽象的なグラフィックを作ります。

以下の画像はその一例で、平仮名で表したもの(上)とそれをバラバラにしてランダムなパターンにしたもの(下)になります。

私のデモンストレーションの後、ゲストは私の名前(ともみ)を作るためのスタンプを手渡され、自由にスタンプするよう命じられます。

平仮名を知っている人は、スタンプの形を確かめながら正確にひらがなを作ろうとし、全く知らない人は、シンボルを単なる形として捉え、自由なパターンを作ります。

文字と判別できないところまで分解することで、名前の和訳では見えてこない平仮名の形の面白さに興味を持ってもらうことができます。

このような、意味や機能性を超えた言語表現の追求を「Experimental Typography」として日々行っています。

今後も、別の作品の製作のプロセスなど更新していきたいと思っています。

*他のExperimental Typographyの作品はこちらからご覧いただけます。

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Tomomi Maezawa

デザイナー。英国リバプール在住。複数の文化圏での経験をもとに、多文化的なグラフィックやタイポグラフィを研究しています。製作過程や日々気になったことなどを記録していきます。ウェブサイト:https://tomomimaezawa.com/

あのときの話、これからの話

これまでの製作プロセスや、進行中のプロジェクトのことなど、私の作品にまつわることを文字にしていきます。
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