【私のマニフェスト】 愛着を持ってもらえるアイデンティティ


自己紹介も兼ねて、私が作っているものについてお話しします。

私の作るものは大きく三つに分かれます。
今回はそのうち、私が「Crafted Idenity」と仕分けしているものについて、実例をまじえて説明します。

Surface Graphic(モノの表面のグラフィック)
Experimental Typography (実験的なタイポグラフィ)
・Crafted Identity(工芸としてのアイデンティティ)


どうして「工芸」なのか


自分が面白いと思っていることを、別の人にも面白いと思ってもらうには、その人との共通点を通して伝えることが有効です。

時には、事実そのままに説明するよりも、聞く人に合わせて例え話をする方が共感を得られるかもしれません。

私がアイデンティティを作る時も同じように考えます。

ビジュアルを提示する側が考えていることや伝えたいことを、それを見る側が理解できる形で作り上げる。そのためには、両方の視点をよく分析する必要があります。

両側に響く「新しい形」が出来上がるまで、対話と微調整を繰り返し、丁寧に仕上げることを心がけています。


意味を最小要素で視覚化する

例えば、イタリアで行われたデザインの展示『FUHA — The expression of air』では、タイトルの意味がわからない人にも共感してもらえるアイデンティティが必要でした。

タイトルの『FUHA』は、日本語の擬音語である、何かを息で冷ますときの「ふーふー」と、温めるときの「はーはー」から来ています。展示では人間と空気の親密な関係を様々なかたちで表現したインスタレーションが並べられました。

日本人の私にとっては、「誰かの吐息を思い出すような、情緒ある内容」というのが何となくわかるのですが、現地の方には言葉で説明してもあまりわかってもらえません。

そこで、その経緯を説明しなくても、アイデンティティから展示の意図や雰囲気を感じ取ってもらえるように、「文字が些細な風で揺らいだり、吹き飛ばされている瞬間」を切り取ったようなメインビジュアルにすることにしました。

実際に紙に息を吹きかけたり、風に舞うのを観察し、一つ一つ文字を起こしていきました。文字の配置や吹かれ方など、日本語を知らない同僚やボスに何度も意見を聞き、調整をしながら作り上げました。

また「思い出や記憶を呼び起こす」という意図を視覚化するため、全体を暖色グレーの色調で仕上げました。

アイデンティティを作るときは、一度作って終わりではなく、対話や考察を繰り返し行って、調整をしながら作っています。

見た目だけでなく、使い心地にもこだわった工芸品のように、使いながら愛着を持ってもらえるようなビジュアルを目指しています。

*他のCrafted Identityの作品はこちらに公開しています。

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Tomomi Maezawa

あのときの話、これからの話

これまでの製作プロセスや、進行中のプロジェクトのことなど、私の作品にまつわることを文字にしていきます。
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