イケダトモミ

ブリストル大学修士課程を経て、本の要約サービス・フライヤーのライター、エディター。元・…

イケダトモミ

ブリストル大学修士課程を経て、本の要約サービス・フライヤーのライター、エディター。元・熱気球部。趣味は楽器演奏や手芸。博士号取得を目指して論文も書いています。夫はクレイジーおもちゃオタクな小説家。PLANETS Clubに入会しました。

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    2018年から2019年にかけて滞在していたブリストルの様子を紹介しています。

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イギリス南西の港町、ブリストルってこんな街

2018年から2019年にかけて、家族を伴っての英国ブリストル大学に留学していました。留学に行く前は、ブリストルはおろか、イギリスにも行ったことがなかった私は、それまでブリストルに何のイメージも持っていませんでした。 おそらく、日本の多くの方にとって、ブリストルは地名も聞いたことがない場所ではないかと思います。 2017年にはイギリスで住みたい街No1に選ばれただけあって、ブリストルはとても住みよく魅力的な街でした。 ロンドンからもバスで2時間ちょっと、安いときは片道5ポン

    • ロシアで出会った人たちの気持ちは、全然わからないままだった

      感染症も戦争も始まる前のロシアに降り立ったことがある。滞在時間はたったの1時間。空港の中だけの出来事で、正確にはロシアの大地を踏んですらいない。だけど、一生忘れられないくらいに散々なめにあった。 2019年の9月、1年間のイギリス留学を終え、夫と娘と3人で日本に帰国することになった。そこで購入したのがモスクワのシェレメーチエヴォ国際空港乗り継ぎの、アエロフロート・ロシア航空の航空券だった。言い訳がましいけれど、この航空券を予約した時期はとても忙しかったのだ。だから購入した航

      • 発表しない芸術活動のススメ

        クラリネットを始めてわずか2年余りの吹奏楽部員だったとき、初心者集団の中学生にはとても吹きこなせないような「難曲」でコンクールに出場した。若さゆえの体力と根性に物を言わせ、ありあまる時間のすべてを注ぎ込み、たった7分の曲のために部員全員で毎日何ヶ月もの練習を重ねた。一音ずつ音をとり、つなぎ合わせ、テンポを上げた、青春の断片を押し込めたような一曲を、広いホールで三度演奏した。いつもと違うステージ、照明の眩しさ、客席のざわめき。不思議と緊張はしなかった。曲が始まってしまえば、目に

        • 車椅子のみいちゃんが亡くなった

          小学生のとき、同じ学年に車椅子に乗っている女の子いた。仮にみいちゃんと呼ぶことにしよう。 みいちゃんは一人だけ別のクラスだった。当時、「特殊学級」と呼ばれていたみいちゃんのクラスに、わたしはときおりクラスメイトといっしょに遊びにいった。同じ教室で授業を受けたことはなかったし、みいちゃんがわたしたちのクラスに来たこともなかったので、何がきっかけでいっしょに遊ぶようになったのかは覚えていない。わたしの妹も、別の学校で特殊学級に通っていたので、なんとなくみいちゃんに親近感を感じて

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          「いつものおやつ」ができるまで

          最近急激にはまったことがある。おやつづくりだ。きっかけは、なかしましほさんが「らくちんアップルパイ」のレシピツイートを目にしたことだった。 わずか1ツイートに、アップルパイのレシピがおさまっている。パイといえば、作るのが面倒なお菓子の代名詞だ。あのサクサクのパイ生地を作るためには、何度も生地を折り畳む作業が必要で、手間も時間もかかる。アップルパイなんて、「世界一面倒」の代名詞だといってもいい。その作り方が、こんなに短い文章におさまるなんて。 しかし、「らくちん」とはいって

          「いつものおやつ」ができるまで

          空いっぱいの気球に感動! 佐賀インターナショナルバルーンフェスタ

          2018年にイギリスの南西部の街、ブリストルに留学していた。現地で知ったのだが、ブリストルは熱気球の街だった。成り行きで大学の熱気球部に所属することになったのだが、帰国する頃にはすっかり熱気球に魅了されていた。日本でも熱気球を楽しむことはできるのだろうか。 調べてみると、佐賀県で毎年、アジア最大級の熱気球イベント、「佐賀インターナショナルバルーンフェスタ」が開催されていた。今回は、気球の魅力とともに、2019年の佐賀インターナショナルバルーンフェスタの初日の様子を紹介したい

          空いっぱいの気球に感動! 佐賀インターナショナルバルーンフェスタ

          憧れが等身大になり、恋が始まる『海がきこえる』

          日本テレビ開局40周年記念番組として放送された『海がきこえる』は、スタジオジブリの長編作品で、唯一のテレビアニメである。宮崎駿や高畑勲が関わらない初めてのジブリ作品で、制作のクレジットは「スタジオジブリ若手制作集団」。売れっ子作家であった氷室冴子の同名の小説を原作としており、当時のジブリとしては初の学園ものでもある。海にほど近い高知の進学校を舞台に、当時の時代の空気がリアルな風景とともに克明に描き出されている。 宮崎駿が本作に触発されて『耳をすませば』を構想したというのは、

          憧れが等身大になり、恋が始まる『海がきこえる』

          ロボット初心者の妻が、クレイジーおもちゃオタクの夫に腰を据えて話を聞いてみた

          私の夫である池田明季哉(いけだ あきや)は、「クレイジーおもちゃオタク」を自称する、デザイナー&小説家です。所持しているロボットおもちゃは優に100を超え、自室の棚にはロボットがずらり。Twitterには大長編の自作のロボットおもちゃストーリーを投稿しています。 ▲自作のおもちゃストーリー。読み切るのは大変な長さです。 さらに、Twitter上でロボットおもちゃの「非公式ファンイベント」まで主催して、最新では880機以上の写真投稿を集めるなど、かなりクレイジーなおもちゃ遊

          ロボット初心者の妻が、クレイジーおもちゃオタクの夫に腰を据えて話を聞いてみた

          米澤穂信と青春の残り香

          小学生の頃から本の虫だった。朝、登校と同時に図書館によって本を借り、昼休みには読み終わってしまうので別の本を借りにいく。上級生の図書委員に「同じ日にはもう一冊は借りられない」と言われて「そんなのルールに書いていない」と食ってかかるような子どもだった。 好き嫌いなくなんでも読むのだが、特に気に入っていたのはミステリだ。今では主要な作品は大方読み終わり、よくあるトリックが出てくると「このタイプか」と予想がついてしまう。けれど、それをたしかめるように読むのもまた楽しい。とはいえ、

          米澤穂信と青春の残り香

          聞くことが教えてくれたこと

          突然だが、私は勉強が好きだ。小さい頃から勉強が楽しくて仕方がなかった。学ぶことは新しい世界への扉を開いてくれる。勉強すれば人は幸せになり、それが広がれば世界は平和になるとけっこう本気で思っている。だから私が大学で専攻していたのは教育だったし、新卒のときに選んだのは教育系のベンチャー企業だった。 5年ほどの間、ざっくりと言えば個別指導の塾の先生として、小学生から高校生くらいの生徒たちに勉強を教えていた。勉強嫌いの子は多いけれど、子どもの頃から勉強を好きになることができれば、ど

          聞くことが教えてくれたこと

          いいパン屋の近くに住む幸せ

          数年ほど前に渋谷区のはずれにある富ヶ谷に住んでいた。代々木八幡と代々木上原と駒場東大前の3つの駅のちょうど真ん中あたりで、どの駅からも少し遠い。自宅から目と鼻の先には首都高速中央環状線の富ヶ谷インターチェンジがあり、トラックが行き交う三車線の広い道路の脇には新旧のマンションが立ち並ぶ。殺風景で、ここには何もない。そんなふうに言われることもあるけれど、私は富ヶ谷が好きだった。 じつは、富ヶ谷はパンの聖地なのだ。どの駅からも遠いからこそ、それらすベての駅周辺に点在するパンの名店

          いいパン屋の近くに住む幸せ

          フレンチからラノベ、そして日本の「アタラクシア」——『アタラクシア』を読んで

          タイトルである「アタラクシア」は、ギリシアの哲学者エピクロスが説いた、欲望から解放された「心の平穏な状態」である。金原ひとみはこの小説で、「平穏」を求めながらも欲望にまみれ、もがきながら生きる人々を巧みに描いている。  その中心にいるのは、フランス帰りの元モデルである由依だ。現在は翻訳家として働く彼女は、ブランド品に身を包み、同性からも憧れられる、周囲に流されない洗練された女性として描かれる。彼女にまつわるものは、たとえ不倫中のセックスであっても美しい。磨き上げられたその肉体

          フレンチからラノベ、そして日本の「アタラクシア」——『アタラクシア』を読んで

          楽しいことが、好きだ。

          「不要不急の外出を控えてください」 今ではすっかり耳慣れたこのフレーズを最初に聞いたとき、私は言いようのない居心地の悪さを感じていた。 外出自粛が叫ばれ始めたころ、私はフリーランスとして働いていた。平日は子供を保育園に預けて自宅で仕事をし、土日は夫と交代で子供の面倒を見るか仕事を進めるかという生活だ。自粛要請が出たところで、ほとんど外出する機会のない私の生活が変わるとは思えなかった。 しかし、「不要不急」というフレーズだけが妙にひっかかっていた。なぜこんな呼びかけがされ

          楽しいことが、好きだ。

          グラフィティの聖地、ブリストルでバンクシーをめぐる

          こんにちは、お久しぶりです、イケダトモミです。 昨年まで夫と娘を伴って、ブリストル大学に留学しており、ちょくちょくブリストルについてご紹介していきたいと思っていたのですが、その後の引越しのバタバタとコロナショックですっかりご無沙汰になってしまいました。 外出自粛が続きますが、ネットでは楽しい発信をしたいものだな、と思い、今日はおうちでブリストル観光気分になってもらうべく、ブリストルで見つけた名物グラフィティを紹介したいと思います! そもそもグラフィティって?まずはブリス

          グラフィティの聖地、ブリストルでバンクシーをめぐる

          イギリスで住みたい街No1、ブリストル地元民の遊び場所

          イギリスの南西にある街、ブリストルをご存知でしょうか。ロンドンから電車で2時間ほどにあるブリストルは、海に近く気候が穏やかで、遊ぶ場所もたくさんある隠れた人気スポットです。2017年にはイギリスで住みたい街No1にも選ばれました。 私は2018年から2019年にかけて、家族でブリストルに滞在し、たしかにとても住みやすい街だと感じました。その理由のひとつに「地元民が遊べるスポット」がたくさんあることが挙げられるのではないかと思います。 よくある観光地って、外から遊びに来る人

          イギリスで住みたい街No1、ブリストル地元民の遊び場所

          夫をイギリス留学に連れていったら、夫が小説家になって帰国しました

          こんにちは、はじめまして。イケダトモミと申します。 ツイッターのおもちゃクラスタのみなさんは、クレイジーおもちゃオタクの夫がいつもお世話になっております。 私自身は先日までブリストル大学の修士課程で脳科学の勉強をするために先日まで一人娘と3人で、イギリスのブリストルに滞在していました。 夫の池田明季哉、電撃大賞で選考委員奨励賞を受賞さて、昨日第26回の電撃大賞が発表になりました。 池田明季哉の『グラフィティ探偵ーーブリストルのゴースト』は選考委員奨励賞をいただくことができま

          夫をイギリス留学に連れていったら、夫が小説家になって帰国しました