旅に出られなかった過去の私への鎮魂【オーストラリア・ブリスベン】

どうして私は、移動を続けるのかな、とずっと思っていた。

色々理由はあるはずだ。海外が好き、知らない世界が見てみたい。

今はもうないけれど、旅や移動を繰り返し始めた頃は、「ここではないどこかに、きっと」「きっと私の求めている何かが」


成田からケアンズへ向かって、すでにいくつかの街を訪れてみた。

キュランダ、パームコーブ、ポートダグラス、ゴールドコースト、ブリスベン。

昨日は、ブリスベンを訪れた日だった。世界が大きく変わるかもしれない日、せめて最寄りの大都市に、身を置いておきたかったのかもしれない。

……なんて今振り返ったら納得しそうな理由だけれど、私はただただブリスベンという街に、触れてみたかっただけだと思う。

ゴールドコーストからブリスベンまでは、片道軽く見積もっても1時間半、正確にいえば2時間の道のりだった。朝ゆっくりと起きて、朝食をとって、紅茶を飲んでからもっそりと出かけるような場所ではない。けれど私は、「別に急ぐ旅でもない」と思っていた。

本格的な夏が来る前の、気持ちがよいゴールドコーストの海岸線沿い。20分、30分歩いても、汗をかかない。風が通り抜ける。人々が笑っている。サーファーが、一旦波から出てくる。オープンテラスの店の前を歩きかけ、1人、2人、いやそれ以上の人が黄金色に輝くグラスを傾けようとしているのが視界に入る。

あぁ昼前からビールなんて飲んじゃって、と目を細くして、そういえば1人でビールを飲んでないから、そろそろなんか、飲みたいな、と思う道(終わってる)。

ゴールドコーストからブリスベンへは、470番のバスでまず鉄道駅のネラング駅まで行って、そこからブリスベン中心部のローマストリート駅に向かえば、着く、ということを知っていた。

ネットで調べたバス停とは、場所が変わっていた。でももうそんなことでは驚かない。「How do I get to Nerang?」「Where is the bus stop to go Nerang?」のように聞けば、大抵のことは解決するのを、私はもう知っていた。

滞在時間は、5時間弱だ。できれば、真っ暗になる前にゴールドコーストに戻りたい。

短い。なんて短いんだろう。『僕だけがいない街』を読んでから、半ば癖になってしまっている「バカじゃないの?」(失礼極まりない)という言葉を、今日は自分に向かって言いたかった。


なぜ、私は、こんなにも、移動を。


どうしてブリスベンへ行きたいのか、真面目に考えてみることにした。なぜだろう?

大切な友だちの顔が1人、思い浮かぶ。学生の頃、どうしても留学やワーホリに行きたかった私。そして、実際にブリスベンへ留学へ行った、高校の友だち。

「良い街だよ」と聞いていた。オーストラリア第3の都市。人口は約250万人。きっと、ケアンズでも、ゴールドコーストでも見かけることの出来ない、チェーン店がたくさんあるのだろうと思っていた。そして、Airbnbのホストは、ブリスベンは本当にただの都市だから、日帰り旅ならバイロンベイがよいと最後まで言っていた(バイロンベイも行くけど多分)。

そこは、本当に都市だった。紫の花咲き乱れる、ゴールドコーストよりも、気候が穏やかそうな、川と緑と、歴史と街が調和した、たくさんの国の食べ物が所狭しと溢れる街。

電車の中から、ブリスベンという街を眺めた時、急に私はふと理解したのだ。

これは、過去に旅に出られなかった私への、鎮魂なのだ、と。

オーストラリアについては、よく、よく知っていた。ワーキングホリデー、語学留学、どの街が、どれくらい物価が高くて、どの街に、何があって。

それは、私がずっとずっと、オーストラリアに来たがっていたからだった。

行きたい、と思っても行けない。ワーホリも、諦めなくちゃ。そう思った瞬間の、過去がたしかに私にあった。

「ねぇきちんと、来られたよ」と私は私に、言ってあげたかっただけなのかもしれない。と、Wi-Fiが完備された電車の席で、思う。

そんなことはないのかもしれない。ただの好奇心が、私の足を動かさせているだけなのかもしれない。けれど。

***

行きたいと思ったなら、私たちはどこへでも行ける。
叶えたいと思ったのなら、あなただってなんでもできる。

本当に、準備をするか、しないか。
変えようと思うか、思わないか。

そして少しだけそれを口にしたり、一歩踏み出してみようとしたり、するかしないか。

一緒にがんばれるひとを、見つけられるか、そうじゃないか。

いろんなことが、すれ違うのだと思う。
人生には、タイミングというものがあるから。

私だって、1年や2年の構想じゃない。うっすらと、昔から、このスタイルで生きることを、本当にうっすらとだけれども、きっと夢見ていた。

叶えたら叶えたで、人間きちんと別の悩みや夢が出てくるものだ。
それはきっとそれでいい。

私もすでに、このスタイルで生き続けていくことだけを、望んでいるわけではなさそうだった。

まぁとにかく、オーストラリアなんか近いもんだよ。今から、スカイスキャナーを開いて、日付を入れて、一番安く向かえる都市を探して、そしてクレジットカードを用意して。

夏のオーストラリアの心地よさを私はもう、この肌で知っていた。

行きたい場所ややりたいこと、会いたい人がいるのなら、ねぇやっぱり、少しずつでいいから、自分の足跡や立ち位置を、変えてゆこう。

良い波に、良きタイミングで出会えるように。

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伊佐 知美

ともみの部屋 #2

伊佐知美の、世界一周の旅とエッセイ。2016年10月〜
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