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海沿いの風が通り抜ける場所で【オーストラリア・ケアンズ】

海から吹く風が気持ちよくて、今日はこの席で仕事をしよう、と決める。

3日歩いて、やっとお気に入りの場所を見つけた。きっと今日から、私はここで仕事をするはず。(まぁ明日明後日はこの街にいないんだけど)

別に、ケアンズにいるからって遊ばなきゃいけないわけじゃない。というか、遊びたいんだけど、もちろん海に潜ったりして遊ぶんだけれど、毎日遊んでばかりはいられないじゃない? 

だって私は、この暮らしを少しでも持続可能なものにしたいもの。一過性だとは思っているけれど、でも。

空が青くて、山が緑で、そこらじゅうに停泊している船が白い。青と、緑と、白。私が一番すきな組み合わせだった。

なんだかのんびりした街ね、と思う。店は軒並み17時、18時でしまってしまう。きっとこのカフェも、17時でしまいね。さっき歩きがけに、22時まで開店しているカフェを見つけた。夜はそこへ、行こうかな。

私は、原稿を書いていた。そして、滞在中にオーストラリアで取材をする準備をしていた。日本で取材した原稿と、書籍の初稿のチェックと、編集者サロンの運営と、それから、それから。

***

「最近私は、自分が何か、人として大切な何かが、抜け落ちてしまったんじゃないかと感じる」と、大好きな先輩に言ってみた。

「もしかしたらそれは、あなたが渇望しているか、もしくは過去に消失したものかもしれないね」と言われた。

青い海と、緑の山。白い船に囲まれて、こんなに景色はきれいなのに、ひとり久しぶりに泣きたくなってしまった。

上手いこと言う。そうかもしれないね。

元気よ。とても元気。でも、あまりにも最近色々あったから、多分私は途中で感情に蓋をした。理由はたくさんあったと思う。くだらないことに、気持ちを乱されたくなかった。乱される自分で、いたくなかった。向き合ったら、つらすぎた。どれも本当だと思う。別に私、そんなに強いわけじゃない。少し、逃げたのかもしれない。

生き方を誰かのせいにするのは好きじゃない。今は全部、自分で選んだ。だから責任もきっと全部自分。悪くないな、と思っている。

月曜日の朝にここに着いて、今日はもう木曜日だ。ずっと晴れていた。すでに、肌が焼けそうなくらいに。

明日、明後日は、仕事をしない。朝早くから船に乗って、遠くグレート・バリア・リーフの外側、アウターリーフまで行ってくる。

海の青が、私はとても好きだった。今までに見た海の中で一番透き通っていたのは、ハワイよりも、どこよりも、サイパンのマニャガハ島の海だった。

ケアンズの海は、それを超えてくれるかしら。

パソコンから視線を上げて、周りを見渡してみる。豪華客船が停まる、港の横。「WHARF ONE」という海沿いのカフェだった。

海にせり出すように設けられた席。ガラス張りの窓が、空間を広く見せていた。「これ、下げちゃっていいかしら」と笑う、よく焼けた肌の美しい女性の店員。「having here? or take away?」と聞く同じくとても肌の黒い男性の店員。

ピンクに、黄色に、緑に、白にグレー、ストライプ。花柄のバッグにオレンジ色のサンダル、蛍光色のネイルに、金髪のおばさま。みんな、思い思いに生きているように見えた。

夏の国が、好きだ。日差しの強さと人の奔放さは、わりあい比例する気がしている。そういえば昨日の夜歩いたナイトマーケットでは、60歳はゆうに超えているであろうおばあちゃんと、同じワンピースを手に取っていた。

何を着たっていいんだと思う。どんな生き方をしたって、いいんだと思う。

…ただ、この旅が次にくる3月に終わる頃には(たぶん終わるはず)、私もそろそろ、次の生き方を決めなきゃいけないのかなぁ、ということに関しては、すこし不安になる。

何言ってるんだろう、私。とりあえず、ケアンズの街が、きれいだ、と思っておけば、よいのかしら。



いつも遊びにきてくださって、ありがとうございます。サポート、とても励まされます。