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秋と冬を、春と夏を。愛しい輪廻の午後に

窓の外を見ると、こもれびがチラチラ。日本に帰ってきたのだ、と私は思う。ソロソロ、きちんと語らなければ、と午後の光の中重い腰を上げる。

透明なガラスのポットを、目の高さより上の棚から取り出して、同じく透明なガラスのグラスを手に取る。ふわり、湯気。ルイボスでも、カモミールでも、ほうじ茶でもいい。

コーヒーが飲みたい、といったら、淹れようか、と小さく声が返ってくる。挽いて、よい香りが部屋の中に。ポトポト、とコーヒーの茶色が部屋とグラスを満たす。こういうことを、幸せと呼べる人生がいい、と私は想う。

空と日差しの強さ、朝と晩の風の冷たさが、段々と夏から秋へ移行している、と自覚した途端。なんだか街は、秋に冬の気配を少しずつ混ぜ始めて、この国は冬が長い国なのだ、ともう一度念を押されるように想い出す。

こもれびが左から右へとずれる。空は薄い青から、蒼へとうつり。

秋と冬を、春と夏を。春と冬に、秋に夏。愛しい輪廻。旅から暮らしへと、やっと私は「未来へと還って」ゆく。6年前に、私が提示した、これからの在るべき姿へと。


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