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気持ち良すぎてなにも言えない【フィンランド・ヘルシンキ】

一歩お店に入った瞬間、ふわりと漂うシナモンの香り。「モイ!」と金髪の女の子がカウンター越しに私を見て挨拶して、次いでコーヒーの豊かな香りが私を誘う。

「カフェ・スッケス」は、ヘルシンキの街中から徒歩10分くらいでたどり着く、素朴な内装が魅力の地元のひとに愛されているカフェだった。ヘルシンキは、ストックホルムやコペンハーゲンと比べると少したしかにサイズが小さいようだった。

たしかに、というのは、ストックホルムで取材したときに、取材対象者さんがそんなことを私に言っていたからだ。

けれど私はこの街がやっぱり好きだった。もう、どの街も好きだよ。だって、人生で行きたい海外の街リストの上から順に、塗りつぶすようにこの100日間移動し続けてきたんだもの。

ニューヨーク、パリ、ロンドン、バルセロナ、ハワイ。あとはイタリアのローマ、ヴェネツィア、フィレンツェ。もしこれらの街にあなたがまだ行ったことがなかったなら、今すぐに、とは言わないから、できるだけ早いうちにこれらの場所を訪れてみてほしい。

なぜならやっぱり世界の誰もが知る街だけあって、そこは本当にきれいだからだ。特にイタリアとスペインが私は好きで、カプリ島やアルハンブラ、トレドといった街はできたら一緒に行ってほしい。

けれど、もしこれらの都市をあなたが訪れたことがあるならば、できたらクロアチア、ラオス、ミャンマー、スウェーデン、そしてフィンランドに来てみてほしいな。あとチェコと、もちろんタイと、カンボジアと、そうだな、オーストリアのハルシュタットもきれいだったし、歴史的な建物、美術館、という意味では、私はウィーンが一番だなって思ってる。台湾のごはんもなかなか美味しい。

……何を浮かれたことを言ってるんだと思うかな? そう私いま、浮かれているの。だって、デンマークからずっと朝晩肌寒かった気候が、フィンランドに入ってから、夏みたいにまた変わったのだもの。

もしかしたら、ただの偶然かもしれない。今週が、ただあったかいだけかもしれない。でもね、本当に気持ちがいいの。肌が焼けそうなくらいの日差しの中、太陽の光を反射して光る、ヘルシンキ大聖堂の白と青。

海沿いではみんながゆったり座っていて、このあたりでとれた小さな魚のフライや(言ってしまえば居酒屋でよくある「小アジのフライ」である)、サーモンのクリームスープ、フィンランドで愛されているビールブランド「カルフ」や「ルピン・クルタ」のグラスを傾けたりして(到着初日、美しい町中で、誰かれ構わずちょっとくだを巻いている男性を1人見かけた)、長い夏の1日を過ごしていた。

そう、夏のヨーロッパでは1日が長かった。朝4時頃から明るくて、夜中0時を過ぎてもまだうっすらと空は明かりを残していた。湿度は低くて、風はするりと肌を抜けた。

ここ「カフェ・スッケス」では、15:00の午後の時間を、みんながコーヒーを飲んで楽しんでいた。シナモンロールの香りに包まれながら。本を読んだり、会話をしたり。

私ももう、何もしたいと思わなかった。

いつも、「何かしなきゃ」と思うけれど、旅が終盤に差し掛かっているからか、20代の残りわずかな日々への哀愁なのか、「もう何もしなくていいや」って思ってた。

楽しい、素敵、きれい、楽しい。もう、何も考えられなかった。

ここは夢にまで見たフィンランドだ。もしいつか、私が若い頃日焼けをしすぎたことを後悔する日がきたとしても、「日焼けするから外にはあまり出ないようにしよう」なんて選択は私はしない。対策するとしたら質の良い日焼け止めをこれでもかと肌に塗りたくるだけで、あとはもう、なるようになれだ。

できるだけ多く夏の北欧を肌に覚えてもらって、しつこいようですが、私は来週、日本に帰るのだ。

今はもう、ここにいることを楽しむだけ。そう、もうあとは楽しむだけなのだ。


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