旅人による旅人のためのシェアハウス「えいとびたー」を、はじめます!

たしかあれは、失恋したばかりの時。モロッコの青い街シャウエンで、「どこかに帰りたいな」って、少しだけ疲れたなと思いながら坂をひとりで登ってた。

けど、すぐに「一体、どこへ?」ってひとりで自問自答した。「そっか、私には帰る場所がないんだな」「それを、自ら選んで旅に出たんだ」って、ひとり坂を登りきった時に確認した。

自由は楽しくて、世界は広い。美しさには限りがなくて、私はどこまで行っても新しい人やモノ・コトに出会えていた。それはとても幸せで、本当に旅自体はすばらしくて。私は「旅と一生生きていこう」と、旅のあいだいつもいつも思っていた。そして心の底で、それは今も揺るがない覚悟として私の中に残っている。

……けれど。いつもいつも、いつまでもこの「ゆらり、くらり」の暮らしが続けばいい、とはどうしてか思えなかった。

「日常の積み重ねがいちばん綺麗」。そう感じたのは、たしかイギリスのロンドンで。人生にはキッチンとリビングが必要で、毎日おはようと言ったり、おやすみとキスをしたり、「あなたのすきな、いつものあれね」と近所のレストランで会話をしたり、同じ犬がいつものように吠えていたり、波が寄せたり、遠くへ行ったり。

そう、繰り返しは「決して繰り返しではなく」、どんな一瞬も「同じ一瞬ではないのだから」と、私はビビットな世界の変化を目の当たりにしながら、手のひらからこぼれ落ちていってしまった、日常のあれやこれやにいつしかすごく恋い焦がれるようになっていた。

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どちらも追いたい、なんて贅沢なことだろうか? どうしたらいいのかな。そもそもどこで暮せばいいのかな。っていうか「暮らす」ってなんだっけ?

「私は『家がなくても』こうやって生きている」。

東京には好きな人たちが暮らしていて、仕事があって、そしてやっぱり私にとっては未だに日本の中心だった。

「日本人であることを捨てたくない」。

世界をめぐって、これからも旅を続けたとしても。もしも愛するひとが異国の地で暮らすと言わない限り、私はまずはここ東京に、いったんの本拠地のひとつを作った方が、なんとなくだけど良さそうだぞと。2017年の後半くらいから、心を少しずつ決めていた。

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さぁ、書き出したらいつも通りすごくすごく遠回り。まわりくどく言ったものの、私は結局この2月から、ひとつ屋根の下、「帰る場所のある暮らし」をしてみることを決めたのだ。

■2/19 旅人たちのシェアハウス「えいとびたー」始まるよ!

「ねぇねぇのちちゃん、私たち一緒に暮らせないかな?」

そんなことを、言ったんだか言わないんだか、全然ほんとは記憶にない。ただ、この地球のどこに根ざすか、根ざさないのか、旅を続けるとしたら家はどうするのか。考えすぎないように悩み続けていた時に、彼女と私は偶然タイのバンコクで会ったのだ(もちろん直前に予定は合わせたけれども)。

「広い海で、同じウーパールーパーを見つけた気持ち」と彼女は謎の発言を繰り出した。これについては賛否両論あるでしょうし、私だって文句がある(笑)。けれど彼女は正しかった。ウーパールーパーも、31年も生きていれば5匹出会えるらしいと知る。

私も、自分の人生がこんな風に進んでゆくなんて、ほんとのホントに思ってなかった。けれど私たちが家を探したし、私たちが判を押したし、私たち全員がお金を払った。

そして私たちは、全員で顔合わせを済ますことなく世田谷の一軒家をみんなで借りることを決め、入居間際を迎えてゆくことになる。


そんな、そんな数ヶ月。そんな、そんな数日だった。

やっとやっと、ひとつ屋根の下、暮らすことを始められる。

さぁこれから、どこへ行こう? 誰に出会おう? 最終的に、何をしよう?

今後は、えいとびたーを拠点に旅をしたり、仲間と一緒に仕事を作ったり、旅人が泊まれる場所にしたり、あとは世界・日本中から持ち帰ってきたおみやげを集める場所になりそう。楽しいことも、大変なことも一緒に乗り越えて「新しい家族のかたち」を目指せればいいなぁと思っている。(「旅人たちのシェアハウス「えいとびたー」始まるよ!」記事より抜粋)

たとえば地方から東京に来る旅人が泊まれたり、世界中からおみやげが集まったり、一緒にDIYをしてみたり、家でイベントを開催したり。「こんにちは」と「さようなら」が行き交う家に。私もみんなも、旅に出る。そしていつでも帰ってこれる。

「帰る場所があるから、旅に出れる」と、世界一周に出たばかり、ラオスで私は2016年の春に言っていた。

新しい生活が始まるのだ。マリッジブルーみたいな夜もあった。3日連続で声高く叫ぶけど、「家を持つことが怖いなんて、この世界の一体誰が、理解してくれるだろう?」。

けれどここで暮らす5人は、少なくとも知っている。旅をする楽しさを、旅をする切なさを。そして家のない自由を、そして家のない不自由さを。

何が生まれてゆくのだろう。旅人による旅人のためのシェアハウス「えいとびたー」(逆から読んでみてね)を、はじめます。

私たちにとって、旅を愛するみんなにとって、「これからもずっと旅を諦めない」「旅を続けていくための」家。愛せる場所に、なるといい。

※家具がまったくありません。「#えいとびたー」のamazonほしいものリスト、つくりました。お待ちしております…!(笑)

※メイン画像含め、シェアハウスメンバーの写真はすべて 横尾 涼(Photoli)さんの撮影です。ありがとうございました!


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伊佐 知美

ともみの部屋 #2

伊佐知美の、世界一周の旅とエッセイ。2016年10月〜
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