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ひとりではない旅の美しさを、もう一度教えてくれるかな【日本→タイ・ピピ島】

DVDが出たらもう一度観ようと思っていた映画『君の名は。』が、機内で観られると分かって『観ようかな』と思ってディスプレイの操作を始める。

その日私は、中国・北京とタイ・バンコクを経由して、クラビからピピという島へと向かっていた。すべての航空券を予約したのは前日の21時頃だった。

「明日の15時には成田空港から出発するのだ」と思うと、今からすぐに荷物を詰めなきゃ、という焦りはもちろん、ついにタイに行けるのだ、という興奮でなんだか夜も眠れなさそうな気がした。

私はタイが、とても好きだ。多くの日本人が魅了されている通り、私もタイに取り憑かれているひとりだった。

バンコク、チェンマイ、プーケット、そしてクラビからピピ。毎回目的地は変わるけれど、紛れもなくタイは、私が人生でもっとも多く訪れている国だった。

一体そんな、何に? と聞かれると、それはとてもむずかしい。けれど長くアジアを旅する中で、時折バンコクが経由地になったりする時は、まるで日本に着いたかのような安心感と抱いたりする。

この国の匂いや、美味しいごはん、種々のスパイスの香りに、サワディカップという挨拶の響き。目を見張るくらい安い物価に、すこし荒い運転、微笑、旅の人にやさしい感じ。ついでに言えばWi-Fiの速度やノマドのしやすさ、いっそ住めそうだ、と思わせてくれるすべてが、遠く遠くタイを離れても、「あぁもう一度行きたいな」と私を惹き付けてやまない魅力を持っていた。

***

前日にチケットを取る、という行為はもう私にとって珍しいことではなくなっていたけれど、さすがに直行便でも7時間かかるそれは、前日ではなかなか予約ができなかった。「中国の北京経由かぁ」と少し迷う。けれど、明日希望通りに行けるのならば、まぁいいか、久しぶりに中国の空気でも感じに行こう、と、一度北上してから南下するコースを決めた。

こんなことを言ったらお前ほんとうに何を言ってるんだそろそろ刺すぞ、という方が現れても、仕方がないかもしれない。

けれど本当に、私はこの旅で24時間、いや48時間以上、パソコンやWi-Fiから離れたことがなかった のだ。

その生活は、よくよく考えてみるとライターを志した3年ほど前から変わっていないようだった。

あと10日くらいしたら、きっとまた目まぐるしく動く日々がくる。それはもう、分かっている。逃げられない逃げたくない。

であれば、一度ここらで一区切り。2017年を、30代を、独身になったこれからを。会社員としての私を、個人としての私を、今一度振り返って立ち止まって、考えたり何も考えなかったり。空白の期間を作ってあげてもいいかしら。

って私はずっとずっと言っている。けれどどうしても、できなくて。

タイ。あなたのことが、とっても好き。

ひとりではない旅の美しさを、もう一度教えてくれるかな。冬なのに暖かい南国のリゾートへ。さよなら日本、またすぐに、帰ってくると思うのだけど。


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