手離して良かったと思える日が来たこと。

街を歩いている時に突然、音がふっとすべて消えて。

まるで、そう。

映画館の最後列の真ん中で、ひとり。大音量で、爆音で音がするはずなのに、体が震えるほどの音が鳴っているはずなのに、すべての音が。消えて。

わああああ、と、振動だけが体に伝わってくるような、そんな感覚を、この夏、2回3回。いえ本音を言えばもう少し、覚えていた。

その時見えている画像は、目の前に広がる日本の美しい夏の風景だった。そこに重ねて、なんだか昔のアナログのテレビが映らないときのような、いわゆるアレ。砂嵐。

「あぁ、これはヤバイやつだな」と、ひとり東京の夏、思っていた私。

理由はありありと分かっていた。笑っていても、歩いていても、泳いでいても。消えない思考、矛先をどこに向けていいのか分からない、やりきれない怒りと悲しみ。

時間が経つのを待とう、と呪文のように思っていた。きっと時間が解決してくれるからと、いつかこの怒りも悲しみも過去のものになって、やり過ごして、誰も彼をも傷つけない、私もこれ以上傷ついたりなんだかんだしなくて良くなる時が来るからと、じっとじっと。

季節が温度がすべてが何もかもが。身の回りを通り抜けて、「今が過去に」なっていくのを、ずっとずっと、耐えて待って、目をつぶって。思考を止めて、感情に鍵をかけて、笑って、笑って。仕事をする手は止めずに、すべての視線を仕事へと注いで、「こんなこと何でもない」と、人生の組み木がパラパラと崩れていく様を見ていた、夏の頃。

世界一周に出た頃はこんな幸せこの世にない、と思っていて、

世界一周から一時帰国で帰ってきた直後からは、こんな悲しみ今までなかった、と思っていた。

人生はなんて、公平に出来ているんだろう。

***

えっとね。

何が言いたいかというとね。

私、離婚周りのことって、はっきりくっきり、まだどこでも書いていないし、そんなに正確に、多くの人に伝えていない。伝えることが、できなかった。

込み入っていたし、けれどそれはとてもシンプルだったし、言っても伝えても、伝えられないしみんなには関係ない、と思っていたし、悲しかったしでも一方で少しうれしかった自分もいたし、後ろめたさも、やるせなさも。

あぁこれでまた心置きなく旅に出られる。新しく人を好きになれる。どこへだって行ける、誰にだって会える、と。

安堵していた私もいて。

崩れ行く暮らしを放置していつかすべての組み木が空虚になってしまうのを待つよりも。きっかけをもらったのなら、もうここできっぱりと。ここでサヨナラを。

たくさんの人は私の過失で離婚が行われたのだと思っているのだと思うし、それはある側面においては全然間違っていないし、けれど私がお金やなんやかんやでこの出来事を片付けて、そして

あぁもう。

いつかこのやるせない消えない、憎しみを抱いてしまった心を。物語とか、なんかそういう形で昇華できたらと。人知れず泣きながら願っていた、新潟と東京を行き来する、秋。

***

時間が解決してくれることが、この世界にはきっとある。

あとは、場所を変えなさい。と私は私に言っていた。

空っぽになってしまったスペースに、新しいものは必ず何か、入ってくる。

それを無理に埋めないで、と私のだいすきなあの人は言っていた。

何か良いものが、そこに必ず現れるから、と彼女も強く、言っていた。

それが何かは、2016年12月31日が暮れようとする、今この瞬間もはっきりとは分からない。

けれどコレかしら、と思うことはいくつか見つけた。コレであったらいい、と思えるところまで、体も心も追いついた。

はっきり言ってしまうけれど、私は心から、「離婚してよかったぁぁぁぁぁ!」と思ってる。強がりではなく、本当に心から。

あぁじゃあ。次はもう進むだけだなと。

冷たい空気に明るいものを見つけて、きっと年が明けたらまたすぐに旅立つけれど。今はしばし、じっと冬を見つめていようと、とてもあたたかい気持ちで過ごす、今夜と、きっと明日から先の日々。

私だって、ひとりを超えたい。夫婦だって超えたい。紅白見る今年最後の夜、悪くない。帰ってきてよかったと、思えるならなんだってよかったと、2016年、終わってゆく日。

ねぇ今、あなたは何を、見つめるの。

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伊佐 知美

ともみの部屋 #2

伊佐知美の、世界一周の旅とエッセイ。2016年10月〜
2つのマガジンに含まれています

コメント3件

運命と絶望
なんて表現したらいいか分からないけどわたしの好きな文体です。
私の親友が、離婚をすることになって、それを絶望だと表現しています。
彼女に離婚して良かったと思える日が来ることを私は祈っていて、でも何かをしてあげられるわけではないから…
何だか知美さんのお話が身近に感じました。
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