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旅の迷い道、砂漠の向こう、乾いた大地のまっすぐな【モロッコ・マラケシュ→カサブランカ】

モロッコでは、不思議なことが起こる。ただ道を、車で進んでゆくだけで、日本にいる時とはまるで違った光景に出会える。

雨が降れば、道は土砂でふさがれるし、それをスモールなエクスプロージョンで回避する手段を取れば渋滞は免れないし、車道を必死の形相で全力疾走する青年、民族衣装のジュラバを着ながらゆったりと3人乗りのバイクを走らせる家族、ただ、大草原でひとり、座ってわらを編む少年。

別に、取り立てて騒ぐことは、ひとつもないかもしれない。けれど私にとってそれはあまりにも目を奪う、魅力的な景色の連続で。

肌の色が違うこと、看板の文字がアラビックなこと、ヤシの木の群生、夜24時を超えても鳴り止まないベルベルの音楽、砂漠のさらさらとした砂の音。月の声が、聴こえてきそうな、満月の夜。

いつもと違う ことに、どうしてここまで、心ときめいてしまうのか、教えてほしかった。だれか、助けて。この繰り返しの螺旋から、私はもう抜け出せないかもしれない。終わりにしたいとも、もう思える気配がしない。

時間が過ぎれば、空の色刻一刻かわってゆくこと。燃えるような夕陽、雨が降りそうな怪しげなグレー、朝焼けを待つ間の少しずつピンクになるグラデーションの。それらすべてが、日本の東京で暮らしている時も、同じ空の下広がっているとは。どうして思えないんだろう。異なることに、感じてしまえるんだろう。

海を越えれば、別の国があること。文化が変わり、食が変わり、通貨もタイムゾーンも違って。けれどひとは、馬は、犬は、猫は。空は水は月は星は。変わらず広がって、いて……

旅の迷い道、旅迷路。乾いた大地と空気に包まれて、このままいっそ、もっと遠く。しばらく帰れなくなるような、帰ることすら忘れてしまえるような。

ひんやり、砂漠の。足裏にあたる冷ややかな、それでいて温かさを待つような、夏の朝の砂漠の星がゆったりと消えてゆく時間。地平の向こうに太陽が昇る気配がする季節。まぶたに焼き付いて離れない。きっとこれから何年経っても。思い出す。

モロッコ。惹きつけてやまない、遠い異国の、北アフリカの世界。


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