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こぼれ落ちる言葉を拾い集めて【オーストラリア・ロットネスト島】

時折、指先から出てくる言葉の速さにキーボードが追いつかないことがある。

ごく稀にだけれど、そういう時は溢れる言葉たちをこぼさないように、一字一句を慈しむように、けれど心地よく焦りながら文字を画面に収めてゆく。

今日はそういう日だった。

けれど私は、今日は悲しいかなパソコンを家に置いて出かけてきてしまった。代わりに親指にすべてを託して、それでも精一杯の速さでスマホに文字を収めはじめたのが今。

川流れるパースから、電車に乗って30分。
海きらめくフリーマントルから、船に乗ってまた30分。

一般車両が入れない、観光客は自転車でしか動けないエコアイランド「ロットネスト」。

季節が、ちょうど数日前から夏に切り替わったからだろうか。

今日の天気が、朝からまた雲ひとつない、真夏日の最高の海水浴日和だったからだろうか。

ウルルの夕陽に続いて、朝早くからロットネストに着いた私は、こう思っていた。

「今までで見た海の中で、一番きれいだ」。(※薄々お気づきだと思うが、私は自然の色にころっと感動しがち系だ)

今までで一番きれいな夕焼けを見た【オーストラリア・ウルル】|伊佐知美|note(ノート) 

海は、そもそもきれいなものだと私は思う。だから、海がきれい、って言葉はもしかしたら頭痛が痛いみたいな響きを持つのかもしれないと思ったりするけれど。

それでもこの海は、とても私の好みだった。美し、かった。

なんていう色なんだろう。ハワイのワイキキ、サイパンのマニャガハ、クロアチアのドゥブロヴニク、オーストラリアのグレートバリアリーフ。

今までたくさんの心揺さぶる海を見てきたけれど、私は今日の海は、なんだかもう笑うしかないなぁと思って見てた。(でもそういえば私は上記のどの場所でも、同じように笑っちゃうくらいきれいだなと思っていた気もする)

ねぇ、あなたは一度パースやロットネスト島にもきてみたほうがいい。世界はとっても広いけれど、できるだけ早いうちに、この空の広さとのんびりした空気、自転車で駆け抜ける小さな島の夏を肌に触れされたほうがいい。

どうして一緒に見られないんだろう、と私はひとり思っていた。ねぇねえこの色はなんて言うの? ピカチュウのモデルになったっていうクォッカって動物には触っていいの? 今日は何が食べたい?何飲みたい?

パースに到着したほんの数日前までは、風はまだ春の気配をたっぷりと含んでいて、私の好きなサンダルとワンピースでは、対抗できないような気温だった。

今日はパース滞在6日目。もう今日は、日焼け止めを何度塗っても、あぁもうまた皮が剥けちゃうじゃない、みたいに強く、ひどく肌が焼けるような日が射してた。気温は35度を超えそうだった。

夏の、風。

夏の休暇の風がロットネスト島に吹いてた。

さきちゃんが教えてくれたベーカリーに寄って、ミートパイとコカコーラをひとつずつ。普段炭酸は飲まないけれど、こんなに暑い日ならよく似合う。

グーグルマップを開いて灯台までの道のりを探す。地図の縮尺を変えて、オーストラリアの西側にいることをもう一度確認する。

インド洋。

地図で見ると、日本は少しだけ遠くに見えた。時差はほぼないのに、場所を変えるだけでこんなに心揺さぶるものが変わるのか。

私は時間が経つと書けるものが変わってしまう。あぁやっぱり今日はパソコン持ってくればよかったな、って、ここまで書いて多少なり残念に思う。親指は、流れていく言葉をすくい取るには少しだけ頼りない。

もう写真に収めるのも、やめてしまおうかと思いそうになっていた。ファインダー越しの世界よりも、直接見る世界のほうが広くてきれいだ。

海と空と島の青。オーストラリアは美しいなと、私は今日も思っている。


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