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さよなら大好きになった国【オーストラリア→ニュージーランド】

流れていく時間を掴みたいと、何度努力を重ねてみても、止まってはくれない。

美しいなと、嬉しいなと思っても、やっぱりすべては流れていってしまうから。であれば今この瞬間を精一杯楽しんだほうがいいなって、いつもいつも、思っている。

雲一つない空が広がるオーストラリア。もちろん曇りの日だってたくさんあったけれど、思い出すのはいつだってきれいだったその日、その瞬間、光っていた何か。美味しかった、楽しかった、何か。

写真に撮りたいと、収めたいと思うのは、「それが終わりに近づいているからだ」と誰かは言ったけれど、

私がシャッターを切るのは、旅をしているそのものの意味だと思っているし、誰のためかと聞かれたら、きっと一番は私のため。

目の前を流れていってしまう匂いや空気、その場にいた人たちの奏でる雑踏、注意する警備員の気配や控えめな声さえも、私は、私たちは、すぐに忘れていってしまう。

日本で生まれて、日本で育った私は

けれどどうしてか海の向こうの世界に憧れて

そこで生きることができたらどんなにいいかと、思ったりしていた。

まだ、どこで暮らすのかははっきりとは分からないけれど、いくつか選べる人生が私の未来にあるとしたら、ひとつはこの大陸の、小さな街のどこかがいい。

ケアンズの海の透き通るブルー。サンゴ礁揺れる海の底。私の手が及ばない、深い深い、地球の半分。

ケーブルカーと鉄道に乗って訪れる森の奥のキュランダ。ファラフェルをお食べよと、私に笑うヒッピーの記憶。

次に向かうはゴールドコースト。著名人が年を越すためにやってくるという美しい海岸線。思い出すハワイ、ワイキキ。どこまでも続く、白い浜。

遥か彼方へ移動したいと、向かった内陸の赤い土。厳しい砂漠、違う惑星を想起させる荒れた大地。ゆったりと佇むエアーズロック、大昔からそこで暮らす先住民の黒い肌、吸い込む瞳。

君はどこから来て、どこへゆくの、と尋ねる。人、人。

どこへ行くかわからないわ、と答えて笑う、曖昧な時間、愛、言葉。

欠けては満ちる月、星、見たこともない動物たち。

どこから来て、どこへゆくの、波。

この川を辿ったら、どこへ着くの、パース。穏やかで優しい人たちが暮らす、愛すべき街並みを見下ろす丘に、腰掛ける昼下がりの温かさよ。

できたてのビールを注ぐタップの雫、多くを運ぶフェリーの水しぶき、その島でしか生きていない小さな動物が動く気配、週末だけ開かれるフリーマントルのマーケットのざわめき。

ロットネストの海の美しさはきっと地球上のどこも敵わない。そう思ったのに、ひょいとそれを超えるバイロンベイのストライクどまんなかのクリームソーダ色をした海と波。

反射する水面に目を細めて、全力で走った砂浜の記憶。遠くに見える灯台は、どこか私の大好きな会社を思わせて。

もうすぐ会いたい人に会える、と胸ときめかせたシドニー。ひとり向かう夜景の奥に、ここにあなたがいたらいいのに、とずっと思っていた。

またね、とオーストラリアに語りかける。また来られるかなぁ。私は来たいと思っているのだけれど、あなたは受け入れてくれるのかしら。

いつだって予定は片道切符。その先は知らない。でも、これからしばらくは、行き先ができそうな予感がしてた。

楽しくて眩しい、素敵なオーストラリア滞在だった。45回の夜を越えて、私は今夜、久しぶりに違う国へ行く。

少しだけ、もう少しだけ楽しませて。オセアニアの夢、続けて、そのあとはきっと、また違う土地へ、流れてゆくから。

あぁ楽しかった。夢みたいだった。自由は楽しい、自由は苦しくてコストがすごい。けれどそれでも。やめられない、やめたくない。

続けるために、もう一度私は進化したい。もう1つ、段階を上げて。けれどこれからは、肩の力を抜いて、ゆっくり進むと決めたのだ。焦らないで。けれど楽しく全力で

まだ見ぬニュージーランドを見に行こう。

今度の場所も、オーストラリアみたいに、大好きになれるといい。暮れていく夕陽を飛行機の窓の外見下ろして、オーストラリアの海を越え、今夜私は初めてニュージーランドの土を踏む。



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