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街の音がよく聞こえる一人旅【オーストラリア・パース】

すれ違う人のヘッドホンから漏れ出る音楽、通り抜けざまのエスプレッソの香り。出勤前に足早に街をゆく男性の足音、微かに聞こえる車のエンジン音。工事現場から響く金属音、飛び立つ鳥の羽の気配に、風になびく波、etc...

なぜだろう、一人でいると街の音がよく聞こえる。

私は、どうしても一人旅が好きでたまらないというタイプではおそらくない。

基本的に寂しがりだから、できれば誰かと一緒にいたい。そして東京にいるときは寂しい、と思ったら半径数キロ以内に会える人がたくさんいた。だから私は、寂しければ「ねぇ会いたい」、と言えばよかった。

けれど、だからこそ東京にいると私は一人にならない。なれない。

一人旅が好きというよりも、趣味嗜好を突き詰めたら一人で旅をせざるを得なくなったということもできるし、孤独にふれあいたくて一人を選んだという節もある。

回りくどいね、分かるかしら、分からないかしら。

最近、一人旅にもどうやら少し満足してきたようだな、と自分で感じる。

どこへ行ってもいい、行かなくてもいい。世界地図を見て季節を気にして、出会いやタイミング、情勢や何やらを鑑みて、それでも最後は直感に聞いて行き先を、動く日を決める。

ふらりゆらり、別に今は誰も私を待ってないから、どこに行ってもいいんだ、ほんとうに。究極的には、現実的な問題を別として、本気になったらこの土地に留まる選択をすることすらできるのだ。

私は、そんな日々に少しだけ満足してきたように、思う。

友だちはそんな私の話を聞いて、「長く旅をしたいという夢が一つ、本当の意味で叶うんだね」と言った。そうかもしれない。そういうことなのかもしれない。

誰かと歩く街と、一人で歩く街はなんだか違う場所のように思える。聞こえてくる音や、空の高さがどこか違った。

今夜は、というだけの話。


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