「運用の問題です」が最大の問題です

「運用の問題ですね。」

利用部門との会話でこれを言ったことあるSEは多いのではないでしょうか。SIerやコンサルと、事業会社SEの違いが何かと言うと、前者はこの発言が許され、後者は許されない。事業会社のSEの仕事は、プロセス+IT、それに組織を含めた全体調和です。運用に問題が起こるとすれば、そのどこかに問題があるはずですので、大至急対処しなければなりません。(ここで言う運用とは、システム運用ではなく、業務運用の話です。)

私自身、プログラマーとしてある程度経験を積んで、小さなサブチームを任されるようになった入社4年目。初めてお会いした経理部門の主任さんから課題を色々聞かされた時に、ついこの「それは運用の問題ですねぇ。」が無意識に口から出てしまい、「情報システムの人はいつもそう言って問題から逃げるんやな。」と返され、はっと思い、以後そのような発言をしないよう心がけています。「運用上課題があるようですので、システムとプロセス両面で見直しましょう。」ならまだ良いわけです。

「運用の問題」と言う行為は、目の前の相手から受け取った問題を遠くに放り投げる行為です。その問題を自分化した人から出る言葉ではありません。そしてより大きな問題は、この発言をした時点で事業会社の社員としての職責を放棄しています。ITは目的でなく手段です。顧客を満足させる、その為の事業をより良くする為に、一丸となって戦う為に作られたチームが会社という組織です。そのチームの一員としての自覚を持つことは最低限守らなければならない「規律」であり、課せられた「義務」です。こういった規律が組織から失われると、「システムには問題がない」と言うような発言が恥ずかしげもなく出るようになります。

多くの事業会社が情報システム部門を非戦略部門と位置づけて、外部SIerに部門丸ごと下取りしてもらったり、彼らと合弁会社を作ったり、子会社化してワンランク落とした処遇と人事制度を採用した過程には、このような情報システム部門自らが事業会社の一員としての自覚を失った事が影響しているように思います。別のパターンとしてあるのが、「情報システム部門としてのプレゼンスを上げる」「情報システム部門の価値を高める」と言った掛け声で運営される情報システム部門。言い方は色々ありますが、情報システム部門が主語となった時点であらゆる掛け声は間違っています。主語は常に顧客です。顧客の創造が事業であり、その為に事業会社は存在しています。こうした誤った主語によって運営された情報システム部門も、先ほど述べた道を歩むことになります。

問題は自分の外側にある。人間は弱いので、常に自分を守る為に、自己防衛本能に突き動かされます。そこを歯を食いしばって踏ん張って、あらゆる問題を自分化する事で道は開けてくるのです。




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