脱皮

こーの支配からのっ そつぎょおぉー♪

ってわけでもないけど、いや、軽くそーゆーとこもあるけど、まぁあたしは今日、この土地での最後の仕事を無事に終え、と同時にこの場所にとどまる必要性を全く失った。

あとは淡々ときちんと荷物を片付けて部屋の掃除をして、2日後に出ていくだけ。


収録後、局のみんなが集まってくださって花束とともにあたしを待っていた。ひまわりと薔薇のとりあわせの、元気な感じの花束。
こんな感じのサプライズの場面にはよく立ち会ってきたけど、自分がしてもらうのは初めてのだった。職場でよ?

「これからの自分に期待したいわ」

ミスユニバースに選ばれた日本人女性がTVでインタヴューに答えていて、あたしもそのような素敵で格好良いことを言えたらいいな、と思いながら、たどたどしい挨拶をした。

でも結局はそういうことだな、と思いながら。

担当してくれたディレクターは泣いていた。

そう仲良くなかった人達と親しげに写真を撮った。

4日前に急に仲良くなった人達とも写真を撮った。

正直、珍妙な気持ちだった。嬉しかったし意外だったし、とってもありがたくて言葉も出なかったのだが、あたしはうまく対応できていないような気がして、なんだか少し気がひけていた。
嬉しさと感謝の気持ちを足して100%、というのに嘘はかけらもなかったけれど。

そんなこんなでいつもとは違うムードの中、やっぱりいつもと変わらず自分の不出来を反省する気持ちは薄まらないであたしの心を占領していた。なんだか申し訳無いような気持ちで、でもしかたない、相変わらずのあたしだ、何も変わらないし、全然たいしたことなくて、それでもそれなりに認めてもらっているあたしがいるだけだった。


ああ、なんか読み返すと自分て冷たい?なんなの?素直に感動して泣くくらいのかわいらしさはないのか、例えうそでも芝居でも。
と思うけれど、次はもしかしたらそうなれるかもしれない。


これを書いている自分の部屋の中にはダンボールが10コくらい積んであって、時々そこについてるパンダがこっちを向いて笑っている。

そいつのおでこに「肉」と書きたい気持を我慢しながら、やる気、(生きる気という感じにほど近い)を失ったあたしは一人、暗い部屋でパソコンに向かって、それでもなにかこの今日の空気の感じ、終わりの日にしかないこの、快いとも不快だとも言えぬ感覚の粒子を一粒でもいい、ここに貼り付けておきたくて、それをスクラップする台紙のようなものを探して自分の中のひきだしを漁るのだけれど、手持ち無沙汰な夕暮れにも似たこの粒を、埋めたり貼りつけたりできそうなものは、もうはぎれすら残っておらず、その期待外れなザマは、まるで全部なめきろうと頑張っていた千歳飴を生ゴミの中にふいに落としてしまったとでも言おうか、どうにもこうにも煮え切らないこの気持ち。

あーーーーーーーーーーーー。

来週のこの日、あたしは何を思い、何をしているだろうか。

恐らくは異次元の世界で、さくらんぼでも食べているのだ。

何もかもはひとまず終わり 

さぁどうしようかな 

なんて現実的な考えをめぐらせながら。


ひまわりと薔薇とかすみ草の感じのいい花束が、白くなりゆく部屋に彩りを与えている。

このような状態も、人はさみしいと言うのかもしれない。

今日のさみしさは一味違う。

あたしを知っているひとのあたたかさで包まれた、はかないパステルカラーのさみしさ。
それは、さなぎがアゲハにかわるとき失くすものと似ているように思えた。

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