【100均分解】ダイソーの324円無線マウス

はじめに

平成も残すところ3か月余りとなった2019年2月の初旬、SNSで「ダイソーに324円のワイヤレスマウスが登場した!」との情報が流れて来ました。マウス自体はそれほど高くないのですが、ワイヤレスの新品でこの値段はやはり驚きなので、早速購入して分解してみました。

外装の表示

今回はフラットな「鏡面タイプ」を購入しました。スタンダードな3ボタンタイプです。無線方式はBluetoothではなくPCのUSBポートにドングルを挿して使う2.4GHz帯の専用方式となっています。

ホイールの近くにあるボタンは感度(DPI)の切り替えとなっており、一般的なマウスの機能はカバーしています。
パッケージの裏面右上には技適番号の表示があり、国内での使用も問題ありません。日本語と英語が併記されており、このあたりはさすがダイソーという感じです。
製品の裏面の電池ケースの蓋にも技適番号のシールが貼ってあります

外装の分解

まずは、マウス部分から分解していきます。

マウスを裏返すと底面に1個、電池ケースの中に1個の計2個のビスがあるのでこれらを外すとマウス上部を簡単に開けることが出来ます。内部は主に基板と導光用の透明な成形品、ホイール部のみと大変シンプルな構成です。電池ケースは底板と一体になっています。

電池ボックスと基板との接続部はコネクタとなっており、シンプルで分解しやすい構成になっています。

プリント基板


ブリント基板は片面紙フェノール製のベース基板に、高周波を扱う無線部分の両面ガラスエポキシ基板を差し込んで半田付けしています。コストを抑えるために高価なガラスエポキシ基板は最小限となるように工夫されています。無線通信用のチップは黒い樹脂モールドで覆われたベアチップ実装(パッケージを使わず、シリコンのダイを直接基板に実装し配線する実装方法)となっています。

基板上の部品

以下がベース基板の部品面と半田面の写真です。

基板上の部品は以下。少ない部品でシンプルに構成されています。
- 無線回路子基板(後述)
- Optical Mouse Sensor(レンズのついた8pinの黒い部品)
- マウスセンサ用LED(目視では赤)と電流制限抵抗
- 各マウスボタン用スイッチ
- ホイール用インクリメンタルエンコーダ
- 電解コンデンサ(2個)
- 電源スイッチ(半田面に実装)

Optical Mouse Sensor

Optical Mouse Sensorのマーキングは”OM15S"となっていますが、この型番での検索では発見できませんでした。パッケージのピン数と機能よりAvago Technologies (Broadcom)の"ADNS-2610"の互換品だと思われます。

ADNS-2610 Optical Mouse Sensor (datasheet)
https://media.digikey.com/pdf/Data%20Sheets/Avago%20PDFs/ADNS-2610.pdf

裏面の基板パターンを見ると、1,2ピンはパターンに接続されておらず、Oscillatorはセンサ自体に内蔵されているようです。そのほかのピンはADNS-2610と互換になっています。

ちなみにADNS-2610はOptical Mouse Sensorとしてはかなり一般的のようで、Arduino用ライブラリも存在しています。

Optical mouse sensor library for Arduino 1.x by Martijn The
https://github.com/zapmaker/OptiMouse

無線用チップセット

無線用のチップについては、送受信でペアになりますので、USBレシーバと合わせて確認していきます。

マウス側:無線回路子基板

無線回路基板は0.8mm厚の両面ガラスエポキシ基板です。ベアチップ実装のコントローラチップ、16MHzの水晶発振子とセラミックコンデンサで構成されています。基板の端面には無線用のアンテナパターンが周囲のパターンから距離を確保する形で両面に配置されています。上述したOptical Mouse Sensorの制御信号(SDIO/SCK)もこの基板に接続されています。

USBレシーバ側:ドングル内蔵基板

USBドングルに内蔵されている無線基板は0.6mm厚の両面ガラスエポキシ基板です。こちらもマウス同様にベアチップ実装のコントローラチップ、16MHzの水晶発振子とセラミックコンデンサ、抵抗で構成されています。USBコネクタも基板上にパターンで形成されています。
基板の上端面には無線用のアンテナパターンがこちらも周囲のパターンから距離を確保する形で両面に配置されています。

ワイヤレスマウス用チップセット

使用されているチップセットを調査するために、USBドングルをPCに接続してMicrosoftから提供されている"USBView"でUSB  descriptorの情報を確認します。

USBView
https://docs.microsoft.com/ja-jp/windows-hardware/drivers/debugger/usbview

デバイス情報部分の抜粋

USB descriptorの"idVendor"より"TeLink Semiconductor (Shanghai) Co., Ltd." 製のチップだということがわかります。USB-IF(USB規格・認証団体)がIntegrator Listを公開しなくなってしまったので、"idProduct"で検索できないのですが、TeLink SemiconductorのProduct Lineupより、該当するチップセットは”TLSR8510&TLSR8513”となります。DICE(ベアチップ)でも提供してるのでほぼ間違いはなさそうです。

2.4G SoC - Telink Semiconductor
http://www.telink-semi.com/2-4g

datasheet
http://wiki.telink-semi.cn/doc/ds/DS_TLSR8510%26TLSR8513-E_Datasheet%20for%20Telink%20TLSR8510%26TLSR8513.pdf

ブロック図よりマウス側(I2C有)がTLSR8510、ドングル側(USB有)がTLSR8313だという事がわかります。

シリコンチップの観察

今回はベアチップ実装のモールドをダイヤモンドヤスリとカッターで削ってチップ自体を顕微鏡で観察してみました。顕微鏡はAliexpressで3500円で購入したUSB接続対応で最大600倍とうたわれている以下のものです。

G600 600X USB 顕微鏡
https://ja.aliexpress.com/item/G600-600X-USB-4-3-LED/32908685178.html?spm=a2g0s.9042311.0.0.27424c4dWMHJvL

マウス側:TLSR8510

モールドを削ってチップ(TLSR8510)を露出させたのが以下です。

これを顕微鏡で拡大したのが以下になります。無線のチップらしく右の方にコイルが3個あるのがわかります。

TLSR8510の顕微鏡写真をdatasheetのReference Bonding Diagramに重ねてみました。端子配置よりブロック配置を推定すると、右半分の部品が大きいのが無線・電源のブロック、左半分の密度の高い部分がマイコン等のロジック回路ブロックである事がわかります。

USBレシーバ側:TLSR8513

こちらもモールドを削ってチップ(TLSR8513)を露出させました。

これを顕微鏡で拡大したのが以下になります。こちらもTLSR8510と同じくコイルが3個あるのがわかります。ブロック構成も一部が異なりますがかなり共通する部分があります。

この写真をTLSR8510と同様にdatasheetのReference Bonding Diagramに重ねてみたのが以下です。こちらも端子配置よりブロック配置を推定すると、右半分の部品が大きいのが無線・電源のブロック、左半分の密度の高い部分がマイコン等のロジック回路ブロックである事がわかります。
こちらは左上のGPIO系のPadが無く、左下のロジック回路ブロックの近くにUSBのDP/DMがあります。USBは"Full Speed Mode(12Mbps)"までのサポートなので専用のアナログ回路(USB PHY)ではなくロジック回路で構成されているようです。

まとめ

使用しているOptical Mouse Sensorと無線チップセットは一般的なものを使用し、基板構成によるコストダウンもできており、無線のアンテナ部分のパターンもそれなりに配慮されています。成形品の質感や出来映えは別として”電子回路としては"良い意味で「普通のワイヤレスマウス」です。
これで324円であれば通常使用だけではなく、分解・改造して自作機器に組み込む等の用途で購入しても面白いと思います。Optical Mouse Sensorを取り出してArduinoにつないで遊ぶという使い方も出来そうです。
※分解して動かす場合の技適云々は自己責任で(以下略...

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