コカコーラとポップコーン

午後のあたたかい光が古ぼけた昼間の街を照らしている、
電車はガタガタ揺れながら渋谷へ向かい、
乗客はみんなスマホで誰かとどこかと繋がりながら過ごしている。

それで僕といったら、ドア付近で立ちながら古ぼけた街を眺めていると、
頭がくらくらしてきて脳の奥の方で鳴っているノイズがチカチカしつつ、
目をつぶると、
更に暗く夜の深い時間に僕の部屋でテレビジョンの放送終了画面を真剣に見ている僕がいるのがわかるし、
その時は明日のことをちゃんと考えなければならなかったし、
それにだよ、最近気にいっているあの子からもらったメッセージに返信を送ろうと思っているのになかなか言葉が見つからないからすごく焦ってはいた!

それから、
連続した発砲、被弾した窓ガラス、そしてコカコーラの飛沫、突き抜けるほどの綺麗な青空、ガラスのキラキラした無数の破片、
緑色の草原のうえで同志たちが一斉に歓声をあげ、あなたは知っていると思うが、あの一瞬ダレる明け方の時間の中で、
一瞬膨らむ空白の中で、
緑色の草原ではふざけた奴らが大騒ぎしてたから、
バンバン、クラッカーが鳴り響いて、紫色のブーケが飛び交っていた。
まあ、もちろん、なんの役にも立たないし、すぐに忘れられてしまうことのひとつではあるが。明け方がもうすぐカーテンからしみ込んでやって来るだろう。

そうそう、
さきほどしたあなたとの淡いキスの間に思い出したことがあったんだ、
ちょうど3日前の昼下がりに、
とっても退屈で眠くて気絶しそうなとき、
暖かな光を感じつつ眠りにつこうとしてたその一瞬に、とてつもなく巨大な、僕は愛について考えたんだ。
もちろん、ちょっとは照れ臭いよ、

それからいつものように心地の良い衣服が脱げていく音、
そして、
どこかで、
なんの変哲もない日曜日に、とても平和な休日に、不吉な音、暖かい肌の温度の中で。

一体、何が起こるのだろう?
あなたとの淡いキスの向こうで、
大きな風が強烈な音と熱とともにやってくる、
聞こえるだろう?
こんなに血液がやさしく沸き立つのに、
少年たち、少女たち、
大きな風が来ているよ、
もう僕たちは逃げられないかもしれないぞ、
完全にもしかして手遅れに、
巻き込まれてしまったのかもしれない。

まだまだリアリティがないか?
まあ、ここの世界線ときたら呑気だからね、わかるよ、その気持ち、
相変わらずさ、こんなときに野原でポップコーンが弾けてるんだから。笑いながら僕たちはそれらを見ているだけだろ?空では銀色の月がアルミニウムみたいに光ってるのさ。

僕は、一体、愛について、何が言えるんだろう?
君と作る余白の中で、ドキドキしながら、僕は一体何が言えるというのか。

そういえばさっき読んだ三面記事の三行目、
交通事故とマルチ商法の間で、
僕はぼんやりしていたんだ。
そこでは、とっても強い風が吹いていた、とっても熱いやつだ、気づかないうちに溶けて骨だけになってしまうやつ、それにとても大きい、とてつもなく大きいんだ、

こいつが本格的に来たなら世界は終わってしまうだろう、
もはや逃げることなんて出来ず、シェルターも役に立たない、
水は上へ上へと蒸発し空気は錯乱し未来がぶっ飛び僕たちはみんな狂ってしまう、土が岩になり、岩が土になり海が砂漠になってトカゲが次の世紀の夢を見る。青い夜空、銀色の月に黒いコカコーラが注がれ、野原ではポップコーンが弾けてる。

僕は夜中、酔っ払ってた、公衆便所で泣いていたんだ、すっぱい味と吐き出してドロドロになった飯を見ながら、美しい月明かりがここにも注がれているのを感じていた。

そうさ、誰も止められやしない、破壊が進んでいる、炎が迫っているし、デマが拡散している。
一体どうする?
みんなどうするんだ?
とっても悲しいじゃないか。
このまま終わってしまうのは。

無線リンクがレーザービームに乗っていき、月旅行が流行り始める、
砂浜では二人の幼い男女が、遠い水平線を眺めながら、結婚を約束する。
くじらが海に浮かびながら、月光にうっとりし長いため息をつく。

大丈夫よ。
あなたは最後にそんなことを言った。
外では黄色の葉が揺れ、光が青空から降り注いでいた。
あふれるほどのまぶしさが強烈に僕の目に広がり、なんだかんだと僕はここに辿り着いたことを知る。
そう、ありふれた日曜日に、そばにあなたがいて、愛のように思って、うっとりして。

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