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レジスタンス

先月亡くなったシラク元仏大統領を追悼する新聞コラムはこんな一文から始まっていた。

《レジスタンス(抵抗運動)の国ー。フランスが誇ったその輝かしいイメージを覆す選択をしたのは、ほかならぬ大統領だったジャック・シラク氏だ。》

どういうことだろうと興味が沸いて読み進むと、ナチスドイツが勢力を誇っていた1940年代、フランスは首都をVichy (ヴィシー)という町に置いた時期があって、当時の政権が、パリ地域のユダヤ人約1万人の一斉逮捕を含め、フランス各地の8万人近くをナチスの強制収容所に送り込み、ほどんどの人が生還しなかったという。
そうした一連を、シラク氏は95年の演説でフランストップとして初めて「犯罪的な狂気を補佐したフランス人、フランス国家」などと認めたのだと。

読んでいる途中の「第三帝国の興亡」(ウィリアム・L・シャイラー著)は、5巻中の2巻目、ヒトラー独裁から、オーストリアとチェコスロバキアの無血制服、30年代を読み終えたばかりだった。第3巻がポーランド侵略から戦争突入の40年代を描いているようだ。

ということで、Vichyという、今も人口3万人の温泉地の町に、4年間(1940-1944)とはいえフランスの首都が置かれていたことも知らなかったし、たった80年前に、こんな小さな町からフランス全土へユダヤ人迫害の支持がなされていたことに驚いた。

《フランスは戦後、このことについて国家の責任を認めようとしなかった。Vuchiy政権はナチスの傀儡でありフランスではない…》

と”言い訳”を続けていたそうだ。
しかし。

《実態はちがった。…多くの仏市民がみずからの差別意識も手伝って、ユダヤ人迫害の動きに対して沈黙とあいまいな態度に終始。官僚機構はナチスの支配を支えた》

一人の指導者の出現が歴史を動かすことがある。
大勢の人たちが溜め込んだ心や気分が噴き出したエネルギーが根っ子にあり、彼は成すのかもしれない。
暴力のような目に見えるものではないものこそ怖い。
時代とは関係ない。

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