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夜柚子テイスト


ふっと闇に包まれて

隣に座る彼の横顔を見ながら

「もし彼がいなくなる時が来たら」

想像しただけで、うるっとしてきた。

あれ、こんなにすぐにうるうるするくらいじゃ

これはきっとホルモンのせいだな、と

心で思いつつも、

気づけば頬をつたい、

鼻を啜ってしまう。


それに気づいて、

スッと肩に手をやって、

おでこにキスをしてくれる。

その優しさと愛情に

さらにポロポロ涙が出てきて

「そういうダークな中に入っちゃうことあるよね」

と言う。

この人がいなくちゃダメだ。

そう胸にぎゅっとした想いが出た瞬間、

でも出会う前だって、

自分で生きてきたよ

と励ましみたいな冷静みたいな声もする。

なんだか寂しいような、

いや、でもそう思いながら

愛しているし

大切にし続けていくけれど

わたしはあくまで

わたしの足で歩んでいく意志でいないと

いつか絶望の中に入り込んで

出てこられなくなるくらい

愛し、それと同時に自分の中身が消えてしまいんじゃないかという

暗い影も心に降りてくる。

甘さと苦さと

どこか柚子っぽい夜の味。

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