#131 女子サッカーを描いた新川直司さんによる青春物語『さよなら私のクラマー』

アニメ化と実写化がされた音楽マンガ『四月は君の嘘』
個人的に30数年の人生史上、最大級に感動したアニメ作品であり、物語後半は涙なくして見れない作品でした。
天才ピアニストの有馬公生と自由奔放なバイオリニストの宮園かをりの出会いにまつわる青春物語。

そんな作品を描き出した作者の新川直司さん
女子サッカーを取り巻く環境を描いている『さよなら私のクラマー』
そして、その前日譚にあたるのが『さよならフットボール』

『さよならフットボール』はたった2巻の物語だったのですがめちゃくちゃ感動しました。
その数年後に『さよなら私のクラマー』が連載されたのを知ったときに一気に作品を読み直しました。

誰よりもサッカーを愛し、
誰よりも真摯にサッカーに向きあい、
誰よりも情熱を絶やすことなく、
誰よりも努力を重ねている女子中学生サッカープレーヤー
恩田希(おんだ のぞみ)

彼女は才能も技術も情熱も持っています。
しかし、彼女はサッカー選手としてピッチに立つことを一度も許されませんでした。
なぜなら、彼女が所属していたのは、男子中学生のサッカー部だったからです。
女子サッカー部を創部しようにも認知度も人気も低いため、女子サッカー部を創ることさえできなかったからです。

スポーツ漫画の王道の一つとして、部活を一から創りあげるということもありますが、それさえできないのが女子サッカー部の大きな課題でした。

身長や体格に差が出てくる中学生、高校生。
男子サッカー部員に交じって本気の試合でプレーすることは止められていました。
足元の技術、アジリティ、アイデア、敏捷性、観客を魅了するテクニックなどを持ち合わせていながらも試合に出ることのできないもどかしさを抱えていました。
どれだけ巧くても、どれだけ望んていても試合にも出場することができない現実。同年代のチームメイトと真っ向勝負していく彼女の挑戦の物語です。

女子サッカーを取り巻く環境の課題(プレーヤー数、指導者、練習場所など)
それと同時に、「豊穣の大地」ともいえる可能性を知ることのできるマンガです。

男子サッカーに負けず劣らずの激しいぶつかり合いやスピード感、テクニック、勝利への執念、緊張感が1コマ1コマから伝わってきます。
プレーヤーの熱意や根性だけでなく、統率の取れたチームとしての戦術にもこだわりも垣間見ることができます。

課題の多い女子サッカー界。男子サッカー部での当たり前がまったく通用しない舞台。
中学時代、女子チームメンバーに出会えず、たった一人で毎日ボールを蹴っていた恩田希でしたが、高校では女子チームで仲間と出会い、ボールを蹴られることや試合に出られることが当たり前ではないことを知ります。

突出した才能を持っている選手でもチームや練習環境に恵まれず潰えてしまうこともあります。どれだけ才能や情熱があってもひとりではできないサッカーという競技の見え方が変わります。

チームという環境の中で切磋琢磨していくチームメイト。
強いチームにするという目標と目の前の試合に勝利するという姿勢でチーム一丸となって困難を乗り越えていきます。
より強く、より結果を出していくために、チームメイトもコーチも練習環境も必要不可欠です。

恩田希のサッカーに対する情熱、チームメイトとの青春から目を離せません!!

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