狼は死んでいる

遠野物語を読んでいて、とても興味深いことを知った。
それはニホンオオカミが絶滅したのは、1900年代に差し掛かったあたりだということ。

「そんなに最近だったんだ」と。

時代は明治の末の頃か。
120年も前と言われるととても遠い時代のことに思えるかも知れないが、祖父の祖父はおそらく生きていただろうから、すっごい前ってわけでもない。

さらに柳田は「ニホンオオカミは近代化によって、絶滅してしまった」と考えていたらしい。焼畑をやめたことで餌場に乏しくなり、さらに狂犬病が蔓延したりが重なって、種の全滅に追いやったのだと。

それまでは狼は半ば神でもあったそうだ(このあたりのイメージは『もののけ姫』そのまま)。遠野でも狼が子供を産んだりしたら、貢物として巣の前に食べ物を置いたりしたそうな。
これは狼が特別というか、熊であれ、鷹であれ、でっかいナマズであれ、頂点捕食者といわれる自然界の強者に対して、畏れながらもそれにあやかろうと崇めてしまう人間の性分だろう。

狼はすでに絶滅してしまったが、僕らは同じことを繰り返さないように気をつけなくてはならない。

この間、一人で山を歩いていたら、道すがらに大きな動物のフンが落ちていた。
思わず歩みを止めて「熊じゃないよな…」と写真を取ったりしていた刹那、道の先から「ガサッ…」と物音がして、驚いて振り返った。何かが迫っている。恐怖が体に広がる。てごろな棒切れで持ち近くの木立ちを叩き、「ワッ」と叫んだ。

すると、きょとんとした様子の2人組のトレイルランナーが道を折れながら、僕の視界に入った。ホッとしながら、というか大声を出したのを帳消しにするために気持ち悪いぐらい社交的な笑顔で「こんにちわ」と挨拶をした。
つくづく自分の臆病さと、自然に対する知識の無さが恥ずかしくなった。

けれど、都会に暮らしている以上、野生動物の生態を知ることはほぼ不可能だからしょうがない。僕みたいな人がたっくさんいる。
それが、ある日ニュースで「熊がめっちゃ人襲ってます:p」と言われたら、そりゃ「熊駆除しなあかんがな!」となるのは当然だろう。

明治にもきっとそういう雰囲気があったんだと思うと、気をつけなければなーと思ったりする。

参考

https://mtl-muse.com/wp-content/uploads/2019/03/subindex01-02rokubennews060201.pdf

僕と同じ感覚の方がいるぞ、と思ったので共有。

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