外出許可を取って酒を飲む

  八月二十五日(木)大沢

 入院中に無事退職届が受理されたので、日曜、月曜と一泊二日の外泊許可を取り身辺整理に時間を費やした。ついでに、妻に会って食事した。見ない間にまた髪型が変わっていた。

 病院には夜九時までに帰ることになっていた。これから仕事だという妻と別れたあと、一ヶ月前まで同じ病室に入院していた、森尾泉と待ち合わせして飲んだ。

 適度にほろ酔いになった帰り道、なぜか隣のベッドの砂原少年と出くわした。人通りの少ない裏道で、砂原少年ともう一人(確か向かいの病室の患者)が、素行の悪そうな少年たちと向かい合っていた。

 「あ、どうぞ。気にせず続けて」

 「続けてじゃなくて、助けて下さいよ」

 助けて欲しいのかよ、と思いながら相手を見ると、向こうは四人、頭数で負けている上に、砂原君とその連れはいかにも弱そうだった。

 「関係ないけど、君たち、外出届は出してるの」

 時計を見ると二十時五十分だった。人の心配より、自分も帰るのが遅れると病院に連絡を入れなければならない。「もう九時だよ」と言うと少年たちの顔色が変わった。そろそろ看護婦が部屋に見回りに来る時間のはずだ。

 「続きはまた今度にして、今日は帰った方がいいよ」

 千鳥足の森尾と少年二人の背中を押し、足早にその場を去る。駅前のロータリーに出ると、病院前を通るバスが発車するところだった。

 結局少年たちの無断外出は病院にばれたようで、翌日、保護者ともどもナースステーションに呼ばれ、二時間程帰って来なかった。僕は外泊届を出していた上、帰るのが遅れる旨もきちんと連絡していたので、小言を言われる程度で済んだ。

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